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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
書籍化記念SS

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幕間:ミーアとアリス、初めての出会い


 冒険者ギルドに勤めることが決まり、制服に袖を通して、初出勤した日のこと。


 朝礼で大勢の平民の方々に囲まれた私は、ちょうどギルドマスターに紹介されるところで、とても注目を浴びていた。


「冒険者ギルドで新しく貴族対応をしてもらうことになった、ミーア嬢だ。仲良くしてやってくれ」


 貴族の集まりならともかく、平民の方々と共に過ごした経験はない。


 ここはホープリル家に恥じぬよう、貴族令嬢として正しく振る舞うべきだと思った。


「本日より貴族担当を勤めることになりました、ミーア・ホープリルと申します。よろしくお願いいたします」


 ピーンッと背筋を伸ばして、指先まで意識して、丁寧にお辞儀する。


 自分でいうのもなんだが、子爵令嬢としては上出来……のはずだったのだが。


「また随分と固そうな奴が来たな」

「ホープリルって言うと……、堅物の騎士んところか」

「あの鬼人と呼ばれた騎士の娘さんだな。父親に似て、随分と真面目そうだ」


 思っていた展開と違い、第一印象は関わりにくいと決まった瞬間である。


 本来であれば、この場に引継ぎをしてくださる貴族担当の令嬢がいるので、このような空気は生まれない。


 しかし、本日は体調を崩されたとのことで、欠勤すると連絡が入っていた。


 運が悪い……とは思うものの、引継ぎ作業もないまま、新人の私が貴族担当の仕事を任されることはないため、今日はあまり仕事がない。


 よって、この時間を有意義に使おうと思い、平民の方たちの仕事をお手伝いすることにした。


 うまくいけば、これで平民の方々とも仲良くなれると思うから!


「こちらのテーブルの上、書類の整理をしておきますね」

「……ど、どうも」

「ゴミがいっぱいになっておりますので、処分させていただきます」

「……あ、ありがとう」

「お茶をいれましたので、喉を潤してくださいませ」

「えっ? あ、はい。……えっ?」


 その結果、全然打ち解けられなかった……!


 身分が違うこともあり、互いに変に意識している影響か、うまく馴染めない。


 逆に関わりにくい印象を与えているみたいで、ぎこちない笑顔を向けられてしまう。


 私が何か行動する度、逆に心の距離が離れていくような感じがしていた。


 そんなこんなで時間だけが過ぎていき、冒険者ギルドに昼休みを知らせる鐘が鳴り響く頃。まったく手応えのないまま、休憩時間に入ってしまった。


 午後からどうやって過ごしたらいいだろう……と、打ちひしがれていると、冒険者ギルドの制服に身を包んだ同年代の女の子が近づいてくる。


「こんなこと言うと失礼かもしれないけど、ミーアさんの距離感がわからなくて、貴族という名の不審者になってるよ」


 自分でもそう思うだけに、何も言い返す言葉が見つからない。


「ああー……はい、すみません」

「別に謝ってほしいわけじゃないんだけどさ。えーっと、普通に接してもいいんだったら、後でみんなに紹介する場くらいは作るよ」


 頭をポリポリとかいて照れくさそうにする彼女の口から、とても素晴らしい提案をいただいた。


 彼女の優しさが身に染みた私は、思わず前のめりになる。


「よろしいのですか……!」

「う、うん。なんか見ていられないくらい空回りしてるし」


 平民の方々との距離感がわからなかったので、仕方のないことかもしれない。


 ここは、彼女からいろいろと学びを得て、今後のコミュニケーションに活かしていこう。


「とりあえず、自己紹介からだね。私はアリス。冒険者ギルドは今年で三年目だから、まあまあ一人前扱いにはなってるかな」

「私は、ミーア・ホープリルと申します。冒険者ギルドの書類には目を通して参りましたので、簡単な仕事はこなせると思います。差し支えなければ、ご助力いただけますと――」

