(二ール)867 欠けたら駄目
(ニール)
モルトがグググッ……と何とか立ち上がろうとしているが、すぐにもう一度倒れてしまう。
俺はモルトよりはまだ魔力が僅かに残っているため、何とかヨロヨロと立ち上がり周囲に耳を澄ませた。
次々に上がる悲鳴。
一人二人ではないその悲鳴は次第に小さくなり、とうとう聞こえなくなると……その直後、モンスター達は一斉にバラバラに動き出したのが足音で分かった。
「まずいっす!何匹かこっちにまっすぐ向かってくるっすよ!」
膝に手を乗せクラクラする頭を必死に振りながら前を向くと、こちらに向かってくる数匹の<マグマ・レックス>の姿が遠くに見え、顔から血の気が引いていった。
< マグマ・レックス >
体長10mくらいの恐竜型Bランクモンスター。非常に好戦的で人を見れば即座に襲ってくる。
尻尾は鋭くまるで槍の様な形をしており、中距離〜長距離の攻撃にも対応。
牙や爪による前衛攻撃も非常に強力で、一頭で一個部隊が完全に崩されてしまう事もある。
更に火属性の高い属性値を持っており、強力な魔法もバンバン打ってくるため後衛が一気に全滅する事も。
マグマ・レックスの姿を確認したモルトは、グッ……と唇を噛み締め俺に向かって叫んだ。
「ニール!!俺を囮にして逃げろ!」
「────はっ??」
驚いて、弾かれるようにモルトの方を振り向くと、怖いくらい真剣な顔をしたモルトがいた。
「俺があいつらを引き付けるから、その間に逃げて皆に情報を伝えてくれ!リーフ様を頼むぞ。」
「は??モルト、それ本気で言ってるんすか?」
再度確認すると、モルトはコクリとしっかり頷き、黙る俺に向かい続けて言った。
「ここで二人共死んでしまえば情報が途切れてしまう。ならば全く動けない俺が囮になるべきだ。早く行ってくれ!」
固く決意した力強い目を向けてきたモルトだったが、体は僅かに震えている。
俺はそれを見て、はぁ〜……と大きくため息をつくと、すぐにモルトに駆け寄り、痛む体を必死に叱咤しながら、グワッ!!とモルトを背負った。
驚くモルトの息を飲む声が聞こえたが、無視してヨロヨロとおぼつかない足取りで走り出す。
「おいっ!!ニール!何をしているんだ!!早く俺を降ろして逃げろっ!!」
焦ったモルトが耳元で叫んだが、俺はゼィゼィと息をしながらも絶対に降ろさず、空に向かって大声で叫んだ。
「俺達仲良し幼馴染〜ズっ!!!俺、ニール!!」
俺の言葉を聞いたモルトは一瞬ピクリと動いた後、小さな声で「……俺……モルト〜……。」と呟いたので、俺は大きく何度も頷く。
「そうっすよ!!一人でも欠けたら幼馴染〜ズにならなくなっちゃうじゃないすか!!
俺は臣下第一号として、リーフ様を悲します訳にはいかないんでぇ〜!
黙って背負われてるっすよ!!」
気づけば俺の目からはボロボロと涙が止めどなく流れていて、それに引きずられるようにモルトまで、ヒッ……ヒッ……と泣き始めた。
「しっ……臣下1号の俺が抜けたら……2号のニールだけになってしまうな……何か、それ……カッコ悪いな……。」
嗚咽混じりのお互いの声を聞きながら、ヨロヨロ……モタモタ……とおぼつかない足取りで必死に逃げるが、そんな俺達をあざ笑うかの様に<マグマ・レックス>がものすごいスピードでこちらに向かってくる。
必死に歯を食いしばり前へ前へと進み逃げようとしたが、ついに追いつかれ、背後から大きく口を開けたマグマレックスが俺達を飲み込もうとした、その瞬間────……。
────ヒュンッ!!
前から飛んできた球状の何かが、マグマ・レックスの口の中に飛び込んでいき、驚いたマグマ・レックスが口を閉じて後ろへ一歩下がる。
そして────……。
ドカ────────ンッ!!!!!
凄まじい爆音を立ててマグマ・レックスは爆発し、上半身は全て吹っ飛んでしまった。
「──うっ……うわっ!!?」
「わぁぁぁぁ────!!」
俺と背負われていたモルトはその爆風で前に飛ばされ、悲鳴を上げながらゴロゴロ〜と前方に転がる。
そしてピタッと止まったところで慌てて顔を上げると、俺達の上空を見慣れない乗り物型大型魔道具?が大きく弧を描く様に越えていき、残りの迫り来るマグマ・レックス達と対峙した。
ドッドッドッ……。
全く聞いたことのない独特の音を立てた二輪の不思議な乗り物に乗った人物は、はっ!と鼻で笑いながら、嫌味全開で言い放つ。
「リーフ様の取り巻きといえど所詮は男爵。その程度か。
後はこの天才魔道具使い、伯爵家マリオン・オブ・スタンティンがお相手しよう。」
モンスター多数 VS マリオン 開戦




