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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二章(リーフ邸の皆とレオン、ドノバンとの出会い、モルトとニールの想い)

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(ドノバン)88 ドノバンから見たレオン

(ドノバン)


強さ……で言えば、まだ単純な剣に関してだけだが間違いなく化け物級。

既に超人の域に到達していると思われる。

これからの成長を考えても恐怖しか感じない。


しかし、それ以外?というカルパスの抽象的な質問には、なんと答えるべきか少々悩む。


「どうって……またえらく分かりにくい質問だな。……とりあえずは8歳のガキらしさは微塵もねぇな。

それにあの外見……幸いにも伝染するタイプではなさそうだが、騎士団の連中はおろか一般人も遠ざかるだろうよ。正直俺も震えちまったし。

だが、それ以上に怖いと思ったのは……あの眼だな。

真っ黒でな〜んも入ってねぇの。

ありゃ〜心を持たねぇ戦闘用ゴーレムとか魔道具と同じ……感情無きモノの眼だ。

────まぁ、あいつのあの外見を見りゃ〜どんな境遇で生きてきたのか予想はできるし、そうなっちまうのも無理はねぇだろうが……それにしても普通じゃねえ。それに……。」


俺は一旦言葉を切り、あのレオンと呼ばれる少年についてさらに考えた。


見た目に関して言えば、そこまで厳格なイシュル信者でない俺からすれば黒髪、黒い瞳はそこまで畏怖するものではない。

しかし、呪いは別だ。

まずそれからして全面的な警戒は解けない。


そして次に底が見えぬほどぽっかりと空いた目……感情が読めず、次の行動が予測できない事に騎士としての恐怖を抱く。

とにかく目的までの最短距離をただ淡々と突っ走るその姿は、戦う側としては恐怖以外の何者でも無い。


それだけでももう腹いっぱいと言えるのに、更にはアイツを纏う存在感、あんなにも出鱈目な強さを内に秘めているのに、まるで静まり返った泉の様────あれでは死人に近しい。


『生きている』ものとして、俺の脳が認知しない……?


正直自分でも何を言ってるのか分からなくなるが、何にせよチグハグ過ぎる存在に対する恐怖を常に与えられる。

それをどう伝えれば良いものかと考えていると、カルパスが先に口を開く。


「そうか……。恐らくお前の感じた感覚と、私の感じた感覚に差異はさほど無いだろう。

……レオン君が悪い訳ではない事は理解しているし、心底同情もしている。

しかし────私は彼の存在が怖くて堪らない。

外見は勿論、あの感情が読めぬ目も未知の感覚に関する恐怖も……。

私の今までの歩んできた人生……経験する事で得た数々の価値観が、彼を全否定するのだよ。……私はリーフ様の様にはなれない。」


いつもは凛として前を向いているカルパスの目が、僅かに下に下がっていった。


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