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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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821 悪魔の計画

(レイド)


「おいっ!皆!無事か! 」


聞き覚えのある声が闘技場に飛び込んできた。


────アゼリアだ。


「アゼリア!!お前ソフィアの側から離れていいのかよ!!それに……ここまでどうやってきた?早すぎないか?」


「ソフィア様に『己の戦場へ向かえ』と命じられたのでな。まずはここに向かうべきだと判断したんだ。

ここへは近くの【魔道路】で飛んで走ってきた。

今、教会のヨセフ司教と教会の者達が協力し戦いに備え、教会で保管していた魔道具を全て開放している。

まずは各場所に怪我人の搬送用の【魔道路】を繋いでいるまっ最中なはずだ。」


聖女様が戦う決意をしたためか、もう教会も全面的に戦う準備に取り掛かっているらしい。


「そうか……。」


そう答えながら更に熱くなる胸をトンッと叩いていると、アゼリアはそのまま話を続けた。


「皆、聞いてくれ。あの黒き蝶は『呪災の卵』といって、詳しい説明は省くが、呪いの化け物の塊なんだ。

倒すには大勢の人間の命かソフィア様の命が必要になる。

しかしソフィア様が死んでしまえばこの国は終わり……だから真っ先に避難して頂くはずだった。」


「『呪災の卵『』の事ならもう知ってるしぃ〜。

それに、ソフィアちゃんを犠牲にできない理由だって分かってるよぉ。

エドワード派閥が一強になったら、この国どころか世界大戦争でも起こっちゃうもんね。

だから、この街の人達を犠牲にするしかないだろうなって思ってたのに……何でこんな事になっちゃってるのぉ?」


ふふ〜ん!と胸を張って答えるサイモンに、アゼリアはほほぅ?と感心する様に頷いた。


「流石は出歯亀猫、情報が早いな。

確かにニコラ王は苦渋の選択として大勢を犠牲にする事を選んだのだが……ただしその代償にする人間を選ぶ『代償の選択』をすることを決定した。

エドワード派閥にバレぬ様、35歳未満の者達を、予め教会内に用意していた【転移陣】で安全な地まで飛ばし、その後<聖令浄化>を行う手筈であった。

だがそうなると、この街や周辺の街だけでは足りず、恐らくは王都もその範囲に入る。

……王は自分の命と引き換えに、国を腐敗せんとする者達全員を死地に連れて行くおつもりだったのだ。」


「……あの【転移陣】は、子供や若者達を逃がすためのものだったのね。」


その活用目的が判明し、リリアはボソリと呟き何とも言えぬ表情を見せる。


ニコラ王は、穏やかな王ながら『平等』を愛する王であるとは聞いていたが、まさか自身の命まで『平等』にできる程の人物だとは思っていなかった。

どうしようもできない状況の中、自身の命も代償に選び年端のいかぬ子供達を助けようとする、それができる人がこの世界にどれくらいいるだろうか?


俺はリリア同様に複雑な表情を浮かべている仲間達に向かって、ニヤッ!と挑発する様な笑みを見せる。


「ならよ!なおさらそのなんちゃらっつー魔法を使うわけにはいかないよな!こんなクソみたいな事を起こした奴らの思い通りに、させるもんかよ。

俺達のリーダーがアレを倒してくれるまで踏ん張るぞ。設置された<聖浄結石>の出番なんかないぜ!」


「────はっ??貴様、今なんと言った?」


突然アゼリアが訝しげな表情を浮かべながら尋ねてきたので、俺は首を傾けながら「?俺達のリーダーがアレを倒すまでってやつか?」と聞き返すとアゼリアは首を横に振った。

    

「違う。()()()()()<聖浄結石>とは何の事だ? 」


「???はぁ??いや、だってなんちゃら魔法を使うのに必要なものなんだろ?だから設置してあって……。」


「────まさかニコラ王は、まだこのグリモアに<聖浄結石>を設置していないの?」


アゼリアの言わんとする意味が分からずハテナを飛ばす俺とは対称的に、リリアは怖いくらい真剣な表情でそう尋ねた。

するとアゼリアも、負けじと険しい表情のままそれに答える。


「あぁ。避難前に間違って発動でもしてしまえば計画は失敗だからな。

ニコラ王はまずソフィア様、それから避難している子供から順番に若者たちを。そして最後は戦っている戦闘員の若者たちを避難させ、その後に<聖浄結石>を規定の位置に送るとおっしゃっていた。だから前もって設置などされてない。」


「……じゃあ答えは一つね。それを設置したのは……。」


言いよどむリリアにアゼリアはコクリと頷き、息を飲む俺達に向かってハッキリと告げた。


「十中八九、この事態を引き起こした犯人。エドワード派閥の者達の仕業だろう。

いざとなったら王の命令なしに無理やり<聖令浄化>を発動するつもりだ。」


自身の目的のために沢山の命が失われようが、どうでもいい。

そう言わんばかりの徹底したやり方に流石にあっけに取られていると、モルトの囁くような声が聞こえてきた。


「何故そんなにも非道になれるのだろう……。そんなに大勢の人間の命を奪ってまでなぜ<聖令浄化>を成功させたいのでしょうか……。」


アゼリアはそれに対し困った様な表情を見せた。


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