第284話 赤熱の石版。
「あの『一豊石』を加工したんか?しかし、これを何に使うつもりなんや?」
ゴクキョウさんが首を捻りながら僕に尋ねた。
「何にでも使える…、と言ったら言い過ぎですけど…。いくつかの目的に使えますよ。そうですね….今考えてるのは…」
僕はゴクキョウさんの耳元に手を寄せ、周りの人に聞こえないような小声で話した。いわゆるヒソヒソ話のような感じだ。それにすぐさまゴクキョウさんが反応した。
「なんやてッ!!」
ゴ…、ゴクキョウさんが…。ゴクキョウさんが立った。
「面白いッ…!!こら…面白いで、あんさん!しかも…、なんや!こら、ザンユウ先生も是非とも見に来はるべきやろな!」
「むっ!私がですか?」
ザンユウさんが少し怪訝な表情をしながら応じた。
「せや!!ザンユウ先生もこれには唸るはずやで!それにしても…、何が起こるか自分だけ分かっとるというモンは…、なんや気持ちの良いモンやな!」
快晴の日の太陽、そんな感じの満面の笑み。そんな表情でゴクキョウさんが話と焼き芋を楽しんでいた。
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三日後の昼…。マオンさん宅の庭…。
「さあ、今日はどんなんを食べさせてもらえるんかな!?」
上機嫌なゴクキョウさんがザンユウさんを連れだって軽い足取りでやってきた。
「お待たせするのは勿体つける感じがするので…、早速ですが…」
いつもみんなで使っている石木のテーブルには五徳代わりの鉄の骨組み、高さ20センチほどの背の低いジャングルジムのようなもののがある。そのてっぺんにA3ほどの面積がある鉄板状になった一豊石の板がある。元々は黒色の板だが、今は赤い色を帯び熱を放っている。
「最前から一豊石の石版を温めておきました、今この状態…石版の中から赤い色が浮かび上がっているぐらいがちょうど良い頃合でして…」
「ふむ…。先日の焼き芋と同じだな、芋に熱を通すのに最良の頃合いとなっていた…」
ザンユウさんが先日の芋を焼いていた焼き櫃の中の様子を思い返しながら呟いた。
「おっしゃる通りです。煮たり焼いたり…火を通す調理をする上で丁度良い火加減と言うのは大事ですが、なかなかどうしてそれをやってのけるのは難しいモンです」
ここ異世界ではガスコンロというものは無い。薪や炭火を調理場で使う。いわゆる薪炭の類が燃料となるのだが、火力の調整は思い通りにいかないのが実情である。
「薪や炭火では上手く調整しにくい食材への火の通りも、この一豊石の石版を使えばどうでしょうか?」
「んん?どういうこっちゃ?」
「一豊石は熱すると石の内部に熱を溜め込む性質があります。そして溜め込まれた熱は収束され強く、それでいて食材の表面だけを焦がすのではなく中までしっかり通る熱となります」
「そうか!この石板があれば誰でも容易に食材への熱を通す事が出来るっちゅう訳やな!」
ゴクキョウさんが気付いたようだ。しかし、それだけでは満足出来ない人もいるようで…。
「だが、肝心なのは味そのものだ!!…ぬうっ!?」
至極当然、かつ大事な事を言ったザンユウさんに対し僕は『みなまで言うな』とばかりに両手の平を前に出した。
「仰る通りです。それでは早速調理といきましょう」
僕は徐に立ち上がった。




