(ドノバン)89 ドノバンから見たリーフ
(ドノバン)
捨てられた公爵家の息子『リーフ様』
今回、カルパスに可能な限り強くして欲しいと頼まれた、可哀想な子供だ────……と最初は思っていたのだが、どうにもそんな感じは微塵も感じなかった。
レオンのあまりのインパクトに影に隠れてしまったが、リーフもレオンとはまた別系統の『変』を感じさせるヤツなんだよな……。
先程のリーフの様子を思い出すと、ちょっとした引っ掛かりを感じ、また考え込んだ。
最初は子供の痩せ我慢的なものかと思ったが、嘘偽りなく自身の境遇を何とも思ってない。
『もしかして頭があまり良くないのか?』
そう思ったが、先ほどの一戦で自分の弱点はしっかりと理解し、効率の良い動きを見せるリーフに、それはないとよく分かった。
何とも言えぬ正体不明の違和感……だが、恐怖などの負の感情ではないため、レオンとは真逆にどうも上手く警戒する事が出来ない。
そしてリーフの方も周りを全くといっていいほど警戒していない。
常に自然体だ。
元第二騎士団、団長の俺に対しても、そして────そしてレオンに対しても。
「まぁ〜人間、何かを怖がるのは仕方がない事だ。それは、お前だけじゃない。
『恐怖する対象には近づかない』、俺はそれで良いと思うぜ?
ただ、その対象を力づくで排除しようとするのは賛成出来ねぇな〜。
罵倒したり、石を投げたり……とかはな?」
レオンに対しての境遇は先ほどカルパスから聞いていた。
何もしてない子供に対し、罵倒して石まで投げるとは確かに酷い話だ。
軽〜い感じに自身なりの意見を述べると、下に下がっていたカルパスの目線はやや上に上がり口からフッと小さな笑いが漏れる。
「あぁ、その通りだな。
────レオン君はあの力を使い、自身を排除しようとしてきた人々や世界に復讐したいとは思わないのだろうか……?」
「あ〜……。そりゃー普通の人ならそう思う……はずだがなぁ〜……。」
『今まで虐げられてきた人間が力を手にしたら?』
そんなのは決まってる。
────────復讐だ。
今まで奪われてきた物を今度は奪うのだ。自身を虐げてきた者たちから……。
そしてそれだけで収まらなくなってしまった心で、今度は虐げる側の人間になってしまう。
そんな光景は現役騎士の時、嫌になるくらい何度も見てきた。
しかし────……。
「あいつの目には、憎しみや怒りも何一つなかった様に見えたな。
ありゃー復讐者の目とは別モンだ。
俺にはあいつが、復讐のためなんかに動くような奴には見えねぇ。
……っーかそれがマジで怖い。復讐を考える奴の方が全然マシだと思うくらいあいつ怖い。」
思わずぶるっと震えれば、カルパスは「そうだな。」とあっさりと同意する。
そして一瞬の間を挟み、ポツリと言った。
「……では、リーフ様に対するレオン君の様子はどう感じた?」
いつもハキハキ話す奴が珍しく口籠るモンだから、俺はこいつが何を考えているのかわかってしまった。
「はは〜ん?なるほどな。レオンにリーフの護衛をさせてぇって事か。
リーフはあのメルンブルク家のお坊ちゃんだからな。
……って事は、やっぱり予想通りの展開になりそうなのか?」




