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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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818 リーダー

(レイド)


「呪いなんて……直ぐに逃げなきゃ!!」


「どこに!?だってモンスター行進が起きるなら、魔導馬車でもないともう逃げられないぞ!」


「いやぁぁ!!呪いで死ぬなんて絶対イヤよっ!!」


「皆……死ぬ……俺達囮として置いてかれたんだ……。」


「そんなっ!!近くの街に家族がいるのにっ!このままだと皆……死んじゃうじゃないっ!!」


全員が完全なパニックを起こしてしまい、しまいには泣き出す者達まで現れたため、モルトとニールが震えながらも「「落ち着いて下さい!!」」と叫ぶが全く効果はない様だ。


当たり前だ。

浄化も効かない化け物に普段の数倍、いや数十倍はパワーアップしたモンスター達によるモンスター行進。

そんな現実を突きつけられて、絶望しないヤツなんていない。


俺はメル、リリア、サイモンへ視線を走らせたが、事前にこの事を知っていたにも関わらず、青ざめ震えている。

勿論俺も……。


丸まって震える尻尾を必死で押さえ、黒い蝶を呆然と見上げると、何故かその蝶は両方の羽を折りたたみグググ……と体を丸め始めた。


「な、何だ??」


不思議に思いそれを見つめていると、他の奴らも同じく様子がおかしい事に気づき震えながらそれを見上げる。

すると、なんと周りの黒いモヤが蝶の前方に集まりだし巨大な黒い球体を作り出した。


「何……?アレ……。」


サイモンの唖然とする声が聞こえたのと同時に、その黒い球体はこちらの……街の方へ向かってゆっくりと覆いかぶさる様に向かって放たれる。


────あ、これ、ヤバいやつ……。


黒が重なる空を見上げながらそう気づいたが、どうしようもない。

全員がただ呆然と立ったままそれを見つめていると────突然キラッ!と光るものが、その球体の前に現れた。


……光?


目を細めてその光りを見つめると、その光は一瞬で街を飲み込まんとする黒い球体の中へ飛び込む。

そしてその次の瞬間────……なんとあっという間にその黒い球体は、巨大な渦巻く光によってかき消されてしまったのだ!

更にその大きな光は空にまっすぐと伸びていき、黒い空に穴を開けると、そこから舞台のスポットライトの様な光が差し込み、地上を優しく照らす。


「の……呪いが……打ち消された……??」


リリアがボソッと呟くと、それに続く様に、先程叫んでいた解析系資質のヤツが声をあげた。


「────呪いの攻撃が……打ち消されましたっ……!!」


信じられない言葉に、周りにいる生徒達は口々に「何で??」「そんな……あり得ないよ!!」と言って信じられない様子で騒ぎだす。


呪いは消えない。そんなことはあるわけ……。


そう冷静な自分が告げたが、次の瞬間空から沢山の伝電鳥達が飛んできて、そんな考えを吹き飛ばす様な言葉を告げた。



《俺に呪いは効かないぞ!お前は俺がぶっ飛ばす!!》


《だから皆!!自分の『未来』を諦めるな!!》



《足掻いて足掻いて足掻いて────全員でハッピーエンド、目指そうっ!!!》



「リーフだ!!!」


誰もがその声の正体に気づき、目を見開いて恐怖に引きつっていた表情を驚愕の表情に変える。

それは紛れもなくリーフの声で、全員の心を蝕む絶望と恐怖を、まるで嵐の様にあっという間に吹き飛ばした。


リーフは既に戦っている。

ビビって立ち止まっているだけの俺達を遥か彼方に置き去りにして。


それに気づいた俺は、情けなく丸まってしまった尻尾を力いっぱいムギュぅぅぅ〜!!と握った。


「〜〜──んぎぎっ!!いってぇぇぇっ────!!」


尻尾から伝わる痛みに叫び声を上げると、メルは自身の両頬がちぎれるくらいに抓り、モルトとニールはお互いビンタをし合い気合を入れ直す。

そして直ぐにまだ呆然としているサイモンの肩を揺すり「おい、情報はまだか?」と尋ねると、ハッ!と正気に戻ったサイモンが「もう少し!」と慌てて答えた。

俺は更にサイモン同様にボヤッとしているリリアの背中を、バンッ!と叩くと、リリアはハッ!とした様子で俺の方へ視線を向けてくる。


「────っ!!ご、ごめんなさい、ぼんやりしちゃったわ。

だって……呪いが消されるなんて、そんな事あり得ない。そんなの未だかつて、誰も……っ。」


「それをやってのけたんだろ?我らがリーダーリーフ様は。

俺は頭が悪ぃから、常識云々より、今自分の目でみた事が真実だと思う事にする!

リーフが奇跡を起こしたんだと思って、俺は前に進むぞ。

リリア、リーフが少しでも戦いやすい状況にするにはどうしたらいい?」


「そ……それは……。」


「────あのっ!!!!」


リリアとの会話に突然入ってきた大声に驚いて、その場の全員が揃って声がした方へ視線を向けると────そこには、顔を真っ赤にしながら、緊張しているのか?プルプル震えている一人の女生徒がいた。


薄いピンク色の髪の毛に、言い方が悪いが虫の触角を連想させるピョコンと弧を描くツインテール。

クリクリお目々に小さめの体格は、獣人だったら確実にリスなどの小動物系だろうと思われる少女。


あれ??この女、どっかで見たような……?


俺が必死に記憶を辿っていると、その少女はまたしても大声で俺達に向かって叫んだ。


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