第166話 お出かけしましょ & 『女子たち』妄想トークする
広場での二日連続の屋台営業を大成功で終わらせ、今日からまた新たな日常が始まる。
早朝のパン販売を終え、いつも通りギルド内で朝食を摂る。
受付嬢の三人はギルドとしての仕事をしたからという事で受け取らなかったので、代わりに後日何らかのお礼をするという事で今回は決着した。
だが、ギルド職員ではない成人前(15歳で成人)の二人、ダン君とギュリちゃんには日当を支払う。時間的にはおよそ半日拘束したので単純に一日12時間の労働と考え、時給千円として計算する。
「ええっ!?こんなに?」
二人は驚いていたが労働の対価だよと受け取ってもらう。この二日分として銀貨二枚と銀片四枚、日本円に換算すれは二万四千円に相当するそれをそれぞれお給料として渡した。
二人からすれば十日…とまでは言わないが、依頼だけだとかなりの日数を要して稼ぐ金額だったようでとても喜んでいた。
そして、僕の周りにも変化が…。
何やら冒険者ギルドに問い合わせが殺到しているらしい。
主にはカレーや焼きそば、たい焼きについて、もう売らないの?売るならいつ?というものだった。どうやら町では一大ブームになっているらしい。
それが個人だけでなく、商店などから問い合わせもある。多くはウチの店の前で屋台を開きませんかというものだった。そのかわりに場所の利用料はこのくらいで…みたいなものが多い。
正直、ふっかけてきている値段ばかりなのでやる気は無い。別にそこまでして屋台をやる気はないし。逆にあまりやっているとそれが当たり前になってしまう。
早朝にパンを売り…昼に夜にとカレーを売る生活。もはや睡眠時間を確保するので精一杯、何も出来なくなってしまう。お金を稼げるのは魅力だが僕にもやるべき事はある。
だからまあ…来月まではやらないかな。たぶん…。
それよりも!今日は重大イベントがあるんですよ!
なんと言ってもデートです。絶世の美女シルフィさんとの!
「お待たせしました」
待ち人来たる!振り向くと…ファッ!?
森を思わせる深緑の服、肩までの袖無に丈が短めのスカート…。そこから伸びるは白くしなやかな手足。
や、やばい。こんなん現実世界じゃ見た事無い!よく、日本で『百年に一度の美少女』とか言われたりする人気タレントさんがいるが目の前のシルフィさんが仮に横に並んだらたちまち引き立て役にジョブチェンジだ。それほどまでに美しい、いつものギルドの制服でも十分に美しいがが今日のシルフィさんはそらに美しい。ハッキリ言って神々しいまでの美しさだ。
「お、おはようございます、シルフィさん」
若干しどろもどろになりながらも挨拶を返す。そして空いている左側の丸太椅子を勧めた。
腰に吊るした細剣をテーブルに当たらないように押さえながら座る。ああ…そうだよ、これぞまさしくエルフのイメージ。ありがとう異世界、まさにファンタジーもののヒロインだ。
「なあなあ、姉御。今日はどこに行くつもりなんだい?」
「私も気になりますぅ…。剣まで持ってどこにぃ?」
隣にシルフィさんがいるだけでヘブン状態になっている僕はマニィさんとフェミさんの質問に我に返る。
「西の森に行ってみようかと考えています」
「西の…」
「森に…?」
意外だったのかマニィさんとフェミさんが聞き返していた。
西の森…、僕は行った事がない。どんな所なんだろうか?
僕が疑問に感じたのを見てとったのだろう。マニィさんとフェミさんが教えてくれた。
西の森というのはあまり獣が多くなく比較的安全な場所らしい。ダン君やギュリちゃんといったまだあまり経験が多くない冒険者が行くらしい。そう言えば薬草の納品をするミアリスさんもこの森をよく採取の場にしているとか…。それでも動物がまったくいない訳ではないのでシルフィさんは自衛の為に剣を持ってきたのだと言う。
「エルフの私なら森を案内するのに向いていると思いまして…」
確かにその通りだと思う。
「それに私はあまり人の多い所は苦手で…」
さもありなん。確かシルフィさんは美人な上に腕も立つからモテるとマニィさんが言っていたのを思い出す。下手に町中歩いたらナンパとかされそうだし…。
そうと分かれば善は急げ。いったん荷車をマオンさん宅に置いてこよう。そんな訳で僕とマオンさん、そしてシルフィさんは町の西側のマオンさんの家に向かう事にした。
「行ってらっしゃーい!」
いつものように裏口からマニィさんとフェミさんに見送られる。西の森かあ…、こりゃあハイキングとかピクニックみたいな感じになるかな。
僕は地方の…、それも山あいの出身だから割と自然に親しんでいる方だと思うけど、この異世界では森に行くのは初めてだ。なんだか楽しみでもある。
そんな期待を胸に僕たちは帰途についた。
□
一方、その頃…。
「なあ、フェミ?」
「なあに、マニィちゃん?」
「今日はダンもギュリも西の森には行ってねえよな?」
「そうだねえ、今日は買い物と休養にあてるって言ってたよぉ」
「ならよ…、姉御やる気かも知れねえ…」
「え〜、やるって何を〜?」
「何ってお前…、そりゃあよ…(ヒソヒソ)」
マニィがフェミに声を潜めて耳打ちする。
「え、え〜、そんな大胆…」
頬を赤らめるフェミ。
「だってよ…、普段から人気の無い森だぜ?それに物陰もいっぱいあるし…」
「で、でも…、男の人がそうくるのは想像出来るけど、シルフィさんは女だよぉ…」
「良いか、よく考えろ…。ダンナと姉御ならどっちが強い?」
「それは…シルフィさん…」
「しかも…だ。姉御は時々、普段からは考えつかないほどダンナにはグイグイいくだろ。手を握りにいったりとかさ…」
「う、うん」
「そんな姉御がダンナと二人っきり…。もし、姉御がそこら辺の茂みにでもダンナを押し倒したりしたら…」
「きゃあ♪。『この森には他に誰も来てない、叫んでも無駄だぁ』みたいに…きゃああ♪』
きゃあきゃあ言っているが何やらフェミは嬉しそうに話に興じている。なんだかんだ言ってやはり女子、恋愛話が好きなのは世の常である。
「それで…で、……だろ?んで、いきなり子持ちになったりして」
「え〜、さすがに飛躍しすぎだよぉ」
二人の妄想女子トークはそれからしばらく続いていた。




