第60話 サ○ヤ人!?空からの襲来!!
出掛けたドワーフの皆さんの荷物を預かっている事もあり、その番をしながら僕とマオンさんが交代で寝む事にしたのだがどちらが先かで譲り合いになってしまった。
そんな時、闇の精霊カグヤの能力で荷物を不可視して光の精霊サクヤがそれを解除する事が出来る事が判明。安心して寝む事が出来そうだ。
「すごいな…、サクヤもカグヤも…」
そう言うと、ふわふわと浮かぶ二人は上機嫌だ。テンションが上がったのか、『ぺたぺた』とサクヤは僕の顔やら頭を嬉しそうに触りまくっている。一方でカグヤは『すり…、…すりすり』サクヤが触っている反対側の頬をさするように触っている。なんともゾワゾワとする触り方だ。
マオンさんには納屋の中で休んでもらっている。おそらくは今夜、ガントンさん一行を歓迎しての宴会になるだろう。その時に備えて今は体力をキープする事にしよう。
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午後1時頃…。
ゲンタはマオンと交代し、納屋で寝んだ。いわゆる昼寝である。三時頃に目を覚まし納屋から出ると竈近くに炭を置き夜の調理に備えるマオンと、共に荷物の番を頼んだサクヤとカグヤが出迎えた。
「戻りました」
「おお、おお。ゲンタや、目が覚めたかい。そろそろガントンたちが帰ってくる時間だよ」
確かに。そろそろ出発してから二刻(約四時間)だ。お湯を沸かし僕はスーパーで買った煎茶、『寿司屋の濃い〜緑茶』を取り出して大量に淹れる。それを冷ましながら2リットルのペットボトルに入れていく。木を伐採ってくるのだから重労働、喉も乾くだろう。先程の席でドワーフの皆さんも緑茶を気に入っていたようだし、帰ってきた彼らが喉を潤すには良いかも知れない。
若い頃の豊臣秀吉と石田三成の『三献茶』のエピソードではないが、喉が乾いている人に熱い茶では気が利かない。ゴクリゴクリと喉を鳴らして飲むような飲みやすい温度が良いだろう。
一息ついたら熱い茶を淹れて休憩してもらおう。
そうこうしてるうちにガントンさん一行が帰ってきた。リヤカーでは長い丸太が積めないだろうと心配していたが、リヤカーとは別に二つの木製の平台付き四輪車がありそれぞれに丸太の両端部分を積んでいた。それを前方の台車に接続させたリヤカーで引く方法で林から町へ、そしてこの場所まで持って来たという。後で聞いたところではこの台車二つは現地で木を伐採り、その場で組み立ててしまったという。切ったばかりの生木を用いて作ったから日が経てば水分が抜けて歪みが生じるだろうが、今日明日使うくらいなら何の問題も無いとガントンさんは言っていた。
僕はと言えばドワーフの技術力の高さに驚きを隠せない、鍛冶や石工の技術だけでなく木工もまた彼らのお家芸らしい。
木材を引っ張ってきたその様子…、と言ってもマオンさん宅の敷地から見えた限りで言えば…日本の輸送で大活躍のトレーラーを彷彿とさせる。前方の運転席部分と後方のコンテナ車両部分を接続させて道路を走行する大型車両…、それが引っ張ったり方向転換などをするリヤカー部分とそれを繋いだ後方の二つの台車、そのほとんどを木製でやり遂げてしまっている。『この程度を引けないようではドワーフの面汚しだ』、積んで来た丸太をマオンさん宅の敷地の端に積み下ろしながらガントンさんが言った。元々頑健で足腰が強く、また身長が人族より低くガッチリした体型は重心も低くなり荷を引いて運搬する事にも向いているのかも知れない。
