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【漫画3巻発売中】蔑まれた令嬢は、第二の人生で憧れの錬金術師の道を選ぶ ~夢を叶えた見習い錬金術師の第一歩~【Web版】  作者: あろえ
第一部

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第11話:狂い始める歯車(ジール側2)

 ミーアが父親と婚約破棄について話し合っている頃。


 久しぶりに錬金術ギルドを訪れたジールは、受付カウンターでギルドカードとポーションを提出していた。


「Bランク錬金術師の昇格試験用ポーションを提出しに来た、ジール・ボイトスだ」

「あぁ~……、()()ジール様ですね……」


 本来なら『若くしてBランク錬金術師の昇格試験を受ける()()ジール様』と、認識するだろう。しかし、受付嬢の軽蔑するような眼差しは、それとは違った。


 王都で悪い噂が流れている()()ジール様、なのである。


 幸か不幸か、錬金術ギルドにジールが足を運ぶのは、Cランク錬金術師に昇格して以来のこと。こうしてポーションを納品する際は、いつもミーアに足を運ばせていたため、錬金術ギルドでの印象も最悪だった。


 ――まったく。どいつもこいつも馬鹿にしやがって。悪いのはホープリル家だと噂を流したはずなのに、どうして俺が悪者扱いされなきゃならないんだ。


 ミーアとの騒動があったその日、すぐさまジールは金を使い、悪い噂を流した。しかし、実際に自分の耳に入ってくる情報は全然違う。


 人の心を持たない最低の男だの、ボイトス家は落ちぶれただの、出来損ないの錬金術師だの。


 挙句の果てには、捨てられたのはジールの方、と言われ始めているのだから、我慢できるはずもない。


「あ? 文句あるのか?」


 思わず、ジールは受付嬢を睨みつけた。


「い、いえ、そういうわけでは……」

「それならグダグダ言わずに早く手続きしろよ、ノロマが! どっかの足手まといだった女と一緒で、役立たずの人間がいると仕事にならないんだよな!」


 ジールは平然とした態度を取っているつもりだが、焦る気持ちを隠しきれていない。言葉がとげとげしく、苛立ち表すように机をトントントンッと指で軽く叩き始めた。


 豹変したジールに怯える受付嬢が急いで手続きを始めると、ギルドの奥から一人の老人が近づいてくる。


 その人物を見て、ハッと我に返ったジールは、背筋をビシッと伸ばした。


「婚約破棄したと噂になっているが、大丈夫なのかね」


 錬金術ギルドのギルドマスターである。


 わざわざギルドマスターが受付カウンターに足を運び、話しかけてくる機会など滅多にない。ジールが直接言葉を交わしたのも、これが初めてのこと。


 やはり自分は一目を置かれている錬金術師で間違いない、そう思うには十分だった。


「出鱈目な噂ばかりで困っていますが、仕事とプライベートは分けていますので、問題ありません。俺、いつでも冷静なんで」

「君のことなど心配しておらん。錬金術の腕が落ちないか、と聞いておる」

「……どういう意味ですか?」

「錬金術師の活動を始めた時から、婚約者を助手にしていたのであろう? 彼女の手助けなしで、錬金術ができるのかね」


 ギルドマスターに言われた言葉の意味を、ジールは深く理解できなかった。


 婚約者だったのなら、手伝うのは当然のこと。自分の錬金術とは、何の関係もない。


「ちょっとした雑用を手伝わせていただけです。今まで納品したものは、すべて俺の実力ですよ」

「自信を持つのは良いことだが、決して慢心するでないぞ。錬金術はシビアなものであり、助手が代わるだけでも影響を及ぼす者が多い。魔力を使った作業を任せていたとしたら、致命的な影響が出かねん」


 真剣な表情で訴えかけてくるギルドマスターに、ジールの心は震えていた。


 ミーアに錬金術の雑務を教えてやったのは、自分だ。悪影響など出るはずがない。むしろ、その逆。すべて自分でやれば、最高品質のアイテムすら作れるかもしれない。


 ギルドマスターが注目している今、人生最大のチャンスが訪れているのだ。


「あまり笑わせないでくださいよ。今日が技能試験用のポーションの最終受付じゃなかったら、もっと良いポーションを納品できました」

「早くも言い訳かね」

「いえ、純粋な事実です。今後のポーションの納品で、あっと驚かせて差し上げますよ」

「別の意味で驚かなければいいんだがな」


 ギルドマスターと会話している間に、昇格試験の手続きが終わると、ジールは意気揚々と錬金術ギルドを後にした。


 鋭い目つきでジールの作ってきたポーションを見つめる、ギルドマスターに気づくことはなく……。

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