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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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(二ール)858 何か意味あるの?

(ニール)


初めて両親からリーフ様の存在を聞いた時、俺の思った事は『超めんどくさい』で、何故かと言われれば高位貴族は総じて性格が悪いからだ。


下の身分の者達は基本は暇つぶしの道具だとばかりに、あの手この手で意地悪してくる性悪軍団。


それはそういう奴ら相手に商売をしている両親を見れば、あえて聞かずとも分かる。


そんな奴らの醜悪さを良く知っている両親は『とにかくリーフ様のご機嫌を損ねるな』『言う事は何でも聞け』と口うるさく俺に言い聞かせてきて、その当時はいろんな感情が俺の中で渦巻いていた。


しかし家族のためと、そんな感情は隠し、いつも通り目指すは『当たり障りのない関係』!

そう意気込み初のご対面を果たした。

しかし、中々リーフ様と『当たり障りない関係』を築くのは難しく、持っている不思議な距離感に、モルトと共にタジタジしながらお相手する日々を過ごす事になる。

更に凄まじいインパクトを放つレオンという存在を隣に置くものだから、最初は物理的に距離を置いた友人関係からのスタート。

あの外見はとにかく熱心なイシュル教徒の家庭で育った俺とモルトにとって耐え難いモノであったため、モルトなど毎夜魘されていたらしいが、まずは俺、その次にモルトの順で結構あっさりその存在には慣れた。


人の順応力って凄いっす……。


じみじみそんな事を考えていると、普通の距離まで近づいてきた俺とモルトをまるで見計らったかの様なタイミングで、今度はリーフ様がズイズイと近づいてくる。


『一緒に修行し〜よ〜おっ!』


お散歩するような気軽さで言われたため快く了承すれば、モルト共々全裸にされて、同じく全裸で仁王立ちしているリーフ様と無表情のレオンと一緒に大きな滝へダイブ!

川底の主と強制戦闘させられて、その後は皆で美味しい主の肉を焼いて食べた。


『花の蜜吸いに行こ〜!』


今度はそう誘われて、また裸か!?と警戒していた俺とモルトはホッと胸を撫で下ろし、そのまま快く了承すると、なんと<毛針ハチ>の巨大巣へ連れて行かれ、戦闘しながらコソコソと蜜を吸わされる。

勿論絶品と言われる毛針ハチの蜜の味など、分からなかった。


『お昼寝一緒にし〜よおっ!』


警戒心マックスで見つめる俺達の視線などなんのその。

ニッコニコとご機嫌で誘ってくるリーフ様。


『……まぁ、お昼寝なら大丈夫だろう。』


そう思った俺とモルトが、コクリと頷いて了承すると────<モコモコ兎>の巣の中でお昼寝させられた。



< モコモコ兎 >

体長2mほどの兎型Gランクモンスター。

体を覆うモコモコふわふわの毛は最高級の毛玉として売買されているが、怒ると雷を発生させるため毛を刈る時には注意が必要。



モコモコ、ふわふわ────……!

顔や身体に触るモコモコ兎の毛は本当に気持ちいいが、いつ雷を落とされるかとモルトと共に全く眠れない。

チラッと目線だけリーフ様の方を見ると、前にはモコモコ兎、後ろには小さなレオンをくっつけてぐっすりと眠っていた。


当たり障りなく、緩〜く……────など絶対に無理だと考えを改めた俺とモルトは、とにかく全力でその突飛良しもない行動の数々に食らいついていく。


『全力を出して頑張る?』

『カッコ悪い、かったるい。』


『それして何か将来的に得することあるんすか?』


ダルそうにそう語りかけてくる頭の中の自分を完全に無視し、生まれて初めてがむしゃらに。

だってあんなにも全力で何事も関わっている人の側にいて、自分だけ傍観者でいる事が何だかつまらなく感じたからだ。

そうすると、俺は今までの自分を振り返り、フッと自身の手を見下ろした。


辛くて苦しい想いがない幸せなはずの『当たり障りのない』過去。

でも、その過去の先に俺が手にしたモノは何なのだろう?


目に写る手は空っぽで、それに恐怖を抱く。


当たり障りなく話せる相手はいる。

楽しいと感じた思い出だってあるし、上手くやってきた自信だってある。

なのに俺の心は空っぽだ。


『楽しい』

『嬉しい』


その言葉に心が伴ってないから、それをイメージでしか受け取れず、だから心に響かない。

その繰り返しだったんだ、俺の人生は。


それに気づいてしまうと最初は愕然としてしまった。


そりゃー居心地の良い場所のはずだ。

そこには俺の心はないのだから。


苦々しい顔をしながら、続けて思い出すのはリーフ様と出会ってからの事。

楽しい、ワクワクする、驚き、悲しみ、悔しさ、戸惑い────……思わずヒヤリとした思いや不安、恐怖。

思い出と共に沢山の感情が溢れ出し、突然手の中一杯にその想い達がこれでもかと乗っかってきてしまった。


そこには常に俺の全力があった。

『当たり障りのない』ってなんて虚しいんだろう……。


そう思った瞬間から『他』に対しての距離感は、ぐんぐんと近づいていった。

そして最初の大きな変化は、リーフ様とレオンのハイレベルな剣の打ち合いをモルトと見学していた時。


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