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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・日常と騒動編

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釣りには餌が必要です

 巡回を続けていたら、カーティスがへらへらしながら話しかけてきました。


「そういや、前回ロザリンドが巡回したらやたら事件が起きたよな」


「人をトラブルメーカーみたいに言わないで!たまたまだよ、た・ま・た・ま!!」


 そんな話しをしていたら、顔見知りの狐獣人のおばちゃんが泣きながら話しかけて来ました。


「ロザリンドちゃん!娘が…帰って来ないの!」


「えええ…」


「ほら」


「違うもん!カーティスが変な話するからだもん!」


「どうでもいい事で争うな!」


 フィズに一喝されました。ですよね!すいません!真面目にお仕事します!


「ごめんね、おばちゃん。詳しく話を聞かせて?」


 おばちゃんの娘さんは昨日買い物に出てから帰らなかった。家出する理由もない。無断外泊をしたこともない。娘さんの買い物先と通ったと思われるルートを確認した。


「うーん、もしかしたら近道しちゃったかもね」


 帰宅ルート途中に裏道がある。昼間だし、使ったかもしれない。さらに聞き込みをした結果、獣人の女性を狙った誘拐あるいは未遂があったらしい。


「…釣りますか」


「さすがにロザリンドは無理だろ」


 年齢15から20ぐらいの平民獣人ばかりがターゲットだ。







 私はドーベルさんにジャッシュ貸出を依頼しました。


「遅れた仕事は私も責任を持って片付けます」


「わかりました。ジャッシュさん、気をつけて」


「はい」


 ジャッシュは真面目に私に聞いてきた。


「僕は何をしたらいいですか?」


「うん。脱げ」


「ええええええええ!?」









 時間は少し遡る。釣りには餌が要りますよねという話になりまして…


「ディルク」


「絶対嫌!!女装しない!!絶対やだ!」


 なんか嫌な思い出でもあるのかな?


「じゃあフィズ」


「無理がありすぎる」


 美人だけど、ちょっとゴツいもんね。


「レオニードさん」


「ギャグにしかなんねーわ」


 マッチョに女装とか笑いのネタにしかならんわな。


「うん。言ってみただけ。カーティス」


「無理じゃね」


「皆さんやる気がないですね。女性の運命がかかっていますのに」


「う」


 私の言葉に明らかに考えるそぶりを見せるディルク。ディルクの女装も見たいけど、餌の適任は他に居る。


「なんてね。ふふふ…大丈夫。適任が居ますから」


「ロザリンド、笑顔が怖いよ?」


「完全になんか企んでる顔だな」


 というわけで、適任=ジャッシュです。彼は戦闘職ではないので筋肉もなく、中性的な顔立ちです。


「な、なんで脱ぐ必要が!?」


「犯罪者をおびき出す餌になるため女装していただきます」


「ええええええええ!?」


「ついでに天啓の訓練にもなって一石二鳥!」


「うう…解りました」


 ディルクがすまなそうにしていました。優しいね。


 そして我々はミス・バタフライのお店に移動。ミス・バタフライと私によるジャッシュ改造計画が発動しました。


「えええ、下着は要らな…」


「やかましい!つべこべいわず着ろ!」


「あうう…」


 そんなこんなで出来ました。素晴らしい出来ばえですよ。どこからどう見ても清楚可憐な獣人の女性です。念のため匂いは女性ものの香水でごまかしてます。

 手を取り合うミス・バタフライと私。いい仕事したね!ありがとう!


「化けたな」


「スゲーな、ロザリンドとオッサンの技術力」


「これなら大丈夫だろう」


「ジャッシュ…」

 感心する3人と憐れみの視線を送るディルク。女装にトラウマでもあるのかな?


「ぼ、僕はどうしたらよろしいのですか?」


「とりあえず、外をうろついて」


「この格好で!?」


「うん」

「わ、わかりました」


「その時に幸せな事を思い出しつつ敵を引き寄せる、おびき出すイメージをして。自分の天啓を使いこなせ」


「…はい!」







 待つことしばし。


「釣れた!」


 見事ジャッシュは敵を引き寄せた。よくやった!さらわれるジャッシュ。ちゃんと発信機魔具を持たせてあるから大丈夫!




