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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第一部

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第8話:初めてのポーション作り

 契約を交わすと、早くも御意見番の仕事が回ってきた私は、クレイン様がポーションを作るところを見学していた。


 婚約者だったジール様がポーションを作る姿は何度も見たことはあるが、クレイン様は次元が違う。惚れ惚れとする指さばきで、流れるように作業が進んでいった。


 私もこんな風に錬金術ができたらいいのになー、と思ってしまうのは、夢を見すぎだろうか。


 宮廷錬金術師の助手に選ばれたのなら、少しくらいは夢を見ても……えへへっ。


「錬金術の作業を見て、そんなに楽しいか?」


 クレイン様に言われ、自分の頬が緩み、にやけていることに気づく。


「すいません、顔に出ていましたね。正直なところ、こんなに間近で見学できて、とても嬉しいです」

「それはよかった。ボイトス家で嫌な思いをしている分、錬金術が嫌いになっていないかと心配していた」

「あり得ませんね。むしろ、錬金術の作業に携わっていたから、ずっと我慢できていたんだと思います」


 魔力で物質を変質させる錬金術は、何度見ても不思議な光景で、飽きることはない。


 薬草から成分を抽出した魔力水が、錬金術で色が変わり、ポーションに変化する工程が一番好きだった。


「普通は魔法に憧れるだろう。派手な魔法使いと違って、錬金術は地味な仕事だ」

「魔法はあまり得意ではなくて、うまく扱えないんですよね。でも、錬金術は素人でも手伝える部分があるじゃないですか。だから、余計に憧れてしまいます」


 錬金術が使えなくても、その仕事に関わることはできる。


 薬草の在庫管理だったり、薬草の下処理をしたり、ギルドに持ち運んで納品したり。それゆえに、間接的に錬金術をしている気分になり、興味を抱いてしまうのだ。


 自分でも作ってみたい。そういう気持ちを何度抱いたことか……。


「あっ、今の作業――」

「なんだ? 気になるところでもあったか?」

「いえ、とてもスムーズでビックリしてしまいました。ジール様はいつも手こずっていたので」


 魔力水と薬草を合わせる時に、魔力を使って馴染ませる工程がある。貧乏ゆすりしながらイライラして行なうジール様と違い、クレイン様は涼しい顔で作業していた。


「これくらいの【調合】は錬金術の基本スキルだぞ。Cランク錬金術師で手間取るなんて、聞いたこともないが」


 そういえば、錬金術の作業を見学するのは、ジール様以外だとこれが初めてのこと。二人の作業を比較しているだけで、錬金術の作業について、私は詳しいことを知らなかった。


()()()()……そうなるのか」


 しかし、クレイン様には思い当たる節があるみたいで、納得しているみたいだ。難しい顔で黙々とポーション作りに励み、一つのポーションを作り上げる。


「これで納品するポーションの作成は終わりだ。他は急ぎの仕事ではないし、ちょうどキリもいい。ミーア、一度ポーションを作ってみないか?」

「えっ!! いいんですかっ!?」


 クレイン様の言葉を聞いた瞬間、抑えきれない感情が溢れ出し、思わず前のめりになってしまう。


 まだまだ新生活の初日であり、私はこれでも貴族だ。図々しい行為は控えなければならないのだが……、胸の高ぶりと好奇心を抑えきれそうにない。


 きっと私は今、錬金術を教えてください、と言いたげな表情でクレイン様を見つめていることだろう。


「錬金術師の助手をするのなら、どんな作業か体験しておいて損はない」

「わ、わかりました。でも、すごい下手だと思いますから、笑わないでくださいね。私、魔法の扱いは下から数えた方が早いので」

「魔法と錬金術では、魔力の扱い方が違う。それに、ハッキリとさせておきたいこともある」

「……ハッキリとさせておきたいこと、ですか?」

「いや、気にしないでくれ。ポーションを作ってもらえれば、すぐにわかることだ」


 相変わらず難しい顔をしているクレイン様が気になる。でも、宮廷錬金術師に錬金術を教えてもらう機会なんて、滅多にあるものではない。


 大人しく言うことを聞いて、勉強させていただくとしよう。


「そこの引き出しにある薬草を取り出して、ポーションを作る準備をしてくれ」

「わかりました!」

()()()()()のところまでやってくれて構わない」

「はい!」


 クレイン様に指示を受けて、()()()()()にポーションの下準備を進めていく。


 薬草を洗い、魔力で下処理して、魔力水を温める。すり鉢に洗った薬草を入れてゴリゴリと潰し、ポーション瓶を用意した。


 冒険者ギルドの受付をしていたとはいえ、休日は朝から晩までジール様の助手をやっていたため、これくらいは朝飯前である。


「準備できました!」

「……あ、ああ」

「あれ? なんか、引いてません?」

「気のせいだ。ポーション瓶の中にすりつぶした薬草と魔力水を入れてくれ」


 頬がピクピクとしているクレイン様に疑問を抱くが、いよいよ錬金術を教えてもらえるので、些細なことを気にするのはやめた。


 クレイン様の指示通り、ポーション瓶を持ち、その中に薬草と魔力水を入れる。


()()()簡単だ。魔力を流し込み、それぞれの魔力を融合させろ。スキルで魔力が干渉する領域を展開できれば、自然とポーションが作れるだろう」

「えっ。一番大事なところが適当すぎませんか?」

「それ以外に言いようがない。調合領域の展開は補佐してやるから、まずはやってみるべきだ」


 急に言われても……と戸惑っていると、ポーション瓶を持つ私の手に、クレイン様の手が重なった。


 こういう経験がなくて恥ずかしいと思うのは、私だけだろうか。広い工房内に二人きりというシチュエーションが、余計にそういう気持ちにさせるのかもしれない。


 そんなことを考えているのも束の間、早くもポーション瓶に変化を感じるようになった。僅かにクレイン様の魔力が流れ始めているのだ。


 まるでポーションの作り方を誘導してくれているみたいだったので、クレイン様の魔力を見失わないように私も魔力を流し始める。


 周りから順番に流していって……。うーん、ここはこういう感じかな。いや、もっと魔力を流した方が良さそう。


 あっ、魔力水と薬草の魔力が馴染み始めた。だんだんと色も変わり始めてる!


 えっ、ちょっと待って! 急にくるじゃん!!


 錬金術の反応が―――――!!!!!!!!!!


「……うぉぉぉ…………おおお…………おおおおおおおお!」


 とても貴族令嬢とは思えない魂の叫びが、宮廷錬金術師の工房でこだまする!


「で、できた――――――――!!」


 初めての錬金術でポーションを作成した私は、年甲斐もなく大きな声を出して騒ぐのだった。

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