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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第二部

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第85話:魔装具の功績

 魔法陣を破壊してから、一週間が過ぎる頃。騎士団が瘴気の浄化を終えて、王都周辺の魔物が減少し始めていた。


 冒険者ギルドと協力体制を取っていた治安対策も終わり、今ではスッカリ元通りになっている。誰も不安を感じる人はいないようで、街中はワイワイと賑わっていた。


 これには、ようやく薬草栽培が正常化して、市場に出回った影響も大きいだろう。


 錬金術ギルドにも問い合わせが多く、ポーションの作成依頼を積極的に発注していると聞く。


 ポーション不足が解消される日も、すぐそこまでやってきているのだ。


 私もポーションの納期が迫りつつあり、忙しい日々になりそうではあるのだが……。


 宮廷錬金術師の工房には、肝心の主の姿がない。魔力焼けを起こしたクレイン様の手は重症で、休養を余儀なくされていた。


 どうしても回復には時間がかかるみたいなので、今はゆっくりと休んでほしい。毎日、朝早くに出勤して研究ばかりしていたから、心と体を休める良い機会になるだろう。


 そのためにも、クレイン様が戻ってくるまでの間、私がしっかりと工房を守り続けなければ……などと思って、気合いを入れていたのは、数日前のこと。


 今となっては、一刻も早くクレイン様に戻ってきてほしいと思っている。


 なぜなら、私はいま――――。


「ミーア・ホープリルよ。此度の件、見事であった」


 破魔の矢を作った功績を称えられ、謁見の間で国王様と向かい合っているのだ。


 私室で話し合いをした時のように緩い雰囲気ならまだしも、この場には有力な貴族や大臣などが多数出席していて、とんでもない緊迫感に包まれている。


 何より私の頭を悩ませているのが、上司であるクレイン様が安静にする代わりに、出席してくれた人物のことだった。


「相変わらず詰まらない儀式だねえ。こんなの誰も喜びやしないよ、まったく」


 どうして空気の読めないオババ様が代理なんだ! 絶対に余計なことを言うとわかっているんだから、別の人にしてほしかったよ!


 普段は絶対に式典とかに出席するような人じゃないのに……うぐぐっ。完全に有難迷惑というやつだ。他に頼める人がいないし、文句を口にできる立場じゃないけど。


 周りの貴族たちから冷たい視線を浴びる私は、早くも冷や汗が止まらない。全身を針で刺されているような感覚になり、喉がカラカラになっていた。


 そんな中、国王様が気にする様子もなく話を進めるため、ついに私の出番がやってくる。


 国王様にゆっくりと近づき、立膝をついた後、破魔の矢を差し出した。


「こちらが今回使用した破魔の矢です。本来の力は失われましたが、まだ付与効果が残っているため、国王様に献上いたします」

「うむ。しかと受け取った」


 ようやく出番が終わった……と思いつつも、私は気を緩めない。貴族の振る舞いをしっかりと意識して、国王様に一礼した後、ゆっくりと後ろに下がる。


 最近はポカをすることが多いため、今日だけでも貴族らしく振る舞うと決めていた。そして、無事にミスすることなく役目を果たしたはずなのだが……。


 力を失われた破魔の矢を見て、周囲の貴族たちが騒めき始める。


「力が失われた? 本当に魔装具だったか怪しいものだな」

「フンッ。見習い錬金術師が魔装具を作るなど、作り話に過ぎん」

「万が一、魔装具が事実だった場合、製作者は別にいる。こいつは替え玉だ」


 素直に受け入れられる様子はなく、とんでもない深読みする人まで現れるが、私もそうなることくらいは予想していた。


 本来であれば、見習い錬金術師が作るものではない。正確に言えば、作ってはいけないもの、と言った方が正しいだろう。


 見習いが作れるほど簡単なものだと誤解されたら、他の錬金術師は何をやっているんだと勘違いされてしまう。


 だから、多少の批判くらいは受け入れるつもりだ。


 しかし、この場には冒険者ギルドで働いていた時に付き合いのあった方や、ポーションの取引をしている方もいらっしゃるわけで――。


「素直に称賛できぬ者ほど、嫉妬深い傾向にある。王の御前であるというのに、恥ずかしい奴らだ」


 勝手にバチバチと言い争いが生まれ、派閥争いに巻き込まれたような雰囲気があった。


 さすがに場所が場所なので、クレイン様とゼグルス様の言い争いよりはヒートアップしていないけど、隣に厄介な人がいるから、余計に話がややこしくなってしまう。


「どこの貴族も詰まらない連中ばかりになっちまったねえ」


 オババ様まで言い争いに混ざらないで……と思っていると、国王様の大きな咳払いで、謁見の間が静寂に包まれた。


「魔装具を制作した褒美を取らそう。ミーア・ホープリル、其方は何を望む」


 人というのは不思議なものだ。国王様の言葉を聞いただけで、先ほどまでの心配な気持ちがすべて吹き飛んでしまう。


 なぜなら、合法的に国をバックに付けるチャンスが、ようやくやってきたのだから。念願のボーナスステージ到来である。


 だるんだるんに緩みそうな頬をキュッと引き締めた私は、国王様を見上げた。


「私はまだ見習い錬金術師の身です。このまま錬金術に集中できる環境に身を置けると幸いです」

「そうか。では、引き続きクレイン・オーガスタの下で錬金術に取り組むといい。再び著しい功績を上げることに期待しておるぞ」

「ありがとうございます……!」


 安泰した錬金術生活を確保できて、思わず私は口元にハンカチを当てる。


 これで変な縁談話が来ることはない。そう思うだけで、頬を緩めずにはいられないのであった。

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