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第637話 少し遠くから来た隣人くらいの感覚?


 恋愛回って難しい。


 あ、皆さんあけましておめでとうございます。


 友人に勧められ昨年初めて馬券を買いました、有馬記念です。


 連勝とか分からないので一着を当てる単勝に挑戦。


 レガレイラ、ありがとー&おめでとうー!!


 ゆっくり怪我を治して下さい。

 


「もし僕が異世界人でも受け入れてくれますか?」


 問いかけた僕の言葉、それを三人はまっすぐに聞いてくれた。ひゅううう…とまた風が吹いた。


「オレは…、さ」


 最初に口を開いたのはマニィさんだった。


「言った事…、あったと思うけど捨て子だったんだよな…オレ。孤児院の前に…さ」


 鼻の頭を掻きながら少ししんみりした様子でマニィさんが続ける、こちらにゆっくりと歩きながら…。


「だからオレ…、どっから来たのかも分かんねぇ。親の顔すら知らねえ…。孤児院で育って、フェミと姉妹みてえに育って…オレが分かってんのはそれくらいだよ。でもさ、一個だけ分かってる事…、あるんだ。ダンナが言ってくれた事、嬉しかったんだぜ。大事にしてくれてよ…、それでオレは好きに

なったんだ。だから、ダンナがどこの誰でも構わねえ。一緒になるって決めたんだからよ」


 グイッ!!


 近づいてきたマニィさんがまるで喧嘩をするみたいに僕の胸ぐらを掴んで引き寄せた、凄い腕力だ。


「オ、オレをナメんなよなッ!!そんな事ぐれーでグラつくハンパな気持ちじゃねーんだ!!」


「マニィさん…」


 怒ったように、そして悲しそうにマニィさんが僕と数センチほどの距離まで顔を近づけて言った。まるでヤンキーの睨み合いだ。そこにのんびりとした声がかかった。


「ダメだよう、マニィちゃん。そんな乱暴にしちゃ…」


「フェミ…」



 そっ…、僕の胸ぐらを掴んでいるマニィさんの手に横合いから包み込むように両手が添えられた。そんなフェミさんの言葉に反応してマニィさんが掴んでいた手を離した。そして話し手はマニィさんからフェミさんに移った。


「ゲンタさん…」


「はい…」


「えいっ!!」


 ぎゅむっ!!


 キックボクシングで言うところの首相撲くびずもう、フェミさんが両腕を僕の首に回してグイッと引きつける。僕の上半身は前傾姿勢になりフェミさんの胸元に顔からダイブする形になる。ギルドの制服では分からない、確かな胸部装甲が僕の顔に押し付けられる。


「ねえ、ゲンタさん聞こえますかぁ?私の鼓動の音、ドキドキしてるでしょう?」


 正直、分かりません!分厚すぎて音が伝わってこないんですよ。


「でも、この音ってゲンタさんのと違いますかぁ?私は…一緒だと思ってますぅ。前にゲンタさんの胸に顔を寄せた時、聞こえたのと…」


「フェミさん…」


「何も違わないですよぉ、同じ音でした。違うとしたら生まれた場所だけ…。だとしたら…、これからずっと一緒にいれば良いんですよぅ」


 そう言ってフェミさんは僕の頭を開放した、大きく息を吸う。密着しすぎて息がし辛く頭に酸素が不足気味だ。だけどこれだけは分かる、マニィさんもフェミさんも僕を受け入れてくれるという事に…。


「ゲンタさん…」


 不意に後ろから抱きしめられた。これは…シルフィさんの声…。抱きしめられた腕と声の主を酸欠気味の頭がようやく理解できてくる。


「私も二人と同じ気持ちです…いえ、二人にも負けないくらい…。私とゲンタさんとは種族すら違います、そして生まれた世界も…。だけど私たちは分かり合えた…、私はずっと…離れたくない。寿命や慣習が違うのも分かっています…でも、…私はあなただけを一生愛していたい。ずっと、ずっと…」


 たしかエルフ族は何百年も…、長寿の人なら千年を超えて生きるという…。僕の寿命はあと数十年くらいだろう、少なくとも百年はないはずだ。間違いなく僕の方が先に死ぬ。その後の何百年も残るシルフィさんの生涯…、その間ずっと僕を愛してくれるなんて…。だったらこたえなきゃ…、その思いにも…。


