838 レオンはいつも通り
(リーフ)
「こっ、子供まで産めるなんて……あの蝶々はお母さんだったのか。
つまり、あのお母さんの方を倒さない限り、永久に子供モンスターが生まれちゃう。ど、どうしよう……。」
とりあえず俺は手当たり次第、ドロドロと落ちていく黒いお水を剣で叩き斬っていったが、数が多すぎて全ては無理。
そのため斬りそこねたドロドロは、いくつも下に落ちてはモンスター達が生まれいく。
それを見下ろし、『どうしたもんか……。』と頭を悩ませていると────突然、何個もの伝言シャボンが目の前にやってきてパチンッパチンッ!と弾けては言葉を伝えてきた。
『よくやった〜!!!!すげぇぇじゃね────かよ!!リ〜フゥぅ!!さっすがは俺の弟子!やっちまえ〜────!!!』
『ドノバンさん煩いです。────リーフ様、理由は分かりませんが貴方は現在呪いの天敵ともいえる能力を世界でただ一人持っておいでのようだ。
下に現れるモンスター達は我々が全て倒してみせますので、リーフ様はどうかその呪いの化け物に集中して下さい!』
『おいおい!お前マジもんの救世主様だったのかよ!!じゃあ、わりぃがそいつは救世主様にお任せするわ。
街の守りは俺達守備隊の仕事だぜ〜?お仕事取るんじゃね〜よ。任せな!』
『これはいつものパン如きでは恩を返せそうにないですね。この戦いが終わったら、ものすごいパンを作ってお届けします!
モンスター達は絶対に街には入れませんので、どうかご安心を。』
ドノバンから始まり、ユーリスさん、ケンさん、マルクさんが順々に俺へ自身の気持ちを伝えてくる。
そうか……俺は一人で戦っているわけじゃないんだ
胸が熱くなり、思わず心臓辺りの胸をギュッと掴む。
この4人だけじゃなく、街中から沢山の人達が命掛けでこの街を守ろうと奮起する強い想いを感じた。
だから背中はそんな皆に全部任せて俺は目の前のアイツを倒そう。
そして最悪な未来を変えてやるんだ。
この最強の悪役<リーフ・フォン・メルンブルク>が。
俺は<風の通り道>で沢山の足場を宙に作ると、それを踏みながら黒い蝶の上空へ。
そしてそのまま思い切り足場を蹴って、黒い蝶の羽の一部を剣で切り裂いた!
「「「ミ”ィ”ィ”ィ……ア”ァァあ”ああ”────────!!!!!」」」
何百にも重なった人の悲鳴の様なモノが、蝶の口部分からそれぞれ飛び出し空気を震わせる。
ダメージが通ったか!?────そう思ったのも束の間、何と一瞬でその切り裂いた傷は、塞がってしまった。
「────クソっ!」
そう呟きながら同様の攻撃を何度か繰り返し、俺はやっと気づく。
「────!!こいつ自己修復スキルも持っているのか!」
呪災厄の成体(先天スキル)
< 原型の記憶 >
ダメージを負った場合、怪我や欠損は即座に元通りの状態に戻る。
【呪心核】が壊されない限りはこのスキルは永久に発動し続ける。
<鑑定(全)>を発動してそのスキルを確認すると、その厄介さに思わず頭を抱えたが……同時に見慣れない言葉を見つけ、おや?と首を傾げた。
【呪心核】
それが何なのかは知らないが、何となくその言葉的にモンスターでいう【瘴核】……人で言うと心臓の事かな??と推測する。
つまりそれがこいつの唯一の弱点。
それを壊せば俺の勝ちだ。
ピッ!!とまた羽の一部を斬りつけ大きく後ろに飛び、黒い蝶の身体を見渡した。
問題はその【呪心核】がどこにあるのかだが……それはとりあえず攻撃を繰り返しながら探っていくしかなさそうだ。
気が遠くなりそうだが、やれるのは呪い無効を持つ俺だけ。
頑張るしかない!
気合を入れ直しながら、呪い無効を持っていないレオンを避難させようと、地上にいるレオンの元に素早く向かった。
周りはベチャッとした黒い水が所々に広がっており、多分これに当たっても呪いが伝染するはず。
急いでレオンを避難させなきゃ!と慌てて駆け寄ったが……何とレオンは魔素が強くなったせいでやたらと巨大化しているベッド・マッシュを丁寧に丁寧に剥がしている最中であった。
────ペリ……。ペリリッ〜……。
それをしているレオンはとてもご機嫌で、剥がしたベッド・マッシュを隅から隅までチェックし始めてしまったため俺の目は点になる。
「レ、レオン……?一体何をしているんだい……?」
「────あぁっ!リーフ様!今日は大事な記念日ですから、ちょうど良いのでベッド・マッシュを新調しようと思いまして……。他に何か新しくしたい物はありますか?」
ルンルン♬といつもよりも大分ご機嫌でそう尋ねてくるレオンに、めちゃくちゃ違和感を感じ、俺はスッ……と空を覆うように飛んでいる黒い蝶を指さした。
「レオン、あれ何か分かる?」
「??はい、黒い蝶ですね。」
視覚に問題ない事に、うむ!と頷くと、更にレオンにその危険性について説明する。
「そうだね!でね〜アレ、呪いの塊だからさ。あの蝶々も下に落ちた黒い水も、絶対に触れては駄目だよ。」
黒い蝶に向けていた指を、今度は黒い水たまり達にピッと向けると、レオンは一応という感じでコクリと頷いた。
「?はい、分かりました。────あ、丁度いい修行相手が見つかって良かったですね。」
「…………う、うん……。」




