(ナックル)871 男を知ってる
(ナックル)
「バカか?オメェはよ。────いいか?計画は完璧で万が一はないなんてレイナのヤツが言ってたが、今、その万が一が起きてんだろうが。
だから俺たちは俺たちで、その万が一をしでかしたクソガキ用に人質を用意しておくぞ。」
《人質っすか??でも、さっきのあのクソガキの声はハッタリなんじゃないんすか?
だって呪いが効かない人間なんているはず────。》
「俺だって聞いたことねぇよ!!そんな人間!!それが真実かどうかなんざ後にして、とにかくできる事はやるぞ!!失敗は許さねぇからなっ!!」
《はっ、はいぃぃっ!!》
呑気な仲間の発言にカッ!!となって怒鳴り散らせば、慌てた様子で返事が返ってきたので、俺はイライラしながら命じた。
「とにかく適当に数人くらい攫っとけ。別に遊んでもいいがまだ殺すなよ?
そうしたら、避難所の付近で待機して俺に連絡を入れろ!分かったな!?」
《わっ、分かりました!》
仲間はその後、直ぐに簡易式通信器を切り、行動を始めた様だ。
チッ!!と大きな舌打ちをしながら、待つことしか出来ない状況に更にイライラ、イライラとしながら連絡を待つ。
呪いが効かねぇヤツなんざいるわけがない。
そう思っているのに、それがあのクソガキだと思うと不安と恐怖が広がっていく。
だから人質を用意し、クソガキを始末……できないにしても、せめて逃げる時間用に使おうと考えた。
正義は悪に勝てない。
その理由は正義は人を見捨てられないから。
人を踏み台にして上に登る悪には、勝てないのだ。
なんだって使ってやる。
最後に勝つのは俺だ!!
「────っくそっ!!」
俺は高ぶった気持ちを落ち着けようと深く息を吸いながら、首に掛かっているネックレスの中でも一番のお気に入りである赤い宝石を触り、弄んだ。
すると────……。
「へぇ〜。それってば《一つ目大蛇の虹彩》のネックレスじゃないですかぁ〜。
すごぉぉぉ〜い。初めて見た〜。超高級アクセサリー♡いいなぁ〜。」
直ぐ真横からヒョコッと顔を覗かせてきた人物がいたため、即座に俺は反対側に飛び、その声の主を睨みつけた。
< 一つ目大蛇 >
体長20mのヘビ型Bランクモンスター。顔の中央に巨大な目玉が一つついている事から命名された。
非常に獰猛な性格をしていて、視界に入るモノは全て飲み込みあっという間に消化してしまう。
口からは強酸の毒液を吐き、パワースピード共に破壊的で討伐は大人数推奨。
巨大な目の輝きは美しく高値で取引されるが、傷つけずに討伐するのは非常に困難である
視線の先には一人のエルフ族らしき少女が立っていて、へそ出しのノースリーブトップスに黒いオペラ・グローブと短パンという軽装だが、腰にはタガーが装備されている事から恐らくは冒険者といった所だろう。
淡い金色の髪に白い肌。
華奢な身体にパッチリとした目には、サファイヤの様な瞳が輝く。
まるで存在そのものが宝石の様な少女。
そのパッと目を惹く美しさに、へぇ?と関心を持ちジロジロとその少女を上から下まで舐めるように見つめた。
見た感じ、気配が全く感じられなかった事からも、恐らくは盗賊系もしくは暗殺系統の資質持ちか……。
ただ、漂っているオーラからは、暗殺系資質持ちの独特の静かな殺気は感じない。
冒険者になりたての新人冒険者か?
「おいおい、お嬢ちゃんよぉ。不用意に男に近づいたらあぶねぇだろうだろう?
まだまだ男ってモンを知らねぇな〜。」
「ご心配なくぅ〜。男の事は身を持ってよぉぉ〜く知ってるからさ♡」
ニコッと余裕そうに笑う女を見ながら、探るように会話を続ける。
「へぇ〜?若ぇのに、もう男の事知ってるって?────あぁ、もしかしてそういう資質持ちか。
じゃあお嬢ちゃん、可愛い顔してっから相当稼いでるんじゃねぇの?よかったらいい店紹介するからそこで働けよ。もっと金、欲しいだろ?」
「生まれた時から男の体の事は知ってるかな〜?
────あ、僕が可愛いのは当然の事だから褒めなくてもいいよぉ?お金はだ〜い好き!将来の夢は玉の輿です!」
頬に合わせた両手を添え、キャッキャッとはしゃぐエルフ女に、俺は心の中でほくそ笑んだ。
金が好きな奴は扱いやすい。
報酬次第でこちらに寝返る事もしばしばで、その身軽さは使いやすく、こちらとしても都合がいいからだ。
探り合いの会話の中から目の前のエルフ女の性格を即座に理解した俺は、クックッと笑いをこぼした。
「なるほどなぁ。金ならココにたんまりあるぜぇ?しかもこれからもっともっと入ってくる。一生遊んで暮らせるだけの金がな。
そうだなぁ?まずは豪邸でも建てるか。この俺に相応しいゴージャスで煌びやかなでっけぇぇ〜豪邸をな。」
首に掛かっている『一つ目大蛇の虹彩』を持ち上げ見せつける様に持ち上げると、エルフ女はニコニコしながらそれに視線を向ける。




