822 ご登場
(レイド)
「奴らはなんとしてもソフィア様を排除したいのだ……。
今、教会はソフィア様と大司教グレスター卿の派閥で別れていて、ソフィア様さえいなくなれば実質教会はエドワード派閥のモノになるからな。
しかもこの方法なら例えソフィア様が犠牲にならなくとも『自分が助かるため大勢の人間を犠牲にした』────という嘘一つで国民からの信頼と支持は一気に失墜する。
そうすればグレスター派閥の勝利……つまりはこれでもエドワード派閥としては大勝利だ。
更に大切な者達を失った悲しみは強い怒りと憎しみになって、国ではなく一人生き残ったソフィア様に向く。
その後は……ソフィア様は、遠からずいつの日か守ろうとしていた国民たちの手で、その座を追い出されるだろう。」
想像以上に胸糞が悪いその計画に、思わず顔を顰めた。
俺は国の情勢やらなんやらはサッパリだが、少なくともこんな事を平気でやるようなやつが王になどなれば国は終わりだという事だけは分かる。
「酷いっす……。何で自分の妹を、そんな簡単に切り捨てる事ができるんすか……?
そこまでして王になりたいなんて俺にはその気持ちが分からないっす。」
信じられないと苦しそうに呟くニールに、サイモンがヤレヤレと困った様子でため息をつく。
「どうしても譲れないモノがあるって気持ちは、分からないでもないけどぉ〜?これは完全にアウトだよねぇ。
こんな沢山の犠牲の上に立つ血まみれ王子様が王になんてなったら、大変だよぉ〜。
まずは人族以外は全員奴隷!結果4カ国同盟は破棄!そしてそして世界大戦争へ〜……そんな真っ赤っ赤〜な未来絶対ヤダよぉ〜!」
きゃ〜!と悲鳴を上げるサイモンと真っ青に青ざめるモルト、ニール、メル。
リリアは呆れた顔をしながらサイモンの頭を叩き「……兄さん、脅かしすぎよ。」と諌めるが、「まぁ、間違ってないけど……。」と続けて言ったため、皆の顔色は更に悪くなってしまった。
俺は固まってしまったメルの頭をペチンッと叩いて正気に戻した後、ズ〜ン……と暗くなってしまった雰囲気を吹き飛ばす様に、皆に言った。
「じゃあ、余計にこの計画を成功させるわけにはいかなくなったな!
まずはエドワード派閥の奴らが設置した<聖浄結石>をぶっ壊そうぜ。4箇所だと手分けして壊しに────。」
「あ、そうそう!そのことなんだけどね、なんだか設置されている<聖浄結石>の近くに人がいるみたいなの。
結構強そうな人達で、どうやらそれを守っているみたいだったってハエ猫ちゃんたちが言ってたよ。」
リリアに叩かれた頭を擦りながらサイモンがそう言うと、全員の間にピリッ……とした緊張が走る。
「エドワード派閥の者達が守っているという事か……。」
アゼリアが忌々しそうにそう口にすると、お互い顔を見合わせた。
そんな大事なものを守らせるくらいだから、恐らくは一筋縄ではいかない相手であろう事は想像できる。
問題は、その人物達の情報が今現在俺達にないという事だ。
「なんとかその守っている人達の情報が、手に入らないかしら……?」
リリアがボソッ……と呟いた、その時────……。
「お教えしましょうか?」
そんなこの場に似つかわしくない様な、穏やかな男性の声が突然近くで聞こえて、俺達は全員、バッ!!と声がした方へ顔を向ける。
するとそこには執事の様な格好をした、一人の精悍な顔立ちをした男が立っていて、控えめな笑みを浮かべていた。
────?何かコイツ、ビリビリする……。
小さく震える尻尾からも、この男が相当の実力者である事が分かり、警戒心を強めていたが……?
「「カルパスさん!!」」
モルトとニールが、その人物を知っている様な声を上げたため、警戒心は一気に緩む。
「えっ?知り合いか??」
モルトとニール以外のメンバー達がポカンとしながらその男を見つめていると、その男はお辞儀のお手本の様な綺麗な礼をして俺達に言った。
「私はリーフ様の専属執事を務めさせていただいております<カルパス>と申します。以後お見知りおきを……。」




