第287話 料理以外の使い道。
精霊が身近にいて力を貸してくれる事、これは決して有り得ない事ではないらしい。ただ、それには素質や資格も必要であるらしい。いわゆる精霊魔法の使い手、彼らが精神力を振り絞り精霊に実体化してもらう。いわゆる精霊召喚だ。
「それでも一つ、稀に二つの属性の精霊だ。それを…」
テーブルの上や、僕の体にくっついている四人の精霊たちを見てあり得ないとばかりにザンユウさんが声を洩らした。
「あんさん、ホンマに魔法は使えへんのか?」
ゴクキョウさんが質問いてきた。
「はい。僕には魔力がありませんので…」
おそらく魔法とは無縁の地球で暮らしてきたから僕には魔法の素養が皆無なんじゃないかなと思う。マジックと言えば文房具か、タネがあるシルクハットからハトが飛び出すようなものしか地球には存在しない。つまり魔法そのものが存在しないのだ、地球人に魔法の素養がないのも道理だろう。
「愛されておるのかもな、精霊に」
ザンユウさんが感慨深げに呟いた。
□
「ふはぁ〜、生き返るぜぇ〜」
マオンさんの家の地下に続く扉からどやどやと足音をさせて集団が庭に出てくる。ガントンさんやゴロナーゴさん、リョマウかさんたちもいる。
「どうでした?使ってみた感想は」
やってきた皆さんに声をかけた。みんな口々に満足だと応じた。
「ありゃあ凄えな、坊や!焼き石に水をかけるってのは。それに濡れた布で扇いでやるとか…。ありゃあキクなあ…、ヌルい蒸風呂なんざもう入れねぇぜ!」
中でもゴロナーゴさんが上機嫌だ。
「俺たちはこっちで勝手にやるからよう、客人方は気にせずやってくんな」
気遣い無用とばかりにこちらのテーブルに声をかけたゴロナーゴさん、手慣れた様子でブルーシートを何人かで手分けして敷き始める。
「もしや、一豊石を使うたんか?」
「ぇ、ええ。でも、よく分かりましたね」
ゴクキョウさんの質問に応じた。
「焼き石言うてたからな。どんな焼き石や、これみたいに石版みたいにしたんか?」
「いえ、最初に一豊石を一度細かく砕いて粉末状にして…」
「何ッ!?一豊石を粉末にかッ?」
「はい、その粉のようにした一豊石にとある処理をしてやると粘土のようになりまして。そうすると、陶器や磁器を作るみたいに形作ってやる事ができます。そうした粘土状の一豊石の粉を練り上げて煉瓦のように成型してやるんです」
「ふむう…」
「最後に仕上げをすると…。この石板のように一個のしっかりしたものになるんです。先程の蒸風呂に使ったモノならば大きな煉瓦状の形で、それを熱したものをこの家の地下の密閉空間に置いてやり水をかけてやるんです。ほら…、こんな風に」
そう言って僕は魚を焼いた石板に少しだけ水をかけた。
じゅわ〜っ!!
たちまち立ち昇る白い湯気。
「おおっ!こらキョーレツや!焼け石に水かけてもこうなるが、ここまでの勢いはあらへんで!」
「ええ、そうなんです。しかもこの一豊石は熱保ちが良くて簡単には冷めません。だから、水をかければ長い時間アツアツの蒸気を放つ事ができます」
「むむう…。あの不毛の土地の原因になっていた火山の石が料理にも蒸風呂に使えるとは…。こら凄い事やで…」
顎のあたりを手でさすりながらゴクキョウさんが呟いていた。




