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第659話 一難去ってまた一難、ソル様…僕はあなたを忘れない!


 タイトルを北斗のアニメっぽくしてみました!


 シルフィさんが鬼気迫る声で叫んだ。


「きょ、巨大な精霊の気配が接近!!これは…いったい?」


 グウウウゥンッ!!


 僕たちから少し離れたところに直径2メートルほどだろうか、黒い球体状のモヤが生まれた。地面からほんのわずかだけ浮いており紫色の妖しげな色合いが時折垣間見える。


 ぬっ…。


 その球体状のもやの中から真っ黒な指先が現れる、形から見てあれは右手の先…続いて左手の指先…。どつやら手袋みたいなものをしているらしい、人の指先…なんだろうか…?


「あ…、ああああっ!!」


 ガチガチガチッ!!


 ソル様の歯が激しく鳴っている、寒い…のではない。恐怖だ、ハッキリと分かるくらいに体を震わせている。


「ソ、ソルお爺ちゃん!?」


 僕は様子のおかしいソル様に声をかけた。


「ソル…、そこに…、いるの…?ソル…」


「ヒ、ヒイッ!!」


 モヤの中から聞こえたのはなんというか、ねっとりとした女性の声、それを聞いて明らかに怯えているソル様、黒い球体状のモヤから出ている指先がふすまへりを持つように曲がった。ガッチリと掴むようにした後、両手は襖をぴろげるかのように大きく両側に開かれた。


 シュウウウゥ…。


 黒いモヤが一瞬にして晴れる、変わって現れたのは長身の女性だった。上から下まで黒ずくめの魔女のような格好。頭の上には魔女のような帽子、鼻から下も薄布で覆っていてその素顔はよく分からない。


 そして何より特徴的なのはその髪と瞳だ。その髪はとても長く足元まで…いや、足元の影の中に至っている。その長さがどれだけあるのか、ハッキリ言ってはかり知れない。そして衣服などでは隠されている素顔や肌、唯一例外なのは目元だけで切れ長の理知的な印象を受けた。そしてその瞳だが…、とても濃い赤色を…いや紅色か?いくら洗っても落ちない血のような色をしていた。


「あの女の人…、初めて見たのにどこかで会った事があるような…」


 既視感がある、なぜだか分からないけど…。そんな事を考えていると現れた女の人はゆっくりとソル様に向かって歩いていく。ゆっくりと…音も無く…。


「何を…」


 静かにゆっくりと…、震えている以外は石膏像のように動けなくなっているソル様に向かって歩いていく。


「しようとしていた…ソル…?…その、伸ばした右手で…」


 そこにあったのは倒れて気絶しているフィロスさんのお尻の方に伸ばしている手があった。


「ま、待て!!バアさん!ま、まだ、まだわしは触っとらん!ゆ、許してくれいっ!!」


「…バアさん?」


 ぴくり。黒い服の女性が体を一瞬だけ反応させた。


「あっ!?ち、違うんじゃ!バアさんではないッ!!言い間違いじゃ!レネ、待ってくr…」


「…有罪ギルティ


 必死に言い募ろうとするソル様とは反対に女性の方は


 シュルルルッ!


 女の人の足元から無数の髪の毛が吹き出した、それはあっと言う間にソル様を絡め取りグルグル巻きにした。そしてその髪はまるで意思があり自在に動かせる腕のように動く。


 ばちん!!びたんっ!!がんがんっ、ぽいっ!!


「ほげえええっ!!!!」


 まるで癇癪を起こした幼い子供が手にしていた人形を怒りのままに地面に叩きつけるかのように髪の毛はソル様を何度も地面に叩きつける。そしてそれにも飽きた子供がその人形を放り投げるようにしてソル様は解放された。


 ドサッ!!


 投げ離されたソル様が地面に落ちてきた、慌てて僕は駆け寄った。


「ソ、ソル様…」


「う、うう…。ゲンタ…ちゃん…。わし…、わし…」


 弱々しくソル様が呟く。


「大丈夫ですか?しっかり!お気を確かに!!」


「わ、分かってくれる…じゃろ…?ゲンタ…ちゃんなら…」


「な、何をですか!?ソル様!?」


「わしはただ…、フィロスちゃんの…うう…」


「フィ…、フィロスさんの…何ですか?」


 まるで何かを言いのこそうとするかのようにソル様が言葉を絞り出そうとしていた。僕はその言葉を決して聞き逃すまいとその口元に耳を寄せた。


「あの若い…フィロスちゃんの…おケツをちょっと触ってみたかった…だけなんじゃ…。ゲンタちゃんも…分かって…くれる…じゃろ?…ガクッ」


 ソル様は意識を失った。


「いや、それダメでしょ…。僕は今、シルフィさんと結婚しようって時なのに…」


「ええ…。まあ、マニィとフェミとも結婚しますけど」


 僕の呟きにシルフィさんも応じた、するとソル様はカッと目を開くとムクリと身を起こした。


「そ、それじゃ!!ズ、ズルいぞ、ゲンタちゃん!可愛い嫁が三人もおるではないか!マニィちゃんとフェミちゃんってアレじゃろ?受付してる…」


「は、はい…」


「それなー!ゲンタちゃんは三人もいるけどわしはレネひとりだけなんじゃよ、嫁さん。他にはハーレムしてる神とか全然おるのにさ、なんでわしだけこーなるの?たまにはわしも若い子とイチャイチャしたって…」


 シュルルル…。


「はうっ!?」


 再びソル様の体に髪の毛が巻き付き地上から少し浮かび上がらせた。そしてレネと呼ばれる人がその背後に回っていた。


「若い…、女…?」


 ゆらり…。


「ち、ち、違う!わし、そんな事しない!わしはレネ…、お前ひとすじじゃ!」


「本当?」


「もろち…い、いや、もちろんじゃ!!」


「そう…、分かった」


「ホッ…」


 ソル様は助かったとばかりに息を吐いた。


「で、本音は…?」


「グフフ、この場を乗りきってまたお触りのチャンスを狙うに決まっとるであろーが!…ハッ!?」


 ギギギ…。


 唯一動かせる首を錆びついたネジをまわすようにしてソル様が後ろを向こうとする。しかしレネと呼ばれた女性はベルトの位置てソル様の背後から両手を前に回してしっかりとクラッチした。


「…有罪ギルティ、…処刑エクスキュージョン!!)


 黒ずくめの女性、レネさんはソル様を抱えたままそのまま真後ろにスープレックスにいく。


「うわー!!動けないーー!!!」


 ソル様が叫ぶ、しかし髪によってグルグル巻きにされ脱出は不可。受け身も取れないその体勢のまま強烈な一撃が決まる。


 ずがあっ!!!


 地面にセル様の体が突き刺さる。


 すー…。


 そしてソル様を投げて地面に串刺しにしたレネという女性が音も無く、そして重力を無視して綺麗な立ち姿に戻る。


「レネ…?ま、まさか…。あ、あなた様は…」


 シルフィさんが驚愕したように目を見開いた。


「し…知っているんですか?シルフィさん!」


「え、ええ…」


 なんだ…?シルフィさんがなにやら緊張というか言いにくそうにしている。


「こ、こちらは闇の大精霊…、地方によっては月の女神とも謳われるレネ様…。ソル様の妻と言われている御方ですよ」


「ええっ!?ソル様の奥さん!?」


 僕は驚いて大きな声を上げた。


「そうです。太陽と月は表裏一体であり常に一組…、夫婦に例えられる事も多いのですよゲンタさん」


「ゲン…タ…?」


 ぴく…。


 黒ずくめの大精霊、レネ様が僕の名に反応したような気がした。


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