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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第二部

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第86話:見習い

 国王様への謁見が終わり、宮廷錬金術師の工房に向かっていると、突然、一人の大きな男性が姿を現した。


「国王陛下の依頼をこなしたからといって、図に乗るなよ」


 相変わらず威圧的な態度で、ひょっこりと出てくるゼグルス様である。


 貴族が嫌いだと言いつつも、なんだかんだで姿を現すあたり、気にしてくれていたんだろう。


 きっと『よく国王様の依頼をこなしたな。褒めてやろう』と言いたいのだ。でも、私が貴族だから素直になれない。


「ちょっと可哀想になってきましたね」

「何を考えているかは知らんが、勝手に同情するな」


 ここまで素直になれないのなら、本当にそのままの言葉の意味で言っている可能性もある。私の頭がお花畑になりすぎて、良い人だと誤解しているのかもしれない……と、言いたいところなのだが。


 すでに私たちはゼグルス様に助けてもらっている。浄化ポーションを大量に生産してくれていたのだ。


 破邪のネックレスが完成した時も浄化ポーションを少し持ってきてくれたが、あれだけで落ち着くほど、瘴気の影響は小さくない。


 野営地まで霧が広がっていたこともあり、魔法陣を壊した後、既存の浄化ポーションだけでは浄化できないことが判明していた。


 急いで作らないと魔法陣を壊した意味がなくなってしまう、と思いつつも、あれは私一人で作ったものではない。しかし、魔力焼けで苦しむクレイン様に頼めるような状況でもなかった。


 今度はリオンくんと二人だけで作るしかないか……と、肩を落としていると、突然リオンくんが大きな箱を持ってきたことで、事態は急変する。


 なんと、大量の浄化ポーションが入っていたのだ。


 ゼグルス様の工房で作ってくれていたみたいで、難を逃れることができている。そのこともあって、私はゼグルス様が本当に素直になれない人なんだと確信していた。


「浄化ポーションの追加作成、ありがとうございました。おかげでゆっくりと休むことができました」

「フンッ、馬鹿なこと言うな。チンチクリンと()()()がサボった分、我々の工房の手柄としようとしただけだ。勘違いしてもらっては困る」


 クレイン様と言い、ゼグルス様と言い、なんて言い訳が下手なんだろうか。この二人、ある意味では似たり寄ったりである。


 でも、何より気になるのは――、


「見習い、ですか?」


 私のこと、ひよっ子って呼んでた気がするんだけど。


「早くも一人前の錬金術師になったつもりか?」

「……いえ、私はまだまだ見習いでした」


 フンッとそっぽを向く姿を見て、深く突っ込まないで置こうと思った。


 どうやらゼグルス様に認めてもらえたみたいだ。彼なりの精一杯のお祝いの仕方が、こういう形なんだろう。


「では、私はポーションの納期がギリギリなので、これで失礼しますね」

「もっと早く終わらせればいいものを。チンチクリンも苦労するものだな」

「クレイン様がいない分、私が書類を書かなければいけないから、納期が遅れているんですけどね」


 今まで宮廷錬金術師の助手として活動してきたが、書類作成の方法なんて教えてもらっていない。そのため、今回の調査依頼の報告書を書くのに、とても苦労している。


 過去の資料を見比べながら、あーでもこうでもないと一人で呟き、残業続きの毎日だった。


 だから私は、今日こそ定時で帰って、甘いものを食べると決めている。仕事帰りにイチゴ大福を買って、家で至福のひと時を過ごす予定なのだ。


 少しでも早く作業に取り掛かるべく、軽く会釈して立ち去ろうとすると、ゼグルス様がポケットから名刺を取り出した。


「今後、もしチンチクリンに見放されるようなことがあれば、情けで面倒くらいは見てやる」


 まさかの勧誘である。


 貴族嫌いのゼグルス様が、わざわざ貴族の私を引き抜こうとするなんて、何か心境の変化でもあったのかな。


「お誘いいただきありがとうございます。でも、クレイン様の元を離れるつもりはありません」

「万が一の事もあるだろう。ちょうどうちにも一人、似たような態度を取っていた弟子が辞めたばかりだ」

「あっ。そ、そうなんですね……」


 ちょっと触れにくい話だが、どうやら円満退職だったらしい。ゼグルス様は嬉しそうに微笑んでいる。


「部下が旅立つ姿を見るのは、決して悪いことではない。どういう生き様を見せてくれるか、楽しみが増えるからな」


 そう言って立ち去るゼグルス様は、とても満足そうな印象だった。


 きっと、本当に行く場所がなくなったら来てもいい、という勧誘だったんだろう。困ったことがあったら、訪ねてみてもいいかもしれない。


 なんだかんだでゼグルス様は丸くなったなーと思いつつ、クレイン様の工房にたどり着くと、私は扉の鍵を取り出した。


 休養中のクレイン様がいないだけでなく、臨時メンバーだったリオンくんももういない。広い工房に一人ぼっちの私は、こうして寂しく出勤するだけなのだが……?


「あれ? 昨日、鍵を締め忘れたっけ?」


 鍵が空いている工房に疑問を抱きつつも、扉を開けてみると、そこには予想外の光景が広がっていた。

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