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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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810 未来をこの手に

(ソフィア)


まだぼんやりしながらも、足をスッ……と後ろに引いた私を見て、アゼリアとヨセフ司教は焦った様な顔を見せた。


「ソフィア様!お急ぎ下さい!あの蝶の動きが変です!何か攻撃を仕掛けようと────。」


ヨセフ司教が切羽詰まった声を上げると、黒い蝶の前にどんどん黒いモヤが集まっていくのが窓の外に見え、全員動きを止めてその蝶を呆然と見上げた。


巨大な黒い玉……呪いの塊だ!


それにいち早く気づいたらしいヨセフ司教が「ソフィア様っ!!」と叫んだのと同時に、その黒い玉は街へ向かって放たれる。


────終わりだっ!


反射的に目を背けようとした、その瞬間────!!


向かってきた黒い玉は突然パッ!!と飛散し消え去ると、更に真っ黒に染まった空が一部晴れ渡り地上を照らした。

到底信じられない出来事に、私もアゼリアもヨセフ司教も目と口を開きポカンとしてしまう。


の、呪いの攻撃が……消えた??


私達は慌てて窓へと駆け寄り、晴れ渡った一部の空を見つめていると、今度は空中を飛び回る伝電鳥が教会の方へも沢山飛んできて、ある言葉を繰り返し伝えてくる。


《俺に呪いは効かないぞ!お前は俺がぶっ飛ばす!!

だから皆!!自分の『未来』を諦めるな!!

足掻いて足掻いて足掻いて────全員でハッピーエンド、目指そうっ!!!》



リーフ様の声だ────!!


それを聞いた瞬間、誰がこの奇跡の様な現象を起こしたのか分かってしまった。

あまりにも驚いてしまったのか、ヨセフ司教が腰を抜かしてその場に尻もちをつく。


「ば……ばかな……。あり得ない……呪いが消えるなんて……っ。」


そうブツブツと呟くヨセフ司教を尻目に、体中の血が沸騰するかの様に体と心は熱くなり、その衝動のままダッ!!と走り出した。


「「ソ、ソフィア様!!??」」


焦って叫ぶ二人の声を振り切り、私はイシュル像に手を触れる。

すると【魔道路】が出現し、一瞬で私は教会の最上階……【祈りの聖堂】より更に上にある、屋上の【イシュルの祭壇】へと辿り着いた。


平たいそのスペースの中央には<イシュルの聖大樹>がある方角をまっすぐ見つめるイシュル神の像が立っていて、別名『教会の天満』とも呼ばれているココは、神様のいる空に最も近い神聖な場所と言われている。

相変わらずの重苦しい空気にドロリとした気味の悪い気配が風に乗り、私の身体に絡みついては不快な感覚を与えてくるが、今の私の心はとても晴れやかで、喜びに似た感情がとめどなく溢れている。


今の私の顔は満面の笑顔。

形を失っていない心が、素直に私の顔に笑顔を創ってくれた。


空から差し込む光を嫌がる様に後ろに大きく後退する黒き呪いの蝶。

それをまっすぐ見つめ、私は祈る。


目指す先は『ハッピーエンド』!

自身の足でしっかり大地を踏みしめて、今度こそあの背中に追いつく。



<聖妃者の資質>(ユニーク固有スキル)


<祝福のサンクチュアリ>


辺り一面の魔素を薄めモンスターの能力を大幅にダウンさせる特殊結界系最上スキル。


更に魔素を必要とするモンスター以外の生物とその生物と契約を交わしている契約モンスターの能力を大幅にアップさせる事ができる。


その範囲距離と効果は術者の聖属性魔力値に依存し、その場から一定以上の距離離れなければこのスキルは解かれる事はない。


(発現条件) 

一定以上の魔力、魔力操作、聖属性魔力を持つこと

一定以下の精神汚染度、更に一定以上の純潔、純粋、正義、精神力、揺るがぬ意志を持つこと

一定人数以上の『人』の心を救う事



スキル発動と同時に、グリモアの街とそれを越え森全体が薄い空色の結界に包まれていった。

このスキルが発動している間、モンスター達はパワーアップする事はできず、大幅に能力ダウン。


私が生きている限りは、ここを魔素領域に変えることはできない。

黒い蝶を見つめながら不敵に笑うと、すっかり元に戻った爽やかな空気を大きく吸って、私は空に向かって叫んだ。


「私はアルバード王国第一王女のソフィア!

私も救世主様と志を共に、足掻いて足掻いて足掻いてハッピーエンドを目指します!!

どうか皆様も絶対に諦めないで下さい!未来をこの手に取り戻しましょう!!」


私の叫びを受け取った伝電鳥と伝言シャボン達は、物凄いスピードで四方八方へと飛んでいった。

それを無事に見送った直後、アゼリアとヨセフ司教が焦った様子でやってきて、スキルを発動している私の姿を見てギョッとしたヨセフ司教が叫ぶ。


「なっ、なんてことをしておられるのですか!!一刻も早くそれを解除し【転移陣】に────。」


「絶対に嫌です!!」


言葉を遮り叫ぶ私を、ポカンとした顔でヨセフ司教は見つめる。

それが面白くてフフッと笑った後、私は黒い蝶へ視線を戻し睨みつけた。


()()はリーフ様が必ず倒してくれます。ですから私が避難する必要などありません。

私達が今しなければならないのは、リーフ様がアレを倒すまでこの街の人々を守り抜く事です。そうでしょう?アゼリア。」


口を大きく開いたまま呆然としているヨセフ司教。

しかしその隣にいるアゼリアの目はキラキラと輝いていて、今直ぐ戦いたい!と口には出さずともわかりやすく語っていた。



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