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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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826 広がる不安、戸惑い

(マリオン)


「だ、だっていい写真が載ってたからつい……。」


ローリンがしどろもどろになりながら言い訳を始めたので、口を挟まず傍観を決め込んでいると、フリックが俺の方をチラッと見た後、意味深な笑みを浮かべた。


「まぁまぁ。ボクは良いと思いますよ?その新聞、確かに今、凄く人気あるんですよね〜。

しかもそれに限らず、冒険者ギルドが出している情報誌もリーフ様特集のお陰で即日完売しているそうじゃないですか。

中にはそういった特集記事を第一号から全て買い集めてスクラップして取っておいているお貴族様だっているかもしれないので、そのへんにしておきましょう。」


そう言ってニッコ二ッコと笑うフリックに「いや、流石にそんな奴はいないと思うが……。」と言って小さく吹き出すロダン。


「筋金入りのファンというやつですか……ちょっと怖いですね。」


「スクラップっていうのが本気すぎて、ゾッとしちゃいます〜。」


ルナリーとローリンがブルッと体を震わせたのを見てロダンも「確か……。」と言って同様に体を震わせるのを見ながら、俺は無言を貫いた。


おかしい……。なぜフリックがその事を知っている……?


外面上は興味がないフリを冷静に装いながら、内心は自身のコレクション部屋にしっかりしまい込んであるはずのスクラップ記事達を思い出し、ダラダラと大量の汗を垂れ流していると突然────……。


────バシュッ!!


大きな発煙音が空に鳴り響き、その直後真っ赤な煙がまっすぐ上空へと昇っていくのが見えた。


緊急伝煙だ。


「────何だ?……一体何があったのでしょうか?」


ざわつき出す周囲の中、冷静にロダンが周囲を警戒しながらそう言うと、ルナリーはジッと煙が上がった方向を確認し「どうやら冒険者ギルドの方で上げた様ですね。」と答えた。


「森に異変があったのかも知れません。ずっとコロちゃんが、変な気配がするって言ってましたから……。」


「もしかしてモンスター行進でしょうか……?でも街の中でも、そんな兆候は一度も噂されてなかったのに……。」


フリックが毛を逆立て始めたテイムモンスターを落ち着かせながらそう言うと、ローリンが不安そうな表情でそう呟く。


確かにモンスター行進などの場合、これだけ大きな街だとそれなりにその兆候の様な情報は必ず入るはず。

さっぱり分からない今の状況についてどう動くべきか、それを冷静に考えていた、その時────今度は、高速で移動する蹄の音とカラカラと回る車輪の様な音が耳に入ったため、意識はその音が聞こえる方向へ向いた。


「この反応は……【魔導馬車】か。」


独特のモンスター反応をキャッチしそう呟くと、予想通り視界に高性能な【魔導馬車】がテラスの入口に現れ、御者が一人の貴族名を叫ぶ。

呼ばれたその生徒は驚きながらそれに返答を返すと、直ぐに馬車に乗せられそのまま一瞬で走り去ってしまった。


「【魔導馬車】が貴族生徒を……?」


ポカンッ……としながら、馬車の背を見送っていると、何と次から次へと別の【魔導馬車】が到着し、どこぞやの貴族の名前を叫んでは、その該当する者達を乗せその場を去っていく。

その中にはクラークとジェニファー様の姿もあった。


俺は冷静に呼ばれた貴族の名前を繰り返し呟き、ある共通点を見つけて汗を掻く。


「全員がエドワード派閥の生徒達か……。」


「……そうみたいですね。」


ほぼ同時にその事実に気づいたフリックが、すかさず俺の言葉に頷いた。


ロダン達もその事に気づいたらしく、揃って眉を潜める。


「高位貴族だからって、このタイミングで……?」


「確かに緊急時の場合、高位貴族の方たちは優先的に助けるようになっていますが、あまりにも早すぎます。だって、伝煙が上がった直後ですよ?」


ルナリーとロダンはそう言って訝しげな様子を見せると、ローリンはまた一台過ぎ去っていく【魔導馬車】をジ〜ッと睨みつけた。


「そもそも【魔導馬車】をこれだけ動かすなんて、不可能ですよね?だって王宮管理品ですし……。

如何に高位貴族でも、所有していない人達だって多いはずです。」


4人とも全く同じ疑問を持ったらしく、口々にそれを言葉にして伝えてくる。

俺もその通りだと答え、そのまままた考え込んだ。


『エドワード派閥の生徒達の、あり得ないほど早い救出』


『王宮管理品であるはずの【魔導馬車】が総出で迎えにくる』


それはつまり────この事態を知っていた者達が、いるという事。

そしてそれは十中八九────。


「スタンティン家のご子息!マリオン様!!そして同派閥のご友人様方!!急ぎお乗り下さい!!」


大声で叫ばれる自分の名前にハッ!として一旦思考を停止すると、一台の【魔導馬車】から降りてきたらしい御者が、キョロキョロと周囲を見回す。

どうやら俺達を探しているようだ。

俺は直ぐにその御者に駆け寄り「一体何があった?」と尋ねたが、御者は焦った様子で首を横に振った。


「申し訳ありませんが、私では分かりかねますので、とりあえず乗って頂いた後に説明をお聞き下さい。」


本当に困り果てている様子からも嘘を言っているわけではなさそうだったため、俺達は全員仕方なく馬車に乗り込む。

それを確認した御者は、即座に前の運転席に戻ると、スターホースに命じその場を走りだした。


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