 誘拐犯はジャッシュを町外れの廃屋に連れ込んだ。貴族の屋敷だったのか、結構広そうだね。どうやって忍び込むか思案していると、念のため持たせた通信魔具から声が聞こえてきた。ジャッシュがピンチなようです。


「わ、私をどうするつもりですか!?」


「へっへっへ、なぁ兄貴。このオンナ、味見してもいいよな?」


「…好きにしろ」


「ひっ!や、やめ…助けて…」


 なんか、ジャッシュさん…なんというか…


「ヒロインみたい…」


 とか言ってたらフィズに叩かれた。


「馬鹿なこと言ってないで助けに行くぞ!」


 なぜだ。ジャッシュに女子として負けた気がしてならん。


「はーい」


 念のため屋敷全体に逃亡防止の結界をはる。


「もふ丸、さらわれた狐獣人の娘さんはここに居る?」


「イル。オナジマリョクハンノウガアル」


「「しゃべった!?」」


 驚くフィズとレオニードさん。


「上位の魔獣は喋れるのも居るらしいですよ。もふ丸は娘さんを護って」


「アルジハ?」


「ジャッシュを救出したら、迎えに行く。他にも人質がいたら護って。出来る?」


「モンダイナイ。ホカハアト3ニンダ」


「ディルクは私と正面から。もふ丸は通風孔から。レオニードさんとフィズは裏から。作戦開始!」


「「「おう!!」」」


 そして、私とディルクはあっという間にジャッシュを助けに行きました。


「いや、いやぁ!やめて!誰か助けてぇ!」


 必死に抵抗するジャッシュ。しかし男も獣人…しかも筋肉ムキムキだから力で敵わず…おうふ、リアルベーコンレタスですな(分からない方は作者まで)

 ジャッシュは真っ赤になりながらスカートを捲られ、必死におさえてます。うん。泣き顔といい、男ならそそる…のかな。同じく釣りでさらわれても、私とは違うな。仕方ないけど。私は狩人、彼は赤ずきんの役どころだもんね。さぁ、狩りの時間だよ!


「ジャッシュ!」


「てめぇ、誰だ!?」


 ディルクのショートソードが閃き、一瞬でジャッシュを襲っていた男を気絶させた。柄で一撃。お見事。


 もう1人は私を人質にしようと考えたらしく、私に掴みかかろうとする。ありがとう、手間が省けたよ。


「はぁっ!」


 手が触れる一瞬。私は男の足を払い、顎に一撃入れた。呆気なく男は昏倒する。


「あ、あ…助かりました」


「よくやった。天啓、ちゃんと使いこなせたね」


 頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。よく頑張って時間稼ぎしたよね。素でやってた可能性もあるけど、男だとカミングアウトせずよく耐えました。


「さて、フィズとレオニードさん達はどうかなー」


 私達が居るのは家具からして多分応接室。人質は2階の元居室と思われる。


「うわぁぁ、化け物!」


「なんでモンスターがこんなに!?」


「しかも強い!」


 複数の逃げ惑う男達。ええと、該当がモフ丸しか居ないはずなんだけど…


「アルジ」


「もふ丸!これはどうしたの?」


 心なしか、もふ丸も困惑してる気配がする。


「ウム…イゼンアルジニタスケラレタマジュウガ、タマタマハナシヲキイテイタラシク…」


 そうですか。分かりました。私を手伝うために大暴れですか。一瞬気が遠くなったが、仕方ない。


「…大体わかった。人質は?」


「ブジダ。マジュウタチガマモッテイル」


「うわぁ…」


 例のオークションで私に仮所有されている魔獣達は実に多彩だった。その結果、廊下でやられた者達も色々なやられかたをしている。

 白く美しい獣であるスノータイガーに凍らされた者、カミナリトカゲから雷撃を喰らった者、パラライズスネイクにより痺れて動けないもの、ウォータースパイダーに捕縛された者…


「本当にほぼ全部来ちゃってるなぁ…」


 何故そんなことが解るかというと、私が仮所有している魔獣達は結構うちにご飯をねだりに来て、私に貢ぎ物をして帰るのだ。別に貢ぎ物は要らない。お腹減ったら来いと言っているのだが、皆言うことを聞かない。なんでだ。仮所有だからかな?特にスノータイガーはモフ感がなかなかでたまに撫でている。


