第61話:魔道具と魔装具
浄化ポーションが完成した翌日。魔物の繁殖騒動の原因を調査するため、私たちは馬車で移動していた。
道中の護衛は国王様が手配してくれたはずなのだが、その数は少なく、たったの五人だけ。
すでに現地で騎士団が調査しているとはいえ、宮廷錬金術師がいることを考慮すると、もう少し人手を割いてくれてもいいのに……そう思っていたのだが。
どうやら国王様を守る優秀な近衛騎士を同行させてくれたみたいで、普通の騎士とは顔つきが違う。
魔物や不審者を見逃さないように目を光らせ、緊迫した雰囲気を放っている。それが馬車の中にも伝わり、クレイン様は無言で報告書を読み込んでいた。
まあ……力の腕輪に目を輝かせる私と、その制作者のリオンくんは呑気なものだが。
「やっぱりいいですね~。装着するだけで怪力になれる装備なんて、夢のようなアイテムですよ」
「そこまで褒められると、恐縮します……」
照れたリオンくんがモジモジする中、私は力の腕輪に魅了されたかのように、うっとりと見つめる。
……力が欲しい。酷い縁談話ばかりが送られてくる日常を変えるための、力が!
この力の腕輪を装着すれば、それが叶う。何も迷うことはない……と言えたら、どれほど楽だっただろうか。
現実には、どう見ても女の子用に作られていないので、これを身に付けて生活するのは難しい。
女性冒険者が装備するならまだしも、貴族令嬢が身に付けるものとしては、越えてはならない壁を越えている気がした。
「騎士が装着していたものと同じ形状ですけど、力の腕輪はこの形で決まっているんですか?」
「魔力の流れやすさを考慮すると、こういった形になりますね。同じ形状にした方がムラがない、というのもあります。違う形にも挑戦したんですが、どうにもうまくいかなくて」
調査依頼が終わったら、可愛いデザインで作成できるか交渉してみよう、と思っていたのに、うまくいかないなあ。
リオンくんのことだから、頼み込んだらやってくれそうだけど、そこまで迷惑をかけるわけにもいかないし。
はぁ~……。力の腕輪で怪力令嬢となり、縁談の話を断る作戦は失敗か。
「市販されているランプの魔道具などは、いろいろな形で作られているので、てっきり騎士団用に統一したんだと思っていました」
「魔道具と魔装具は別物ですから、比較しない方がいいですね。作成する技術が確立している魔道具と違って、魔装具は手探り状態で作っているんですよ」
確かに、多くの錬金術師が作る魔道具と、ほんの一握りの人しか作れない魔装具を比べるものではないが……。
「単純な疑問なんですけど、魔道具と魔装具は何が違うんですか?」
同じ付与スキルを使っているのに、まったく別のものが作られるのは、違和感があった。
「素材の魔力や付与のやり方によって、力の引き出し方が変わるんです」
「そういえば、オババ様も言っていましたね。火属性が付与されたコンロの魔道具も、出力を高めるだけで爆弾に変わるって」
「制御の仕方を変えるだけで別ものになるので、純粋に魔道具と魔装具は比較できません。一般的には、付与した魔力の力を最大限まで引き出したものを、魔装具と言っています」
ん? 魔力の力を最大限まで引き出したもの? どこかで似たようなことを聞いたような……気のせいかな。
そんなことを考えている間に、リオンくんの錬金術魂に火が付いたのか、生き生きと話し始めている。
「いろいろ細かいルールはわかっていて、二つ以上の素材から魔力を付与しなければ、魔装具にはならないんです。装備の材質や作り込みはもちろん、魔力の流れや性質を考えた上で制御するとなると――」
目を輝かせて語るリオンくんの姿を見ると、やっぱり男の子なんだなーと実感する。
相槌を打つタイミングがわからないほど早口で、正直何を言っているのかわからない。唯一わかるのは、リオンくんが魔装具に強い憧れを抱いていることだけだ。
そして、クレイン様がクスクスと笑う姿を見て、普段の私もこんな感じなんだなーと、察するのであった。







