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第244話 【閑話】魔法姫フィロス。精霊魔法と古代語魔法の位置付け。


 今回はフィロスの話と、この世界における魔法についての筆者なりの考えを書いていきます。


 五十年前…。


 ミーンを中心に名を馳せた二つ名『魔法姫(プリンセス)』を持つエルフの女性魔法使いがいた。主に古代語魔法、そして精霊の力を借りる精霊魔法の使い手である。しかし、彼女にも長い長い雌伏の時期があった。


「やはり一切の精霊召喚は出来ぬか、フィロス」


 里長(さとおさ)の声が響く。


 これはまだ『魔法姫』と呼ばれる前の若き日のフィロスの話。



 エルフの里に生まれたフィロスは深い精霊とのつながりがなかった。だが、一方で相性の悪い精霊もいなかった。精霊の力を余すところなく発揮できる真の姿、精霊の人型での召喚が出来ないというのは、その精霊の属性とは相性が最良ではない事を意味する。もっとも、とある属性と最良の…近しい関係を持つ者は反対の…相克(そうこく)の関係にある属性の精霊とは基本的に相性が悪くなる。例としては火精霊(イグニスタス)と近しいと反対の水精霊(アクエリアル)と相性が悪くなる事が一般的である。


 相性が良い場合、精霊が自身の力を全て発揮出来る『人型』での召喚が可能になる。しかし、相性がそこまで良くなければ簡易的な形態である『球型』で召喚をする事になる。この状態の精霊は『人型』程には力を発揮出来ない。


 そして問題なのが、その属性の精霊との相性が最悪の場合だ。この場合はその属性の精霊を『人型』はおろか『球型』で召喚も出来ない。それどころかその属性の精霊の力を借りた魔法を発動する事さえ出来ない。例えば火精霊との相性が最悪の場合、一番初歩とも言える『発火(ティンダー)』というマッチの先程の火を起こす魔法すら使えないのだ。


 とある属性の精霊との相性と出来る事を簡単にまとめれば以下のようになる。


最良 その属性の精霊魔法全て習得出来る可能性があり、精霊を『人型』でも『球型』でも召喚する事ができる。


良い その属性の精霊魔法を比較的上位のものまで習得出来る可能性があり、精霊を『球型』で召喚する事が出来る。


普通 その属性の精霊魔法を中位レベル程度まで習得出来る素質があるが、精霊をいかなる形態でも召喚する事は出来ない。


悪い その属性の精霊魔法を比較的下位の物まで習得出来る可能性があるが、いかなる形態でも精霊の召喚は出来ない。


最悪 その属性のいかなる精霊魔法も使用出来ず、いかなる形態でも精霊の召喚は出来ない。


 以上である。


 エルフ族は自然や精霊と共にある種族だ、その精霊と近しい関係にないと言うのは『精霊から愛されていない』とさえ考えられている。それはエルフの里の中においてはある種のステータスを失うようなものであった。 


  さすがに迫害や嫌がらせなどを受ける事は無かったが、全ての属性の精霊との相性が『普通』であったフィロスは使えない属性の精霊魔法こそ無かったが、『人型』はおろか『球型』での精霊召喚出来ない。これではとても精霊と共にある種族、エルフ族であるとは声高に言いにくい。


 しかし、彼女は魔法の才能自体は秀でていた。精霊魔法も中位と言わず上位レベルのものも習得し始める。しかし、そんな彼女でさえ精霊の召喚だけはいかなる形でも不可能であった。



 ある時からフィロスは精霊魔法以外の系統の魔法を学び始める。古代語魔法…、いわゆる魔術師が使う魔法である。


 古代語魔法とは、一般的に魔法力とか精神力を消費して何らかの現象を起こす魔法である。同じような魔法…例えば火炎を生み出し攻撃する魔法を使うとして、精霊魔法の方が威力が高かったり範囲が広かったりする傾向にある。


 これにはその『火炎を伴う』攻撃魔法を発動する際に、術者の魔法の力に精霊が力を貸している為である。しかし利点だけではなく、場所によっては特定の属性の精霊がいない場合がある。簡単な例で言えば、水中では大抵の場合に火精霊(イグニスタス)はいない…そんな感じである。その他には魔法などの力でその場所から特定の属性の精霊を除外してしまうのである。そうすればその属性の魔法を封じる事が出来る。強力ではあるが制約もあるのが精霊魔法の特徴である。


 一方、古代語魔法はそのような使用上の制約は少ない。しかし、魔法を扱えるだけの理解力や魔法力や精神力と並んで大切な要素がある。器用さである。


 古代語魔法を操る魔術師が放つ魔法は、魔法力や精神力で生み出した物理現象だと考えると分かりやすい。比較的初歩の攻撃魔法『魔力礫(エナジーボルト)』は魔法で生み出した(つぶて)を対象に向けて発射するものである。しかし、その発射された礫は術者がコントロールする必要がある。