「シ…、シルフィさん…」


 僕は僕の体の前に回されているシルフィさんの手に自分の手を重ねた。どんな上質な絹織物シルクよりもなめらかな感触…、自分の手を重ねたのがシルフィさんの手だという事を改めて実感する。


「ぼ、僕も…僕もあなたを…。もちろんマニィさんもフェミさんも…、大事にします!頼りないかも知れないけど…精一杯!!」


「ゲンタさん!」


 フェミさんが胸に飛び込んでくる。その後ろではマニィさんがうっすらと涙を浮かべている。


「これでオレたち…家族になれるんだな…。離れたり…しないでさ…」


 そうか…、マニィさんは…いや、マニィさんだけじゃない。フェミさんも孤児だったそうだし…、そんな二人は姉妹同然に育った…、だから離れたくないんだろう。そして何より…結婚すれば家族になる…、もしかするとマニィさんは家庭を持つ事に憧れていたのかも知れない。そんなマニィさんを見ていたら、なんだか僕は彼女が我慢をしてきたのかなと感じた。同い年とは言え姉妹同然に暮らしてきたマニィさんとフェミさん、しかしどちらかというとマニィさんがお姉さんぽく振る舞っている。だから今も優しくフェミさんも見守っている感じがする。


「マニィさんも…」


 そう言って僕は手を伸ばしてマニィさんの手を取り優しく引き寄せる。すると遠慮がちにだけどマニィさんもフェミさんの横に回って僕の体に手を伸ばしてくる。


「お、おう…」


 そしてシルフィさんにも声をかけると彼女もまた僕の横合いに回って抱きついてくる。僕はなんていう贅沢をしているんだろう、一度に三人の女性を抱きしめているなんて…。そう思ったら何やら気恥ずかしくもあり嬉しくもあり僕の顔には照れ笑いのようなものさえ浮かんでくる。


「あ…、はは…。僕は今…、幸せです。なんか…こうしてると…温かいですね…身も心も…。それにしても…、良かった…。違う世界に住んでいる事を打ち明けて…。受け入れてくれて…」


 そう言った時、マニィさんが僕の耳元で囁くように言った。


「ダンナ…、分かってねえな…」


「え…?」


「そうですよう、ゲンタさん」


 マニィさんが言えばフェミさんもまた同じように言った、それはどこか分かってないなあと言っているようでもあった。それを受けてシルフィさんが解説するように口を開いた。


「考えてもみてください。この世界には精霊も…、中には神と呼ばれる方も現れる事があります」


「精霊や神様…」


 僕の頭にはサクヤたち精霊の姿や、光の精霊王…地域によっては太陽神とさえ言われるソルさんの姿が思い浮かぶ。


「普段、精霊が住むのは精霊界…。神々が住むというのは神界です。私たちが今こうして存在している物質界とは違う場所…。言わば異世界…」


「あっ…」


 そうだ…。聞いた事がある…、みんなかま住んでいる精霊界や神界の他にも魔界があるとかって事も…。でも…、そう考えたら僕って…。


「もしかして…この世界って精霊とか神様までも来ちゃう異世界というものが案外身近にあるって事…?」


「へへっ、そーいう事!」


「ですよぅ!かなり珍しい事ですけどねぇ」


「うわあ…。でも、考えてみればそうかぁ…。他にも魔法とか伝説の金属とかあるくらいだし…。そうだよな…今いる場所と違う世界ならなんでも異世界なんだ…、そう考えたら召喚魔法で呼び出す存在がいる所は異世界そのものな訳だし…」


 不思議な事が存在するのがこの世界…、それは科学とかが発展して便利だけど魔法とか不思議なものが一切ない僕が生まれ育った地球とはまるで違う世界な訳で…。そういう視点で見れば異世界からの来訪者である僕も彼女たちには少し遠くから来た隣人といった感じなのかもしれない。


「これからはずっと…」


「一緒に暮らそうぜ」


「私たちと…」


 生まれた場所も…、日時も…、そして暮らしてきた環境も…まるで違う僕たちが今こうして結婚しようとしている。だけど共通してるのは相手を好きだという気持ち。それは遠くはてしなく、隔てた距離も時さえ超えて結びついたもの。もしかするとまだまだ越えなきゃならない壁がいくつもあるかもしれない。だけどそんな困難も、アレやコレやも乗り越えていきたい。


「僕の素敵な花嫁たちの為に…」


 僕の告白を真正面から受け止めてくれた三人を全身で感じながら僕は決意を新たにするのだった。


 次回はカグヤ回です。


『いなくなった方が良い?』


 お楽しみに。

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