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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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(クラーク)835 持っていきたいモノと……

(クラーク)


「う〜ん……家族の愛って難しいね。

ある時には心の支えに、ある時には心を傷つけるし、くっついているかと思えば突然離れていく時もあるし……捨てたと思っても心の奥に引っかかって捨てられない。

俺はそんな家族がいたことがないから分からないんだ。

()も今も生まれてすぐ捨てられちゃったしね。

その前もその前もその前も……────まぁ、仕方ないんだけどね!

そうだ!二人共、こうしてみるのはどうかな?」


カラッ!と何でもないように話される内容は、首を傾げるモノだったが、突然ポンッ!という小さな爆発音の様な音が思考を遮る様に聞こえたため、恐る恐る顔を上げる。

すると目の前には先程と変わらず立っているリーフ様の姿と、その隣には見上げるような大きさの天秤があった。


「この天秤に【持っていかなきゃいけないモノ】と【自分が持っていきたいモノ】を分けてみたらどうかな?

それで重くなった方をこれから先、持っていくといいよ。」


あまりにも普通過ぎるリーフ様に戸惑いながらも、俺達は同時にコクリと頷き、荷台に積まれている沢山のモノ達を考えながら天秤へと乗せていく。


『責任』『義務』は【持っていかなきゃ行けないモノ】


『正義』『夢』は【持っていきたいモノ】


『両親からの愛』……は【持っていかなきゃいけないモノ】


そうやって次々と振り分けていき、最後に俺の両親とグレスター卿を【持っていかなきゃいけないモノ】に乗せると────天秤は大きく【持っていかなきゃいけないモノ】の方へと傾いた。


答えは、簡単に出てしまった……。


「……ハ……ハハハッ……。」


乾いた笑いを漏らしながら、上に上がっている【持っていきたいモノ】を呆然と見上げる。

それはとても高く空に届くほどで、俺達は絶望感に打ちひしがれて、その場にへたり込んだ。


予想通りの答え。

これから先、俺達はずっとこの【持っていかなきゃならないモノ】を持って、この灼熱の大地を歩き続け無ければならないのだ。


ずっと、ずっと、永遠に────。


絶望は心を麻痺させていき、やがて痛みや苦しみはス〜……と引いていった。


【持っていきたいモノ】の方をココに置いていけば、少しは軽くなるかもな?


そう思い始めた、その時────リーフ様が、突然俺とジェニファー様をヒョイッと肩に担ぎ上げる。


「────えっ?」


「な、なにを……?」


突然の行動に慌てる俺達に対し、リーフ様はやはりいつもと変わらぬ様子で言った。


「だめじゃないか。まだ二人共大事なモノを乗せ忘れているよ。」


メッ!と子供を叱りつける様にそう言って、リーフ様は大きく上へ飛び、【持って行きたいモノ】が乗っている皿の方に、俺とジェニファー様を乗せる。

すると────……。


────ガタンッ!!


天秤は勢いよく傾き、俺達が乗っている皿が、今度は地面についてしまった。

その際、落下した衝撃で激しくお尻を打った俺達は、その痛みに呻きながらも何とかそれに耐える。

そんな無様な俺達に続いて地面にちゃんと着地したリーフ様は、眩しい程の笑顔でニカッと笑った。


「『自分の気持ち』!それは一番大事なモノだから忘れては駄目だよ。

────さぁ、これで答えが出たね。

『自分の気持ち』と【持っていきたいモノ】だけ持って、先に進もうじゃないか。」


リーフ様は笑いながら、前に続く道を指し示した。

すると灼熱の大地は突然姿を変え、みるみるうちに辺り一面花畑へと姿を変えたではないか!


「……な、なな……。」


「────っ。」


そのあまりの変化に理解が追いつかず、二人揃って呆然とその景色を見渡していると……いつの間にか俺達の格好は元通りになっていて、火傷も怪我もまるで最初からなかったかの様になくなっている事に気づいた。


い、一体何がどうなっているんだ……??


謎すぎる現象に、言葉も出ない。

俺達は無言のまま、綺麗になっている自分の手を見下ろしていると、突然リーフ様はワクワクした様子で言った。


「世界ってなんて美しいんだろうね。きっと、これからもっともっと綺麗になっていくよ。」


そうして続けて『やっほ〜い!』と叫んだリーフ様は、そのまま踊る様に前へと走っていってしまった。



◇◇

────ポタッ……。


何か暖かいモノが手に触れた感覚がして、ハッ!!とすれば、そこは元通りの馬車の中。


俺は馬車の座席に座っていて、視線の先には膝の上で握りしめた自分の拳がある。

そして、その拳は何故かぐっしょりと濡れていた。


…………夢??


不思議な気持ちでフッと前を見ると、そこにはジェニファー様が座っていたのだが、その目からはとめどなく涙が溢れていてドレスに涙のシミを作り続けていた。


「────何故、泣いているのですか?」


「……その言葉、そっくりそのままお返しするわ。なぜクラークは泣いているの?」


ジェニファー様に指摘されて、俺は自分が泣いている事に気づき慌てて目元を袖で拭く。

唖然としながら馬車の外を見れば、黒い蝶は羽を折り、何か巨大な黒い塊を前に作り出している所であった。

それにギョッ!として窓から身を乗り出すと、蝶は羽を開きその黒い塊を街に向かって放つ!!


「────っ!!街がっ!!」


思わず叫び声を上げるとジェニファー様もこれを見てグッ!と唇を噛んだのだが────……?



────ピッ!!



突然その黒い塊に小さな光が飛び込んでいくのが見えたと思ったら、一瞬でその黒い塊は消え去ってしまったのだ!


「い、一体なにが……!!」


「……光…………?」


目を見開く俺達の前で、その上の空が晴れ上がり地上を照らす。


一体何が起きたのか?


そう感じる間もなく、俺の感覚にとても覚えがある魔力反応が引っかかった。

これは間違いない……。


「────リーフ様だ……っ。」


そう呟くと、ジェニファー様は凄い勢いで俺とは反対側の窓から顔を出し「神様……。」と口にすると、目元を乱暴に擦り、そのまま大声で叫んだ。



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