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第222話 ゲンタは器が大きい?


 冒険者ギルドでの早朝パン販売を終え、マオンさん宅に戻ってきた。今日は特に予定は無く、朝のマオンさん宅とギルドまでの往復のみが外出予定だったので護衛はその短時間のみ。護衛をしてくれた犬獣人族のラメンマさんたちと別れ、僕とマオンさんは教会からやってくる小さなお針子さんたちを出迎えていた。


 今朝はシスターさんではなくミアリスさんが子供たちを引率してやってきた。早速出迎えて女の子たちはお針子さんとして縫い物を、男の子たちにはガントンさんに預け今日も土木作業の下働きをしてもらう。


 男の子たちがしている下働きは、言わばガントンさんら正規の職人さんたちの労働補助だ。頭数と時間をかけて終わらせるような単純な作業だが欠かす事の出来ないもの。


 今の作業を例に上げれば、ガントンさんたちは地下室を作る為に穴を掘っているのだが地下の穴掘りをドワーフ族のガントンさんゴントンさん兄弟が行って、ベヤン君やハカセさんら四人のお弟子さんが二手に別れ掘った土を地下から地上へ。男の子たちにはその地上に引き上げた土砂を庭の端っこに持っていく、そんな作業を引き受けてもらっている。


 少しずつで良い、今は体力をつけるんだ。一見単調で肉体的にキツく、誰にでも出来る仕事。だが、誰かがやらねばならない。最前線で行う仕事や、目立つ事をやりたい…誰もが思う事だ。しかしそれには知識や技術が必要で、責任という背負わなければならないものがついてくる。それが備わってなければ、作業は失敗を繰り返し人前で恥をかき続けるだけだ。


 自分だけなら良い、だがそれが他人を巻き込む事もある。今回の地下室作りなら下手に地面を掘ったら土が崩れ生き埋めになるような…、そんな可能性もあるのだ。だから今は子供たちに直接現場を触らせない、一番離れた場所で下働きをさせる。仮にこの男の子たちが成長し、土木の道に進んで部下や弟子を持つようになれたなら下働きの経験が活きてくる。


 実際にどのくらいの量の作業が出来るのか、それを知らずして他人に仕事は振れない。目算を誤れば時間が余り人を遊ばせておく事になったり、逆に実行不可能な作業量を背負わせる事になる。


「そうはならぬように…」


 ガントンさんの徹底した無言の教えだった。



 今はだいたい午前十時過ぎ。


 ガントンさんや男の子たち土木作業チームは一刻(約二時間)働いたら四半刻(しはんとき)(約30分間)休むというサイクルで働いている。今はちょうど休み時間にあたる。


 汗と泥に(まみ)れた子供たちの為に裏庭にビニールプールを用意した。水浴びがてら遊んで熱に火照った体を冷ましたら良いんじゃないかと思って用意すると、男の子たちは気に入ったようで服を脱ぎ全裸になって遊んでいる。


 その間に水精霊(アクエリアル)セラに服を洗濯してもらい、火精霊(イグニスタス)ホムラを中心にその服を乾かしてもらう。


 洗濯機の中で青類同士が擦れ合う訳ではないので、服がいたむ事も少ないだろう。石木のテーブルでは女の子たちが小休止をしている。こちらは土木チームとは異なり軽作業なので休憩の時間は短い。


 そんな子供たちが近くに複数いると感じられる声や何かと活発に動き回る物音、独特の活気とは反対に僕は頭を働かせていた。


「うーん…。これは失敗だったかなあ…」


 明日以降材料にする予定の布地を地面に敷いたブルーシートに広げ確認していたのだが、手拭(てぬぐ)い以外にも様々な布地を買い込んでいたのだ。


「どうしたぜよ?坊やン」


「あっ、リョマウさん、みなさんもおはようございます」


 海に川にと船を漕ぎ出し商売をしているリョマウさんたちがやってきた。ミーンでの仕入れも終わり川を下って販売に行くらしい。次回ここミーンに訪れる際に最優先でガントンさんが欲しがるものを持って来る約束らしく、その細かな打ち合わせにやってきたのだ。


