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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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(ナックル)869 宝石の様な人生

(ナックル)


《もう少し丁寧に扱ってくれるかしら?万が一でもあったら大変よ。》


近づいてきたハエから聞こえる女の声の主は、今回この計画を伝えてきた<レイナ>であった。


「お〜っと、そいつは悪かったな。」


俺はニヤニヤしながら軽く口先だけで謝り、キャッチした〈聖浄結石〉をソファの横に優し〜く置く。

そのわざとらしい仕草に、ハエからは、『はぁ〜……。』と盛大なため息の音が聞こえたが、レイナも計画が始まった事に浮かれているのか、特にそれ以上のお咎めはない様だ。


《随分ご機嫌じゃない。》


「そりゃ〜ご機嫌にもなるだろぉ?こ〜んな簡単な事で俺の夢は叶っちまうんだから。今にも踊り出したい気分だぜぇ〜。」


鼻歌に合わせてリズムよく身体を揺らせば、ハエからはレイナのフッという笑う様な声が小さく聞こえた。


《あ、そう。────で、頼んどいたモノは仕掛けてくれた?》


「あぁ、とりあえず街中には問題なく仕掛けたぜ。後は教会の周囲か。

ゲイルの所の奴らも、街でお宝探しの傍ら仕掛けていたみたいだな。

ヤレヤレ、お仕事中に何をしてんだか……リーダーに似て下品な奴らだよなぁ〜。」


《貴方のクラスの奴らも、その宝探しに夢中じゃない。それに教会に着いたら何人か攫って楽しもうって、相談までしてたけど?一体どんな下品なリーダーの下にいるのかしらね。》


額に手を当て、あちゃ〜……と心底困った様なジェスチャーを見せたが、口元はニヤついてしまい寧ろ楽しんでいる事が丸わかりなのが自分でも分かる。

それに対してレイナは呆れた様にため息をついたが、《全員じゃなきゃ別に構わないわ。》と快く許してくれたため、俺はあっさりと額に当てていた手を外した。


「しっかし、容赦ねぇな〜。お前もお前の上の奴も。

<モンスターボックス>を街の中に仕掛けるなんざ、流石の俺もドン引きだぜぇ?おお〜怖っ。」


自身の手で体を抱きしめブルブル震える仕草を見せると、レイナは鼻で笑う。


《別にどうせ死ぬ奴らなんだから、どうでもいいでしょ?計画が大幅に遅れたせいで、どの戦闘機関も完全に戦力を整えちゃったからね。

何が起きても問題ないように、多少はリスクを犯してでも保険をかけとかないと。

最悪街中から防壁を崩すわ。

『代償』の数は減っちゃうでしょうけど……仕方ないわよね?王には選択する時間を与えない。》


淡々と何でもない事の様にそう語るレイナを茶化す様に「おっかね〜女。」と言ったが、やはりフッと鼻で笑われてしまった。


《私ほど優しくていい女はいないでしょ?また連絡するから上手くやってよね。》


それだけ言い残し、レイナが操るハエは空へと飛びだっていった。


「優しい……ねぇ?まぁ、ゴミをただ捨てずにリサイクルする点から考えると女神の様な女かもな。」


俺は首に掛けている大ぶりのダイヤモンドが着いたネックレスを手に取ると、太陽の光にそれをかざしてその輝きに見惚れた。


人なんて全然綺麗じゃねぇモンを大事にした所で、自分が得るモノなんてない。

だが宝石は常に美しく、不変的にオレの心に癒やしを与えてくれる。

俺に『一方的に得を与えてくれる存在』。

それこそが俺にとって最高の関係性で、常に理想とする関係性である。


金、名誉、地位だってそう。

俺に一方的に利益を与えてくれる。

人間と違い俺に代価を求めてこない優しい心地よい居場所を与えてくれる、最高のパートナーであるというわけだ。


「まぁ、ゴミでも価値があるヤツらはいるけどな?」


手に持つダイヤモンドをパッと離し、クックッと笑いを漏らす。


『一方的に搾取できる人間』。

俺の命令を素直に聞いて、俺を褒め称えて敬い、あくせくと働いて俺に利益を運んできて、何も求めず、勝手にの垂れ死んでくれる人間。

そういう人間には価値があるから、手元に置いてやる。

今までもこれからもその価値観は変わること無く、俺の人生を宝石と同じ様に輝かせてくれるのだ。


空に輝く太陽を見上げながら、その眩しさに目を細めるとそれを覆い隠す様に黒いモヤが空を覆っていった。


「くぅぅ〜!いよいよだぜぇぇ〜?俺の宝石の様な人生の始まりだぁぁ!」


黒いモヤで見えなくなった太陽が、まるであのクソガキの絶望の未来を示唆している気がして、更に気分は上がっていく。


「んん〜♬んんんん〜────……♬」


鼻歌を歌いながら手はまるで指揮者の様に振って、ご機嫌のまま空を見上げていると、やがて正門の空の方ででっかい黒いモヤが現れ、それが巨大な蝶の形になった。


気分は最高潮!!



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