第228話 自動販売機、二種類目。
『しんはつばい!!とろけるすーぷ(新発売!!とろけるスープ)』
僕がA4のコピー用紙に書いた誘い文句に町行く人の注目が集まる。とろけるスープって何だと人々が噂していた…。
早朝のギルド内でのパン販売を終わらせ正午頃、今度はギルドの前の道端で僕とマオンさんは新たな商品を売り始めた。コーンポタージュスープである。スーパーでお湯を注いで作る粉末のスープの素が材料である。
ちなみにこれは鍋から器に注いで販売している訳ではない。塩と同じで自動販売機で売っている。ファミレスなどにあるドリンクバー、あの機械をお手本にしたものだ。
「美味いよー、コレは美味い!」
紙コップに入ったコーンポタージュスープをズズズ…と一口味わったマオンさんの第一声だ。辻売をする時の…、いつものようにマオンさんと掛け合いをする。紙コップに入ったコーンポタージュスープわやしげしげと眺めながらマオンさんはよく通る声で言った。
「こんなトロリとして味も良くて…、美味しいねえ…。でも、いくらするんだい、お高いんだろう?」
「いいえ、お婆さん。それが白銅貨三枚ポッキリ!!」
「ええっ!こんな美味しそうなスープがかい?」.
「それよりお婆さんこそ、その手に持ったパン!随分と柔らかそうですねえ」
僕はマオンさんが手に持っ午前中に焼いたパンを見ながらそう言った。
「ああ、これかい?柔らかいだけじゃないよ、ほらっ!」
そう言ってマオンさんは持っているパンをちぎって断面を聴衆に見せた。おおっ、と声を上げる人がチラホラ…。
「うわあ、すごい!柔らかくて白いパンだよお!」
「儂もコレを白銅貨三枚で売るつもりだよ」
「ええっ、白銅貨三枚ッ?それは安い!」
「是非食べて欲しいねえ。黒麦も他の混ぜ物も入れちゃあいない本当の白いパンだよ」
マオンさんはコッペパンのような形のパンを見せる。やや小ぶりだが、小麦百パーセントのパンなんて町の人は滅多に口に出来ない。それを白銅貨三枚(日本円で三百円相当)で食べられる…、町の人には信じられないような話だろう。
「あっ、良い事思いつきました。そのパンをスープにちょっとつけて食べてみて下さい」
マオンさんがは言われた通りにして口に運ぶ。
「こりゃあ美味い!パンにスープのうまみが染み込んで…」
「ふふふ、美味しいでしょう?食べてみたくないですかァ!どうですかァ、お客さん!?」
僕はリング上でマイクパフォーマンスをするプロレスラーのごとく人々に呼びかける。
「さあ、パンはこちらに並んで下さい!スープはこちら!塩を売る機巧と同じように白銅貨を三枚入れたらレバーを引いて下さい。紙の器が下りてきてスープが注がれますからね、終わったらカチッと音がします。そしたら手に取って下さいね」
そう言って僕はマオンさんとパンを手売りする。周りにはセフィラさんたちエルフの五人の姉弟パーティが、そしてスープの自動販売機に不具合が起きた時に備えてガントンさんらドワーフの皆さんが待機してくれている。こちらも職人としてだけではなく、いざという時には護衛もしてくれるという。ありがたい事だ。
白いパン、そして初めて口にすると町の人たちが口々に言うスープは大盛況。夕食時でもないのに行列が出来て誰もがパンとスープを買っていく。
「な、なあ。明日もここで店を出すのかい?」
「いえ、さすがに毎日は…。材料が用意出来ませんので…」
「そ、そうか。とりあえず今日は食えるんだもんな、並んででも食っておかないと…」
そう言って人が並んでいく。
「そ、それにしてもこんなに人が並ぶなんて…」
僕が思わず呟いていると、
「何言ってんだい、兄ちゃん!こりゃあ、この町のどんな辻売や屋台のパンやスープよりも良いものだ!しかも、そいつらより白銅貨が少し余計にかかる程度だ。買わねえ訳がねえ!」
見るからに肉体労働系のおじさんが威勢よく言葉を返してくる。
「パンだってそうさ!どこのパン屋でも買えないよ!」
「違えねえ!」
他の並んでいる人々もそんな事を言っている。
ちょっとテスト販売といったつもりで行った久々の辻売、かなりの盛況だ。噂を聞きつけたのか並んでいる人々の中には見知った顔もある。商売はこうして人が顔を合わせて行われていく。売る人、買う人が色々な事を思いながら。
そして僕はちょうど商売の話をしに行きたいなと思った人を見つけた。売るのではなく買う、その為に相談したかった人。
「ご無沙汰してます、実はちょうど商売の事で相談がありまして…」
僕はパンとスープを買いに来たその人に話しかけていた。