「皆、もういいよ!ありがとう!というわけで、解散!!」


 一斉に散る魔獣達。は、速い!?自分で言っといてびっくりな私。


「ロザリンドの魔獣だったのか?」


「いつから魔獣使いに?」


 びっくりした様子のレオニードさんとフィズ。


「変なジョブつけないで!別に魔獣使いじゃないわ!」


「ぎゃはははは!一斉解散命令しといて、説得力ねーわ!」


 爆笑するカーティス。その通りだ。魔獣は私の指示であっという間にどこかに行ってしまった。


「……くっ!確かに!そ、そんなんどーでもいいんですよ!人質は!?」


「無事無事。いやぁ、気が荒い肉食魔獣が主以外を護るとか初めて見たわ」


「確かに珍しい光景だったな。よっぽど主に忠誠を誓っているのだろう」


 やめてください。私をそこで見るな。


「…調教師?」


「なんか一気に変な感じになった!調教してない!むしろ野放し!仮所有だから忠誠もない!」


「アルジ、ソレ、マジュウガキイタラカナシム」


「……う。ごめんなさい。と、とにかく人質助けて誘拐犯締め上げて、多分人買いが繋がってるから捕縛しますよ!」


 それからお仕事はサクサク進み、無事人買いも捕縛。捕われていた娘さん達を家に送り、騎士団手前でカーティスが爆弾を投下しました。


「そういや、ジャッシュじゃなくてロザリンドが囮になればよかったんじゃね?前、幻術使ったじゃん。女装もいらなくね?」


「てへ」


「ええええええええ!?そうなんですか!?そうなんですか!?ロザリンドさぁぁぁん!?」


「…ジャッシュ…」


「あー、ロザリンドだもんな…」


「…そうか、魔法があったか」


 泣き叫ぶジャッシュ、憐れむディルク、呆れたレオニードさん、その手があったか!的なフィズ。完全に面白がってるカーティス。

 実は、私が幻術で囮になってジャッシュに天啓使ってもらう方法もあったんですよね。


「まぁ、ジャッシュの天啓は大切な者に作用するから私には効かない可能性もあったし、幸運は使うの初めてだから自分に使うべきだと思ったんだよ」


「それなら…いや、女装要らなかったですよね!?ロザリンドさんに使わなくても、僕が見つかれって引き寄せれば天啓使えましたよね!?」


 おお、ジャッシュ頭いいな。正解。


「うん」


「ロザリンドさぁぁぁん!?」


 そんな話してたらドーベルさんに見つかり、女装を趣味と勘違いされて違うと泣き叫ぶジャッシュ。大丈夫だよ、ドーベルさんからかってただけだよ。予想外にジャッシュがとり乱したのでドーベルさんと宥めました。


 その後ジャッシュと書類仕事に勤しみ、ディルク達は事後処理をして今日のお仕事は終了になりました。


 今日はディルクと手を繋いで帰ります。行きも帰りも一緒なんて楽しくて、くだらない話をしながら私は幸せな気持ちで帰宅したのでした。

 皆様おわかりでしょうが、ロザリンドは愉快犯。カーティスも幻術あるの知っててあのタイミングでばらしたので共犯です。ジャッシュはまたイタズラコンビにいじられるかもしれません。


 余談ですが、仮所有魔獣の貢ぎ物は宝石だったり薬草だったりして、どう考えてもエサ代以上なんでロザリンドは困っています。要らないと言ってもやめないのは、単に自分達はこんなにすごいモノを採れるんですよ!とアピールしたいからです。ロザリンドにはその辺が通じていません。

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ユハズ先生も絵が綺麗なので必見ですよ!!悪なりコミカライズ、スタート!! 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!コミカライズのリンクはこちら!」 小説二巻、発売中です。書き下ろしもありますよー 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!二巻のリンクはこちら!」
― 新着の感想 ―
結局、「イタズラっ子」なんですよね、ロザリンドちゃんもカーティスも。 そして何れは「ロザリンドちゃんだから仕方がないʅ(◞‿◟)ʃ」と半ば諦められるまでに至る、と。 「どうしてこうなった」って、いわば…
[一言] 久しぶりに最初から読み直してます。……リアルベーコンレタスとは?……気になったら作者様へとあったので
[一言] リアルベーコンレタスとはどうゆう意味なんですか?
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