(二ール)863 想い
(ニール)
凄まじい数の拳がミラーズ・バットと【ハナズオウ】の出した幻影を打ち砕き、その攻撃は俺達にもクリーン・ヒット。
俺とモルトは大きくふっ飛ばされて地面に倒れ込んだ。
そのダメージは大きく全身を刺すような痛みが走ったが、何とか立ち上がるとモルトも同様にヨロヨロと立ち上がる。
あの【強善薬】を飲んでから、突然あり得ないほどステータスが上がっている……!!
それを身にしみて感じながらも、やはり強い違和感を感じて首を傾げた。
通常の【強善薬】ではあそこまでのパワーアップは無理。
いかに強化版といえ、そんな事が可能ならとっくに商品化されているはず。
そんなモノを使って大丈夫なのか……?
そう思いながらゲイルに視線を合わせると、その顔はまるで血を塗りたくった様に真っ赤になっており、更に見えている全ての皮膚部分に太い血管がくっきりと浮き上がってピクピク痙攣していた。
────全然大丈夫じゃない!!
モルトと同時にそう思い、モルトは幻影を、俺はミラーズ・バットゴーレムをまた即座に出して身構えたが、ゲイルは口からよだれを垂らしながら光悦な表情を浮かべ、ガ──ッハッハッ!!と大声で笑う。
「あ”あ”あ”あ”〜〜────みなぎるぅぅ〜みなぎるぞぉぉ────!!
この力!スピード!ぎも”ち”いい〜〜!!
これなら誰もが俺にひれ伏す!
こうなったら王族み〜んなぶっ殺して、俺が王様になるのもいいよなぁ。
ククッ、とりあえず逃げたクラスの奴らは皆殺しぃぃぃ〜♬新しくメンバーを集めよう。
俺のための踏み台を、沢山沢山集めてもっともっともっとも〜っと!上にのし上がってやる!
あぁ〜人生ってなんてイ〜ジ〜モード!最高のハッピーエンドにしてやんぜぇぇぇ────!!」
そう言い放ち狂った様に笑いだすゲイルに、俺は心の底から恐怖を感じた。
勿論その変わりようや強さも怖いと思うが、それ以上に────……心に『大事』が自分しかいないという絶対的な孤独が怖かった。
大事なのは自分だけ、だから誰にも大事にしてもらえない。
代わりがきくような奴らを沢山沢山集めて周りに置いて、状況が悪くなったら捨てて捨てられる。
欲を満たすために他人を使っては、誰一人自分に手を貸そうとしてくれる人はいなくなるんだ。
こんなにも人が溢れているこの世で、こいつは一人。
これこそが絶対的な孤独なのだと俺は知った。
ポタポタと垂れてくる鼻血を乱暴に拭き、俺はゲイルを睨みつけながら隣に立つモルトに話しかける。
「モルト、もう二体フラワー・フェアリー呼べるっすか?最強ゴーレムを創るから協力して欲しいっす。」
「!────分かった、任せてくれ。」
モルトは泥にまみれた顔を拭おうとせず力強く頷き、すぐにスキル<この指止まれ!>を発動し、二体目となるフラワー・フェアリーを召喚した。
「フラワー・フェアリー【ニゲラ】!あいつの攻撃を撃ち落としてくれ!」
《おおお〜!楽しそう♬》
ポンッと音を立てて現れたのは、青い髪のボブカットにディアストーカーを被り、まるで狩人の様な格好をした女の子だ。
背中には二対の透明な羽、両手には銃身が長い銃を持っている。
「なんだぁ〜?またチンチクリンな役立たずを召喚しやがってよ!!
ちゃらくせぇっ!!」
ゲイルは【ニゲラ】を見て鼻で笑うと、スキル<分裂幻影拳(強)>を発動したため、またしても無数のパンチが俺達を襲う。
「【ハナズオウ】!【ニゲラ】!頼む!!」
《《了解!》》
モルトのお願いに二人は快く了承し、【ハナズオウ】の幻影と【ニゲラ】の打つ花の種弾によって、ゲイルの攻撃はどんどん数を減らしていった。
モルト達が時間を稼いでくれているこの時間、絶対に無駄にはしない!
俺はすぐにありったけの魔力と『想い』を込めてゴーレムを創り出していく。
俺の人生の中で、間違いなく最強といえるゴーレムを。
ものすごい数の拳のラッシュに、攻撃を防いでいるモルトの限界は近く、汗はボタボタ垂れ息を大きく乱しながらも歯を食いしばって耐え続けているのが見えた。
モルトも俺と同じだ。
今いる場所────リーフ様がいてレオンがいて、レイドやメルちゃん、ソフィア様、アゼリアさん、サイモンにリリアさん、他にも沢山増えてしまった大事な人達がいるこの大事な場所。
それを守りたいから全力で戦っている。
ガクンッと魔力が大量に持っていかれるのを感じながら、俺は「モルト────!!!」と叫ぶ。
すると、モルトは食いしばっていた口を大きく開け「分かってる!!」と叫び、右手を俺の作ろうとしているゴーレムへと伸ばした。
するとポンッ!と音を立てて、赤いポニーテールを靡かせた学生服の様な格好をしている女の子……三体目となるフラワー・フェアリーが出現し、くるくると俺のゴーレムの周りを飛び回り、光る糸で俺、モルト、ゴーレムを繋ぐ。
「フラワー・フェアリー【イキシア】!
彼女の能力は『リンク』、繋いだ相手と一つだけ何かを共有できる。
俺が共有するのは『想い』だ!
ゴーレムに俺の分の『想い』を乗せるぞ!」