「待って待って待って。まず問題はそこなんだよね。なんでそんなに固い表現なの?」

「……これが一般的ではないのでしょうか」

「貴族同士だったら、の場合じゃないかな。平民の身からすると、話を聞いてるだけで肩が凝ってくるよ。言葉が難しくて、会話が成立してないような感じがするんだよね」


 なるほど。皆さんの反応が悪かったのは、普段聞きなれない会話ややりとりをした結果でしたか……。


 平民の方々と打ち解けるための関門として、言葉の壁が存在していたとは、盲点でした。


「言葉が難しいだなんて、とても難解なことをおっしゃいますね。貴族の中では、話しかけやすい風貌だと自負していたのですが」

「そういうところだよ。違和感がすごいもん」

「左様ですか。では、皆さんと打ち解けるために、まずは敬語を崩す練習から始めなければなりませんね」


 今後の方向性が見えてきて、キリッと真剣な表情で課題を確認していると、不意にアリスさんに笑われてしまう。


「ぷっ! タメ口で話す練習なんてするもんじゃなくない? そのうちできるようになるから、心配しなくてもいいよ」


 今すぐできることはないと言われてしまい、とてもムズムズする……。


 早くアリスさんとも打ち解けたいのだけれど……と思っていると、私の肩に彼女の手が軽くポンッと乗せられた。


「ねえ、昼ごはんはどうするの? 前の貴族担当はダイエットで食べてなかったけど、ミーアさんもそういうタイプ?」

「いえ。無理なダイエットは続かないので、食堂か近くのお店でいただこうかと考えております」

「おっ、いいじゃん。いける口だね。じゃあ、ちょっと付き合ってよ」

「は、はい。ぜひよろしくお願いいたします」


 今日は一人で食べることになると思っていただけに、このお誘いは嬉しい……!


 善は急げ、と言わんばかりに、私はアリスさんと二人で冒険者ギルドを後にしていく。


「ねえねえ。貴族のお嬢様ってさ、本当に天蓋付きのベッドで寝てるの?」

「いえ、普通のベッドですね。かなり高貴な方でも、使用されている方は少ないと思います」

「マジか。夢が壊れたわ……。じゃあ、あれは? イケメンの執事さんが毎朝起こしに来て、耳元で囁いてくれるって話」

「私の知る限り、一人もいません。殿方は別として、基本的に令嬢の寝室に入る方は、同性だと思いますよ」

「うわー……。貴族の生活って、意外に夢がないんだねえ……」


 平民の間では、貴族令嬢と使用人とのラブロマンスが流行っているのだろうか。


 現実でそのようなことをしたら、勘当されるかもしれないというのに。


「あっ、私もお聞かせいただきたいのですが、平民の方々は友人の家にお泊りされる際、枕を投げ合う風習があるというのは、本当なのでしょうか?」

「うーん、微妙だね。やってみたらわかるけど、当たるとめっちゃ痛いんだよ」

「ご経験があるのですか!?」

「顔に当たって鼻血が出たから、もう二度とやらないかな。あれ、仲が悪くなるから。それよりさ、さすがにあれは本当でしょ? 高貴な身分の息子が平民の女の子と恋に落ちて、駆け落ちを……」


 この後、アリスさんから貴族あるあるというものをいくつか聞かされたが、思い当たる節は一つもなかった。


 しかし、それが逆に話のネタになったみたいで、アリスさんに平民の方々に紹介された際、意外にすんなり受け入れられることとなる。


「「「ええー! 貴族なのに、裏通りのパン屋さんのパンを食べてるの!?」」」


「あちらの店のパンは、おいしいと思いますよ」


「「「いや、わかる。親近感が湧くわ~」」」


 平民の方々と仲良くなるためには、共通点を見つけるべきなんだと、私は察するのであった。

【あとがき】


本作の書籍1巻を記念として、幕間を書かせていただきました。


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蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ

 

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