第743話 お出かけ前(ゲンタ視点)
ゲンタ視点です。
朝の朝食販売を終えた後、僕たちは一度マオンさん宅に戻った。庭先にあるテーブルを囲み一休み、その後でマオンさんは洗濯などをして過ごすという。
「それにしても…」
マオンさんが話し始める。
「ガントンたちは元気だね。職人だから朝早くから仕事しててさ…、今は休憩だろうにあんな事してるんだからさ」
マオンさんの視線の先、そこにはガントンさんたちが庭の片隅で相撲のような事をしている。相撲といっても土俵はなく、押し出しや寄り切りといったリングアウト式の勝敗はない。相手の体の足の裏以外の部分を地面につけたら勝ち、おそらくモンゴル相撲に近いものだろう。そしてそこには意外な人物がいた。
「むうう…、やりますな。よし、私にもぜひやらせて下さい」
そう言ってガントンさんに挑戦しようと名乗りを上げたのはなんとミトミツク様、王様の大叔父かなにかに当たる人物である。そんなミトミツク様だが非常に気さくな人物だ、ある時は農家の人に混じって働いていたり、川漁師のセゴドさんと魚を取りに行ったりしている。そして今日は朝早くからガントンさんたちの木材加工の現場に混じっていたりする。そんなミトミツクさんが相撲までやろうとしている。
「お、お待ちを!御隠居!」
「あ、相手は二つ名持ちの屈強な冒険者、万が一にも御身に何かあっては…」
ミトミツク様付きのスケアーリィさん、カクノーブルさんの二人が必死になって止める。しかしミトミツク様はやる気まんまん、二人の制止も聞かず上半身の服を脱ぎ始めた。それを見て二人はさらに必死になって止める。
「お、お歳をお考え下され!」
「ムキィーッ!!年寄り扱いをするんじゃありません!私は絶対やりますぞ!さあさあ、ガントンさん!手加減はいりませんぞ、いざ勝負勝負!!」
そう言ってミトミツク様は服を脱ぎ捨て上半身裸になるとガントンさんに挑みかかった。
がしぃっ!!
激しくぶつかり合いがっぷり四つで組み合うガントンさんとミトミツクさん。互いに気迫の声を上げ力比べの体勢になる。
「むぐぐぐぐっ!!」
「むおおおお!!」
すごい、ミトミツク様…。あのガントンさんのパワーを受け止めている…僕がそう思った時だった。
「ぬあああっ!!」
「おおおおっ!?」
ドタアッ!!
ガントンさんの豪快な上手投げが決まった、ミトミツク様が地面に転がる。体中すっかり泥だらけだ。
「「ご、御隠居!!」」
心配の声を上げるスケアーリィさんたち、一方のミトミツク様は悔しそうにしている。どうやら怪我はないようだ。
「むうう、力比べなら今まで負けた事はなかったのに…」
「人族にしてはかなりやる方じゃがワシから見ればまたまだじゃ!」
「負けたままでは終われませんぞ!もう一番、もう一番ッ!!」
ミトミツク様がガントンさんにリターンマッチを要求する。
「わはははっ、その意気や良し!だが、お主では五回…いや十回やっても結果は同じじゃ!賭けても良いぞ、お主が勝ったら屋敷のひとつも建ててやるわい!」
「言いましたなぁ!!ならば私は国王陛下に献上する事がある銘酒を賭けましょうぞ!」
「なんと!?俄然やる気が出てきたわい、ならば十回やってお主が一度でもワシを負かせばそちらの勝ちで良いわい!!いざ勝負じゃあ!!」
がしいっ!!
再び組み合う両雄、こりゃあ長い勝負になりそうだ。最後まで見てると遅くなってしまいそうなので僕はキリたち三人を連れて町の外を案内する事にした。




