表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/88

第27話:絶望への階段(ジール側5)

 錬金術師ギルドを後にしたジールは、追い込まれたようにうつむき、早足で歩いていた。


 街には自分の悪い噂ばかりが流れていて、周りには敵しかいない。やっと良い噂が流れていると思ったら、自分が突き放したミーアを称賛するものばかり。


 それがどうしようもなく惨めに感じて、苛立ちが加速してしまう。しかし、今の自分ではどうすることもできなかった。


 現状を打破するには、買い込んだ薬草でポーションを作り出すしかない。見返す方法は、それだけだ。


 そんな思いで自分の店まで戻ってくると、三人の騎士の姿が視界に入り、ジールは物陰に隠れる。


「ジール・ボイトス殿! 店にはおられぬのか!」


 騎士団との大型契約も納期が遅れているため、わざわざ三人の騎士が取り立てに来ているのだ。


「いったいどうなっておる。ポーションの契約を結んだばかりだというのに、期日が過ぎても納品に来ないとは」

「何か問題が起きたとしても、普通は事情を説明した上で半分くらいは納品するぞ。どうにもヤバそうな奴だな」

「婚約者に捨てられたって噂もありますからね。本当は仕事ができない無能な男だったんじゃないっすか? この店、潰れた雰囲気があるっすよ」


 ガラス越しに店を覗く騎士に見えているのは、商品がまったく並んでいない空き家のような光景。


 それが今のジールの状況を、一番正確に表していた。


「夜逃げするほど馬鹿ではないと思うが……。一度、錬金術ギルドに問い合わせてみるか」


 騎士が去っていった後、ジールはコッソリと裏口から店の中に入る。


 本来なら、そこに納品時期が近いポーションを置いているのだが、今はガランッとしていて何もない。


 雇っていた従業員にも早々に見切りを付けられ、店内はシーンッと静まり返っていた。


 そんな悲惨な状況に耐えられず、思わずジールは壁に拳を叩きつける。


「クソッ! 下っ端の三流騎士どもが、好き放題言いやがって! 天才の俺様が無能なわけないだろ!」


 プライドの高いジールにとって、ただの一兵卒に見下されるのは、我慢できるものではなかった。


「これ以上、ポーションの契約を打ち切られるわけにはいかない。何とかスランプを抜け出せば、まだやり直せる。大丈夫だ、俺は天才なんだから」


 いったん心を落ち着け、荒れ果てた工房を掃除していると、不意に裏口から物音が聞こえてくる。


 恐る恐る誰が来たか確認すると、そこには大量の薬草を抱えたカタリナの姿があった。


 薬草さえあれば、何度でもポーション作りに挑戦ができる。今まで稼いだ金があれば、薬草なんて山のように買える……はずだった。


「ジール様……。これで、最後らしいです」

「は? 何を言ってるんだ?」

「販売できる薬草は、これで最後らしいですぅ……」


 半泣きのカタリナの姿を見て、嘘を言っているわけではないと、ジールは察する。


「どうしたんだ? 今は雨期でもないし、王都にはいくつもの薬草園がある。こんな時期に薬草が不足するはずないだろ」

「でも~、いろんな店に目を付けられちゃってるみたいで、これ以上は買えそうにないっていうか、店頭にも薬草が並んでないっていうか……」


 何が起きているのかわからない。少し前にカタリナと買い出しに行ったときは、初めての店でも問題なく買えていた。


 それなのに、どうして急にこんなことに……。


「顔を見ただけで追い出してくるところもあったんですよ~。お前らのせいだ、って言われて~。どうして私が怒られないといけないんですか~」


 お前らのせい……? その言葉と共に泣きつくカタリナの姿を見て、ジールは恐る恐る振り返る。


 そこには、掃除したばかりの薬草の残骸が大量に溢れていた。


 ――まさか俺が薬草を買い占めた影響で王都が薬草不足に? いや、そ、そんなはずはない。たった一人の錬金術師が大量に消費したくらいで、深刻な事態に陥ることなどあるはずが……。


 しかし、現実を突き付けるようにカタリナが泣きじゃくっている。


「ぐすっ、騎士団にポーションを納品しなくちゃいけないって言って、ぐすっ、無理やり買ってくることしかできなくて~……」


 心を落ち着かせたい気持ちと、現実逃避したい気持ちが重なり、ジールは冷静でいられなくなってしまう。


 カタリナが騎士団との契約まで持ち出して、貴重な薬草まで買い込んできたとなれば、もう後戻りはできなかった。


 これでポーションが作れなかったら、王都に居場所はない。それどころか、罪に問われる可能性が出てくる。


 その重圧と焦りから、思わずジールは手が震えていた。


「ジール様、本当に大丈夫なんですよね? ポーション、作れるんですよね?」

「あ、当たり前だろ。俺は天才錬金術師……なんだからな」

「そう、ですよね。ジール様は、天才ですもんね……」


 今となっては、天才という言葉が虚しい。口では肯定していても、もう心は付いてこなかった。

「続きが気になる」「面白い」「早く読みたい」など思われましたら、下記にあるブックマーク登録・レビュー・評価(広告の下にある☆☆☆☆☆→★★★★★)をいただけると、嬉しいです!


執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2025年5月24日より、新作『モフモフ好きのオッサン、異世界の山で魔物と暮らし始める』を投稿しております! ぜひチェックしてみてください!

https://book1.adouzi.eu.org/n1327kn/

 

本作のコミカライズ版3巻まで発売しておりますので、是非チェックしてみてください!

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ、コミカライズ1巻

 

書籍は1~2巻まで発売中です!

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ2巻

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