表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

282/767

第281話 故郷の石。


「なんちゅう事をしてくれたんや…」


 そんな言葉を洩らしていたのはとうに老境に入っていると言っていい男性だった。身なりも良く、一目で裕福であろう事が(うかが)える。エルフにしては珍しい…、と言うより初めて見るが剃り上げた頭部。いわゆるスキンヘッドである。


 その男性は感動のあまり…といった感じだろうか、ハラハラと涙を流し手に持った芋には一口だけ(かじ)った後があった。


「これは…ゴクキョウさん…。どうされましたかな…?」


 知り合いなのだろう、その男性にザンユウさんが声をかけた。ゴクキョウと呼ばれた男性は涙を流しながらも饒舌に語り始めた。


「このお芋さん、上手に()いたなァ…。芋も見事やが火の通りが抜群や…。ワイはなァ…、山林(ヤマ)育ちのエルフなんや…。南方の…、それもやせた土地のな…」


 火山から流れ出た溶岩が冷えて固まり、剥き出しの岩場も多い山林がゴクキョウさんの生まれ故郷であるらしい。生活していくには厳しい大地、そこでよく目にしていたのがこの黒い石だったそうだ。


「何の腹の足しにもならんこの黒い石がのう…、そこら辺にゴロゴロしてて…。そのせいでロクに実入りの良い植物は根付かなかったんや…。森を貧しくさせる黒い石、それがなあ…。それがこんなん美味いお芋さんを作るのに一役こうて…。甘い芋…、それだけやない!ワイにはなんかこう…懐かしいニオイみたいなモンを感じるんや。故郷で食う、何気ない(かて)のようにな」


 そう言ってゴクキョウさんはリョマウさんを見た。


「あんさん…、リョマウさん言うたかの?あんさん、四分割地域(クワトロ)の…それもトサッポンの出身やな、どないや?」


「あ、ああ。確かにそうじゃ。わしはトサッポン生まれ、四分割地域(クワトロ)南端部(ハジナン)にある浜人(ハマーン)じゃ」


 四分割地域(クワトロ)…、ここミーンの南方にある海にせり出した険しい地域らしい。その中心地からまるでバツ印を記したかのように山脈が切り立ちその地域を東西南北に四分割していると言う。その南側にある地域がトサッポン、リョマウさんたちの生まれた地域だそうだ。ちなみに浜人と言うのは浜の近くの出身者と言う意味、反対に山あいの出身者は山人(ヤマーン)と言うらしい。


「そうか…。それであんさん、浜はどこや?」


「カツランじゃ」


「ホ…、カツラン浜か!ワイの山はオゴウじゃ!懐かしいのう…。ほなら本物(ホンマモン)や、本物の故郷のニオイや…」


「おんし(あなた)はオゴウか!?カツランから川を上ればすぐそこじゃ、まっこと近いぜよ!!ははははっ!」


 目を細めゴクキョウさんが懐かしそうに呟きながら再び焼き芋に嚙りついた。一方でリョマウさんは嬉しそうに笑った。


「オゴウの生まれで…、ゴクキョウ…?…もしや!?」


 そばにいたチョウジウロさんが声を発した。


「あなたは…、オゴウ出身の大商人…ゴクキョウ・マンタウロ氏ではありませんかっ?」


「いかにも…。ワイがゴクキョウ・マンタウロや」


「や、やはり…」


 何やら急に威厳ある雰囲気になったゴクキョウさん、そしてそのゴクキョウさんを憧れの人を見るような感じで見つめるチョウジウロさん。チョウジウロさんほど熱心ではないがリョマウさんやシンタウロさん、ゾウイさんもゴクキョウさんを見ている。


 チョウジウロさんはリョマウさんたちと組んで商売(あきない)をしている。話を聞いた感じではゴクキョウさんは成功を収めた大商人、同じ郷里の大先輩といった感じなんだろう。


「今日はあんさんたち若い人らにたくさん学ばせてもろうた。もし、何かあったら遠慮のう言ってや!川船頭(かわせんどう)なら荷を運べるやろうしな」


「そりゃあとってもありがたいきに!」


「商都に荷運びする機会があったらウチにも寄ったってや」


「是非、そうさせてもらいますきに!」


 リョマウさんたちも喜んでいる。


「あ、それなら…」


 僕はこの黒い石を使っての新たな商品作りを考えていた。


「この黒い石を加工して作りたいと考えているものがあるんです。あと三日くらいで試作品が出来上がる予定なのですが…、皆さんはまだしばらくこの町にはおられますか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