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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第二部

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第81話:破魔の矢3

 破魔の矢を作り上げた私たちは、古代錬金術の魔法陣を打ち破るべく、騎士団の野営地を訪れていた。


 思っている以上に状況が悪化しているみたいで、野営地にまで霧が侵食してきている。まだまだ瘴気が薄いとはいえ、あまり良い状況とは言えなかった。


 騎士団も疲労の色を隠せていないし、浄化ポーションも残りわずか。こんな状態で魔物が繁殖したら、大騒ぎになるだろう。


 騎士団の壊滅が免れたとしても、瘴気や魔物を生み出す魔法陣が存在する限り、被害は増えるばかり。このまま霧の範囲が広くなり続けたら、魔物の巣窟と化して、どんどん不利になってしまう。


 国王様がオババ様に頭を下げて、何とか解決しようとしていたのも、今ならよくわかる。


 古代錬金術は大きな被害を生み出す恐ろしいものなんだ、と。


 これは一刻も早く、魔法陣を破壊しなければ――。


 魔法陣の脅威をヒシヒシと感じていると、騎士団の指揮を執るお父様が代表して、破魔の矢と大弓をじっくりと確認し始めた。


 親子の会話が少ない私にとって、こういった経験は珍しく、少し恥ずかしい。でも、今まで褒められる機会は滅多になかったので、この際いっぱい褒めてもらおうと思う。


 大勢の騎士たちが警戒する中で、たっぷりと! 大きな声で!


 娘が作った自信作の魔装具を、遠慮せずに絶賛してほしい!


「魔力がふんだんに込められたこの矢は、間違いなく魔装具と呼べるもの。国王陛下の懸念される瘴気も消し去ることができましょう」


 本当はもっとベタ褒めしてほしいところだが、堅物なお父様らしく控え目な褒め言葉で、なかなか悪くない。


 ふっふーん。まさかそんな代物を娘が中心に作ったとは思わないだろう。種明かしをする時が楽しみだなー。


「使うことができれば、の話ですが」


 急に不穏なことを言い始めたお父様に、思わず私は詰め寄る。


「えっ? 騎士団で弓の訓練くらいはしてますよね」

「無論、弓を扱える者は多くいる。しかし、魔装具を扱うほど魔法適性に長けたものは、在籍していない」

「ま、魔法適性……?」


 チンプンカンプンになった私は首を傾げるが、予想通りだったのか、クレイン様は納得するように頷いていた。


「やはりそうなったか……」


 もはや、種明かしをしてお父様を驚かせるような状況ではない。予想外の展開に取り乱した私は、反射的にクレイン様に問い詰める。


「ど、どういうことですか?」

「本来、鍛冶師が作る武器は物理攻撃が高く、適切に扱うには筋力や関節の柔軟性を必要とする。しかし、錬金術師が作る武器は魔法効果が高く、魔力の扱いに慣れた者でないと扱えないんだ」

「そ、そんな……。でも、リオンくんの力の腕輪は騎士団の方も使ってましたよ」

「武器と防具の違いとも言えるだろう。力の腕輪や破邪のネックレスは誰でも装備できるが、破魔の矢は違う。その強靭な魔力に耐えうる弓を作らないと扱えないほどだからな」


 自分の魔力を流す力の腕輪は、必要な分だけ力を得られることができる。エネルギーを生み出して守ってくれる破邪のネックレスも、術者の負担はない。


 しかし、神聖錬金術で付与した力を最大出力で解き放つ破魔の矢は違う。強すぎる魔力の反動を術者が耐えないと、そもそも放つことすらできないということか。


「つまり、めちゃくちゃ暴れん坊な武器、ということですか?」

「簡単に言えばそうだ。武器を大人しくさせるために、魔力で制御する必要がある」


 諸刃の剣とはこのことか。強力な武器だとは思っていたけど、まさか術者を蝕むほどの力を秘めているなんて、考えてもいなかった。


 でも、こんなことは見習い錬金術師の私が知らないだけで、クレイン様とリオンくんは知っていたと思うんだけど。


 そんなことを考えていると、クレイン様がお父様に手を差し出した。


「今回は俺が矢を射よう。そのつもりでここまで来た」

「……お任せしましょう」


 宮廷錬金術師であるクレイン様が魔力の扱いに慣れているのは、間違いない。浄化ポーションの作成でも、一人だけ涼しい顔で作っていたくらいだ。


 ただ、クレイン様はいつも護衛される立場であり、戦闘とは無縁に思える。


「クレイン様、弓を使ったことがあるんですか?」

「侯爵家で剣や弓の訓練を受けた経験がある。久しぶりだが、魔力をフル活用すれば、補正を利かせて狙いくらいは定められるだろう。他に適正者がいない以上、仕方あるまい」


 お父様から破魔の矢と大弓を受け取ったクレイン様は、ゆっくりと深呼吸して、弓を構える。


 その瞬間、神聖錬金術を展開するよりも強いエネルギーが矢を覆い、緊迫した空気に包まれた。


「軽い気持ちで引くものではないな」


 ボソッと呟いたクレイン様は、破魔の矢の力に負けないように魔力を込め、弓を強く握り締める。


 作った張本人が言うことではないが、人が制御できるものとは到底思えない。


 バチバチと雷が放電するかのように魔力が弾け飛ぶ光景は、あまりにも強大な力に感じた。


 ありとあらゆる魔法効果を打ち消す、破魔の矢。その力は、神の裁きを具現化したと思えるほどの力を解き放っている。


「打つぞ。何が起こるかわからない。念のため、衝撃に備えておけ」


 私とリオンくんが頭を抱えてしゃがみ、騎士たちが身構える中、クレイン様の手元で破魔の矢の魔力が膨れ上がる。


 それが放たれた瞬間、空間に亀裂が入るように甲高い音がした。


 バリンッ!


 破魔の矢が魔法効果を破壊したのは、一目瞭然だった。野営地を覆っていた霧が一瞬で砕け、魔力が煙のように立ちのぼっていく。


 そして、周囲が晴れやかになると、何体もの魔物を目視できるほど繁殖していることが判明した。


「騎士団は広く展開して、周囲の安全を確保しろ。瘴気の被害が広がりきる前に対処するぞ」

「はっ!」


 お父様の指示で騎士たちが駆け出していく中、私は恐る恐る立ち上がる。


「本当に霧全体が魔法の影響を受けていたんですね……」


 決して疑っていたわけではないが、破魔の矢が魔法効果を打ち消すところを目の当たりにすると、そう納得せざるを得なかった。

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