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第696話 ブランドイメージを作れ


 すいません、前回の予告でいかにも匂わせ発言をしましたが字数の関係でザンユウさんは次回登場予定です。よろしくお願いします。


 なんとなんと意外な事にケシタの地に植えたブルーベリーの木から最初の実が出来た。ブルーベリーの木を植えてからまだ半月ほどくらいしか経ってないのに…。それなのにすぐに実をつけたという事だからおそらく光と闇、そして地水火風の精霊たちの加護を結集した恩恵だろう。


 もっともいくら精霊たちが力を合わせたからといって年に何度も何度も実を付けるとい受けて訳ではない。それというのも植物にとって実を付けるというのは人間で言えば子を身籠り出産するのと同じ事。ひとつの命がひとつの命を産み出す事は当然ながら大きな負担がかかる、それは植物もまた同じ事だそうだ。自然と共に暮らしている精霊にとって甘いものや果物は食べたいけれど植物を苦しめてまで得ようというものではないようだ。それで早速ジャムを作ってみたんだけど…。


……………。


………。


…。


「ほえー、旦那だんさん、こんなん作ったん?これ、アレやろ?あの青紫色のジャムやろ?はぁーん、コレがあのケシタの地で作れたんかいな…」


「ええ、思いのほか上手い事いきましたよ。チナーシェ店長」


 ケシタの地で初めて収穫したブルーベリーの実を使って隊員たちはジャムを生産した。それを僕がビン詰めして町に持ち帰りチナーシェ店長に見せた。そしてこれを売る為の算段をする。


「なるほど、これを売るエエ方法はないかっちゅう事やね」


「そうです。お店の棚に並べてもらうもよし、お得意様に売るもよし…。だけど生産量が限られてるからあまり店に並べられないんですよ。あと、出来れば…少しでも高く売りたいんです。そうすれば子爵領守備隊ミーンズ・ガードの収入も増えますから…」


「ははーん、なるほどねえ。そら大事な事やわ!商売の基本であり秘訣はなるべく安く仕入れてたこう売る事や。それとゲンタはんがすでに売ってはる色んなジャムと差別化もする事やね。なんせこのブルーベリー…、売ってるのもあるんやから…」


「そうだった…」


 僕はイチゴジャムをはじめとして様々なジャムを売りに出している。リンゴやイチジク、ビワにアンズ、なんならピーナッツバターもチョコレートクリームなんかも…。当然、ブルーベリーのジャムも…。今さらって感じだけどライバル多いなあと考えていた僕だけどチナーシェ店長は冷静に何かを考えている。


「なあ、旦那だんさん?」


 チナーシェ店長が口を開いた。


「このジャム、味に自信あるん?」


「う、うん。ちょっと食べてみたけど美味しいと思うよ。精霊たちも喜んでつまみ食いしてたし…」


「ほな、あの人に食べてもらおか」


「あの人?」


「うん、ザンユウはん」


「えっ?ザンユウさんに?」


「せや。ほんでな、ザンユウはんがウマい言うてくれはったらごっつハクが付くやろ。きっと評判になって高値が付くで!」


 ザンユウさんはエルフの食通だ、なんでも王宮などで饗される料理の顧問なんかをする事もあるという。例えば外国から外交の使節団が来れば相手国に禁忌タブーとされる事は厳禁だし、同時に自国の威信も示さねばならない。また、季節の催しなどに合わせて伝統や格式のある料理を出さねばならない。他にも食べる人の好みや持病などを勘案して献立を考えたりもするらしい。


 しかしながら一番大事な事は美味しい事、当然ながらザンユウさんは味にも厳しい。果たして僕らが作ったジャムは美味しいのだろうか、だって作ったのは僕や隊員たち素人なんだし…。そんな一抹の不安がよぎる。


「だ、だけど、もし不評だったら…」


「ま、なんとかなるやろ。上手くいけば儲けモン、そうでなくてもジャムは元からたこう売れるんやし!」


「そ、そんなに気楽に考えて良いのかなあ…」


「だーいじょーぶや!ほな、ウチちょっと行ってくるわ!ザンユウはん、ウチの宿にまだ逗留しとるさかいな。えジャム入った、食べてみいへんってバアーッと行ってササッと話つけてきたる!まかしときぃ!!」


「え?ちょ…」


旦那だんさん、ジャム持ってついてきてや!」


 そう言うやいなやチナーシェ店長はカウンターを飛び越えてスタコラサッサ、足取り軽く走り出した。


「ホ、ホントに行くの…?」


 後に残された僕は不安を抱えつつもジャムを持ってゴクキョウさんの宿屋へと向かうのだった。


 次回…。


 『吹雪吐く食通』


 お楽しみに。

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