 反対にガントンさんやゴロナーゴさんはリョマウさんに川の上り下りに強い船を作るらしい。どうやら人間的に気に入り意気投合し、また商売相手(ビジネスパートナー)としても手を組みたいようで数日間という短い付き合いながら固い絆を感じる。


 その訪れたリョマウさん、僕がブルーシートの上で難しい顔をしていたのを見て声をかけたのだろう。


「実はですね、僕は布を加工して品物を作っているんですが少し困った事がありましてね」


 そう言って僕はブルーシートに置いている手拭いを手で示した。


「こ、こ、こりゃあ綺麗で、い、色々な(ガラ)があるがじゃ!」

「見た事もない花の絵が描いてある布じゃあ!こ、こりゃあ嫁に持って帰ってやりたいがじゃ!うぬうぅぅ、ゲンタやン、わしにコレを一枚売ってつかあさい!ど、どうか頼む!」


 まず布地にゾウイさんが驚き、次いでシンタウロさんが銀貨を一枚取り出して懇願する。小さく細かい色とりどりの花の柄があしらわれた一枚の手拭いを手になんとか頼むと必死の形相(ぎょうそう)だ。

 しかし、その対価は銀貨一枚。日本円で一万円だ。元は百円ショップで買ってきたものなのに…。


「い、いや…、さすがに銀貨一枚は…」


 僕はコレじゃあもらい過ぎですよと銀貨を引っ込めてもらおうとする。すると、リョマウさんが続いた。


「そうじゃきに!シンタウロ、これほどの布はわしゃあこれまでに見た事が無いぜよ!そんな代物(シロモノ)をたった銀貨一枚でなんぞ…」


「わ、分かっておる!し、しかしわしには手持ちがこれしか残っておらんぜよ!酒代に使ってしもうたけんのう…」


「家を守っとる嫁を忘れて、女がいる店で飲み歩いておるからじゃ!」


「面目ないきに…」


 シンタウロさんはすっかりしょげてしまっている。


「まァ、仕方ないきに。坊やン、コレはなんぼじゃ?足りない分はわしがシンタウロに貸しておくぜよ」


 リョマウさん、男前ーッ!!…しかし。


「いや、リョマウさんにシンタウロさん。そりゃいただき過ぎですよ。銀片一枚(ペンイチ)(日本円で千円)で良いですよ。是非、奥様へのお土産でお持ち下さい。ただし、この布地は今作っている商品の大事な材料なんで一人一枚までですが…」


「な、なんと…!嬉しいぜよォォ、嫁の喜ぶ顔が目に浮かぶようじゃ!」


 そう言ってシンタウロさんは余程嬉しいのか僕の手を両手でぎゅううっと握りしめた。


「い、(いた)たたたたッ!シ、シンタウロさん、痛いですっ!」


 そう言っているのだが、感極まっているのかシンタウロさんは聞いちゃいない。おかげで僕の手は潰れそうだ。


大器(デカ)い男ぜよ…、坊やンは…。きっと仕入れには金がたくさんかかってあるじゃろうに…。それをシンタウロの嫁を思う気持ちに打たれて大損するのを笑って受け入れおったきに…」


「ええ…、このチョウジウロの計算では下手すりゃ金貨が飛び交う布地と見ましたね。貴族が面子にかけて競り落とそうとした時とか…。そんな物を仕入れるだけでも凄いのにそれを惜しげもなく…。底が知れませんねぇ…」


 なんだか感心したようにリョマウさんとシンタウロさんが呟いているがこちらはそれどころじゃない。


「ちょ、ちょっとリョマウさんって。腕組んで感心してないで助けて下さいよ!手がっ、潰されちゃ…()たたたっ!」





 次回、あの(おとこ)が登場ッ?

 

 問題回になるか?だが、それが良い!


 お楽しみに。ちなみに苦情は受け付けません(笑)。

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