いつだったかナジナさんとウォズマさんが言っていたドワーフ族は頼りになると言っていた話があった。身体は丈夫で力も強い、頑固だが勇敢で義理堅いという彼らは正に共に戦う冒険者の目から見て信用出来る仲間なのだろう。
木の伐採から戻り、丸太の積み下ろしを終えたガントンさん一行に一息ついてもらおうと緑茶を取り出した時に、
「若えの、マオンを連れて納屋の後ろに隠れろ!急げ!」
突然ガントンさんが叫んだ。他のドワーフたちも何やら走り回っている。
「マオンさんっ!納屋の後ろへ!」
側にいたマオンさんの手を取る。
「な、何だい!?」
「分かりませんッ!」
驚くマオンさんをよそに僕はその手を引いて納屋の後ろへ。
「サクヤ!カグヤ!来てくれッ!!」
何が起こるか分からない。僕は光と闇の精霊、サクヤとカグヤを呼んだ。僕の声に応えて二人がポンッと現れる。
「みんなを守ってくれる?」
二人が首肯き、納屋の向こう側へ急行する。一方で納屋の向こう側からはガントンさんの緊迫した声が響く。
「者共ッ!!手引車と台車を打ち立て体で支えろッ!死守だッ!後ろを守る不動の楯とせいッ!」
「「「応ッ」」」
弟子たちの気合いの入った声が辺りに響く。
どうやらガントンさんたちはリヤカーや台車を忍術で言う所の畳返しの要領で使い、日本の戦国時代に飛来する矢を防ぐ為に地面に打ち立てた木楯のようにバリケードを展開しているらしい。
「く、くるぞッ!!」
「「「ッ!!!」」」
声だけが聞こえる納屋の向こう側、様子が見える訳ではないがその緊張感が伝わる。だけど、何が来るんだ?
ここは町中だ。町の外から何かが来るならまずは門番さんなり衛兵なり、なんだったら騎士もいるらしい。その人たちが対処をするだろう。何が…、そして何処から来る?
「来たッ!!!」
ガントンさんの声が響いたその瞬間、
『ずっ…どおぉぉぉーーーん!!!』
『どおぉぉぉーんっ!!』
ビリッ!ビリッ!凄まじい衝撃が二度お腹の芯に…、そして地面から足の裏を通じて体を走り抜ける。思わず隣にいるマオンさんを抱きしめて守るようにする。
「マオンさん、大丈夫!?」
マオンさんは僕を見上げ声もなく、コクコクと首肯いた。どうやらケガなどの心配は無いらしい。
二度の衝撃の後、辺りには音も、そして何かが動くような気配も無い。とりあえず危機は去ったのだろうか…、僕は納屋の陰からそーっと顔だけ出して辺りの様子を伺う事にする。そこにはもうもうと舞う土煙とふわふわと浮かぶ二人の精霊、サクヤとカグヤがいた。彼女たちも無事のようだ。
その二人が浮かぶ所の下、地面にはリヤカーや台車を楯のようにしてバリケードを作り支えているドワーフの皆さんがいる。不思議な事にあれだけもうもうと舞っている土煙がこの納屋の周りはそうではない。この衝撃がある前と変わらない空気がここにはある。一体何故なんだろうと考えていると、カグヤが僕に気付いたのかこちらを向いた。小さく手を振ると再び前に向き直り、両手を天に掲げると土煙が納屋の向こう側…さらにさらに奥へと押し出されていく。そうする事で土煙が舞う場所が減っていく、その代わりその濃さがましていくようだった。土煙を一か所にまとめているのだろうか。
ある程度まとまった所で今度はサクヤが前に出る。カグヤと同じように両手を天に掲げると、強い光が辺りに放たれる。あまりの眩しさに僕は一瞬目を瞑る。次の瞬間、辺りから土煙は消え視界が開ける。
そこには先程までと変わらないマオンさん宅の敷地があった。ただ、地面に大きな球体のようなものが二つ…、クレーターのようなものにめり込むような形で存在している事を除いて…。




