表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/88

第20話:形成スキルの練習を開始!

「今日から鉱物を加工する【形成】スキルの練習に入る。準備はできたな?」


 予定よりも早くポーションを作り終えた私は、クレイン様に新しい錬金術のスキルを教えてもらおうとしていた。


 でも、とてもダサイ格好に納得がいかない。


「この大きな保護メガネとマスク、およびエプロンは本当に必要なんですか?」


 錬金術師の服装は、清潔であれば何でもいい、というのが一般的だ。汚れたら自己責任ということもあり、今まで何も言われたことはない。


 それなのに形成スキルを練習するとなった途端、汚れないような完全武装をさせられていた。


「コツをつかむまでの辛抱だ。鉱物を加工する際に液状化して、顔に付着させる者が多い。形成スキルが身についていない状態では、自分で取ることは不可能だぞ」

「それは困りますね。一応、貴族の身なので、顔に鉱物を付けたままウロウロしたくはありません」

「作業途中に頭を触り、鉱物で髪をカピカピにさせる者もいる。気を付けてくれ」

「作業用帽子も欲しくなるようなことを言わないでください」

「用心するに越したことはない。形成スキルを身に付けた者が待機していても、目に入って失明する事故が年に何度か起きている。ポーションがあるとはいえ、完治するかは別の話だ」

「……保護メガネ、大事にします」

「それでいい」


 ちょっぴり怖くなったので、保護メガネとマスクがズレていないか確認する。


 サイズが少し大きく、似合っていないような気がするが、我慢しよう。工房内にはクレイン様しかいないし、他の人に見られることはない。


 私の気持ちが落ち着く頃、クレイン様が机の上に一つの巻物を敷いてくれた。


「これが形成の魔法陣だ。口頭で説明するよりも、実際にやってみた方が早い」

「そんなアイテムがあるんですね」

「先人の知恵だな。魔法陣の中心に魔鉱石を置いて、軽く魔力を流すだけでいい。あとは勝手に魔法陣が魔力を制御して、形成領域を展開してくれる」


 クレイン様に言われた通り、魔鉱石を魔法陣の中心にセットして、魔力を流してみる。すると、魔法陣が起動して、体が宙に浮くような不思議な感覚に包まれた。


「うわっ、すごい違和感がありますね。小さい頃に馬車酔いした感覚と似ています」

「魔法陣で発動させる形成領域は、あくまで感覚をつかむためのものだ。魔法陣の魔力と自分の魔力を同調させ、無理やり形成領域を展開させる分、不快な症状が現れることはある」

「早く形成スキルを身に付けないと、これがずっと続くということですね。恐ろしい修行法ですよ」

「そう思うのなら、早く練習を始めてくれ。もう少し魔力を流せば、魔鉱石を加工できるだろう。思っている以上に簡単に変形させられるはずだ」


 硬い魔鉱石をつかみ、グッと力を入れてみるが、何も変わらない。しかし、徐々に魔力を流していくと、突然、グニャッと柔らかい粘土のように形が崩れた。


「うわっ、新感覚ですね。硬い魔鉱石がグニャグニャしま……痛ッ」

「油断するなよ。あくまで魔鉱石は鉱物だ。魔力が流れていない部分は、普通に硬い」

「早く言ってください。もっと万能なものかと思っていましたよ」

「魔法陣は感覚をつかむだけのものだと言っておいただろ。簡単な形にしか変えられないし、高ランクの素材には使用できない。作りたいものがあるのなら、早くスキルを身に付けることだな」


 そう言ったクレイン様は、魔鉱石を片手に持つと、形成領域を展開。魔鉱石を自由自在に操り、アッサリと別の形に変えてしまう。


 鋭いクチバシに、バタバタと動きそうな手、そして、この愛らしいフォルムは……!


「ペンギンですね」

「専門分野ではないが、これくらいなら簡単にできる。まずはアクセサリーと言わず、置物を作るべきだな」


 コトンッと机の上にペンギンが置かれると、今にも動きそうなほどリアルで、精妙に作られていた。


 これで専門分野外と言うのだから、やっぱり宮廷錬金術師は侮れない。


 魔法陣の上でぎこちない動きしかしない私の形成スキルとは、全然違う。


「一つだけ気になるんですが、ペンギンはお好きなんですか?」

「この辺りでは生息しない生物だ。一度は生で見てみたいと思っている」

「なんとなく気持ちはわかります。可愛いですもんね」

「俺は癒し目的ではないぞ。ただの好奇心だ」


 少し恥ずかしそうにするクレイン様を見て、人類は皆、可愛いものに弱いと悟った。


 ひとまず、私もペンギンを作ることを第一目標にしようかな。クレイン様の作ったペンギンの隣に、私が作ったペンギンを置いてみたい。


「このペンギンはいただいてもいいですか?」

「構わないが、ただの置物にしかできないぞ」

「目標にするものが近くにあった方が、頑張れそうな気がしまして」

「……工房の外には持ち歩かないでくれ。それが条件だ」

「わかりました」


 やっぱり恥ずかしそうにするクレイン様を見て、私は思った。


 きっと可愛い置物を見せた方が女性はやる気が出ると考え、作製してくださったのだろう、と。


 厳しい一面はあるけど、とても優しい方なのは間違いない。


 だから、私も期待にこたえられるように、しっかりと形成スキルを身に付けよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2025年5月24日より、新作『モフモフ好きのオッサン、異世界の山で魔物と暮らし始める』を投稿しております! ぜひチェックしてみてください!

https://book1.adouzi.eu.org/n1327kn/

 

本作のコミカライズ版3巻まで発売しておりますので、是非チェックしてみてください!

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ、コミカライズ1巻

 

書籍は1~2巻まで発売中です!

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ

 

蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ2巻

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