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第235話 ブラァタなるもの。ゲンタ、閃く。


「あれズラ」


 ニモジェーロさんがそう言って指差した先には北に背を向けるような感じで洞穴(ほらあな)の入り口のようなものが見える。丁度その洞穴の入り口はここと高さはそう変わらない。しかし丁度の入り口の辺りは切り立った崖のようになっていて、その高さは日本人の感覚で言えば二階建ての屋根くらいあるだろうか。


 僕たちは洞穴の入り口から五十メートルくらい離れたところにあった大岩に身を隠しながら見張っている。距離が近過ぎる感もあるが、今は日が高い。日光も洞穴の入り口を照らしている。このような状況の時はブラァタは外には出て来ないらしい、どうもブラァタという奴、恐ろしい存在だが日光が嫌いな一面があるようだ。


「そう言えばブラァタという魔物…、どんな奴なんですか?町や村が壊滅するような恐ろしい存在のようですが…、見た事がなくて…。なにぶん僕は遠くの生まれなもので…」


 僕はニモジェーロさんに尋ねてみた。彼は犬耳に尻尾なども露"あら)わにして獣化(パーシャルビースト)しており、普段より物音や気配の察知に対する感覚を鋭敏にしている。ブラァタのらいかなる動向も逃すまいとしている事がうかがえる。


「隠れろッ!」


 そう言って二モジェーロさんは僕を大岩の陰に押し込む。


「い、いただ。あの悪魔が。だいぶ全身が茶色くなりつつあるがまだ赤い部分も残っていただ。見つかる訳にはいかねえ」


「えっ」


「茶色くなればヤツらも少しは落ち着くが…、赤い時は何かとチョロチョロする。好奇心ってヤツが旺盛でな、一匹でも色々な所に顔を出す。あんなに日当たりの良い洞穴の入り口の所を名残惜しそうにウロウロ…。まだ跳ねっ返りな気質が抜け切ってない…、まだまだ若い個体だズラ。群れの他のヤツらみたいに少しは落ち着いて寝ぐらの中で今はおとなしくしてりゃ良いものを…」


 大岩に身を隠しながら忌々(いまいま)しいとばかりに二モジェーロさんが呟く。


「という事は、ブラァタってヤツは全部あの洞穴の中に?」


「そうズラ。ヤツらは巣を作りながら転々と移動するらしいだ。その間に成長していくズラ。基本的に薄暗い所を好むようでな、日中は日の光を避けられるような場所で群れで一塊りになってジッとしてるだ。中にはああいう外に単身出たがるやんちゃなのもいるみたいズラ」


「ふむ…」


 僕は少し考え、ニモジェーロさんにあの洞穴の事を聞いてみた。何やら狩猟士(ハンター)の人たちの一つの拠点になっているようだし。すると中は完全な洞窟で、急な大雨などで足止めされても良いように中を掘り広げてあるらしい。中の広さは冒険者ギルドと同じくらい、なかなかの広さだ。バスケットボールのコートがスッポリと入るだろうか。


 また、入り口以外にはどこにも外には通じてはいない。というのも中は真っ暗で他に光が一切入ってきてはいないからだそうだ。逆にあの入り口を押さえられれば、ブラァタは外に出て来れないのではないだろうか。


「ニモジェーロさん、あの入り口でどんどん火を焚いてヤツらを中に封じ込められませんか?あわよくば洞窟の中を蒸し焼きにでもできれば…」


 ニモジェーロさんは首を振った。


「それはまずい…。この森の木はな薪とか篝火(かがりび)にするのにとても向いてるズラ。木に(あぶら)()が含まれていてたちまち燃え広がるかもしれねえ。風向きによっちゃ町まで…」


 そうか…。洞穴の入り口から飛び火したら森に燃え広がってしまうかも知れない。足元には草以外にも枯れた細枝なんかもある。想像以上に火が着きやすく、広がりが早いかも知れない。水精霊(アクエリアル)のセラがいるが、あちこちに飛び火したら消火しきれないおそれもある。火の粉は意外に飛ぶものだ、万が一を考えれば火攻めという選択肢は引っ込めざるを得ない。


「おっ、ヤツめ!外に行くのは諦めるようだべ」


 洞穴の入り口を(うかが)っていたニモジェーロさんの声がする。僕も岩陰から少しだけ片目を出して覗いてみた。すると逆さまにした洗面器を一回りくらい大きくしたようなサイズだろうか。体表の大部分が茶色、残った少しの部分に赤みが残る生物がいた。


 あれ?あの形状(かたち)、何だが見覚えがあるような…。それが洞穴の入り口の前にいる。


「コ、コイツ…、動くぞ…?」


 それまでジッとしていた入り口の前にいたブラァタが洞穴の中に姿を消していった。隣にいるニモジェーロさんが安堵の息を漏らす。


「と、とりあえずこれで日が落ちるまでは…」


 ニモジェーロさんが大岩を背に腰を下ろした。反対に僕は背を伸ばして立ち、四人の精霊を呼び出した。


「サクヤ、ホムラ、セラ。ここでニモジェーロさんと見張りを続けて。これ…、渡しておくよ」


 そう言って僕は残っていた干葡萄(レーズン)の入った袋をサクヤに渡した。皆で仲良く食べるんだよと一声添えて。


「カグヤは僕の護衛。ついて来てくれる?」


 くすっ…と笑ってカグヤは僕のシャツの胸ポケットに入った。


「ぼ、坊や…。お前、どこへ…」


 僕は振り向いて応答(こた)えた。


「思いつきました。ブラァタを倒す為の方法を…」



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