 その為、魔法のコントロールが悪い魔術師の『魔力礫』は目標を外してしまう場合もあるし、最悪の場合には味方に当ててしまったり途中で精神集中が途切れてしまえば魔法が雲散霧消してしまう場合もある。その点フィロスは魔法の才能もあり弓を扱う事に()けたエルフ族である、器用さも持ち合わせていた。


 さらにエルフ族であるというのも古代語魔法を扱う魔術師としては大きな利点があった、寿命が長い点である。肉体を駆使する戦士はやはりある程度の年齢で肉体的なピークを迎える。ゆえに老齢の戦士というのは少ない。しかし魔法使いは肉体より精神や頭脳を駆使して戦う。その人生で学んできた事がそのまま生きてくる。大魔道士と言われる人物に高齢の者が多いのもそれが理由である。


 人間よりはるかに長い寿命を持つエルフ族、フィロスには古代語魔法の研究に()てる時間が十分にあった。そしてそれを実際に役立てる実践の場を求めてエルフの里を後にした。だが、そこは自然を愛するエルフ族である。王都や商都ではなく森に沿い山にも近いミーンの町に身を置いた。そこで冒険者となり数々の功績を上げ、『魔法姫(プリンセス)』の二つ名で呼ばれる程の名声も得た。富を蓄え、町から少し離れた森の中にひっそりと建っていた古い塔を見つけ、自らの魔法の研究をする為の拠点とした。


 しかし、そんな彼女にも手に入らなかったものがあった。


……………。


………。


…。


 五十年前のあの日。いつも通りの冒険者ギルド。拠点であるミーンの町に長い依頼から戻ったパーティは数日の休養をとり今後の話をする事になっていた。女性たちだけで組んだ三人組のパーティ、難しい依頼もこなす評判の良いパーティだった。


「………フィロス」


 人族の女戦士ミラがフィロスに声をかけてくる。どこか申し訳無さそうに。


「なに?ミラ。あらたまって」


 フィロスは前衛を務める仲間に声をかける。


「あ、あのさ…。アタイさ…、パーティ…抜けようと思うんだ。い、いきなりで(ワリ)ィんだけどさ」


「えっ?」


「は、腹に…、子供(ガキ)デキちまってさ…。今はまだ目立たねえけどよ…、だんだん腹がデカくなってきちまうだろうし…さすがにそれで戦士は出来なさそうだし…」


「あ、相手は?」


「あ、ああ。商家で荷下ろしをする人夫(にんぷ)だよ。なんか…飲んでたらたまたま相席になってよ…、話してたらアタイたち山奥から出て来たモン同士でさ…。き、気付いたら…こんな感じでよ」


 ガラにもなく顔を真っ赤にして馴れ初めを語るミラ、もはやフィロスは聞いている事しか出来ない。恋愛の経験が皆無なのだ。


「あの…。実は私もパーティを抜けさせていただきたく…」


「ミ、ミスランもっ!!?」


 ミスランは王都の聖教会の助祭(じょさい)であった。司祭になる為に地方を旅しそこで傷付き病める者に癒しを与えると共に、人々に害を()す魔物を倒す為に冒険者の活動をしていた。


「そ、そろそろ…王都に帰還する時節なの?」


 それならいやも応もない、フィロスはそう思った。しかし、ミスランから聞かされた言葉はフィロスにとって衝撃的だった。


「私…、僧籍は聖教会にお返ししようと思っています」


「「ええっ!?」」


 フィロスとミラは同時に声を上げた。なぜだ、意味が分からない。


「私、王都で待っている幼馴染がいるんです。仮に僧籍が…二人結ばれる事の障害になるのなら…。悩んでいました、でも!!」


 ミスランは強い意志を込めた目で二人の仲間を見た。


「ミラさんのお話を聞いて私、決めました!教会を離れてでも…一緒になるって!結婚が自由に出来る…普通の女の子に戻りたいって!」


 …こうしてパーティは解散となった。メンバー三人のうち二人が結婚の為に引退。一人残されたフィロスはそれからしばらくの間の記憶がない。森の外れの古塔にこもり一人で過ごす。


 たまに同じ里の出身であるシルフィや、『エルフの姉弟(きょうだい)たち』の五人が訪ねてくるぐらいであった。


 古塔に運命の相手が訪れた事はまだ…無い。

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[一言] エルフ姉妹も しいたけ(どんこ)よりイチゴジャムをお土産にすればよかったのに>精霊呼び寄せる
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