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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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812 何で?

(レイド)


空に緊急伝煙が上がってから、先生たちは慌ただしく走っていってしまい、周囲の生徒達からは不安そうな雰囲気が伝わってくる。


俺達いつものメンバーは、バタバタと走っていく先生達をポカンと見送った後は、とりあえずリーフに話しかけたのだが────リーフは突然、やる気満々の雄叫びを上げて、レオンと共に風の様に去って行ってしまった。


「な、何なんだ?一体……??」


相変わらずの訳のわからぬ突拍子のない行動に首を傾げたが、そのお陰か周囲にいた生徒たちは我に返り、避難場所に指定された<闘技場>へ向かおうと足を動かし始める。

それをぼんやりと見ているとサイモンが「とりあえず僕たちも一緒に向かおうか。」と提案してきた。

モルトとニールはそれに素直に頷き、俺とメルは渋々といった様子でそれに従おうとしたのだが────突然サイモンが、いつもの胡散臭い笑みを引っ込め真剣な表情で横へ視線を向ける。


「……何で?」 


更に意味不明な事を呟いたので、ピタリと足を止めて、サイモンに尋ねた。


「……?何が『何で?』なんだ??」


腕を頭の後ろに組みながら軽い調子で聞いてみたのだが、サイモンは依然真剣な表情のまま何かを考えている。

ハテナを頭から飛ばしていると、突然耳に妙な音が飛び込んできた。


沢山の馬?

いや、もっと力のある、恐らくスターホースの力強い蹄の音────そして続けて聞こえてくるのは、切羽詰まった様子の御者?の声……。


しかもそれが一つや二つではなく、あちらこちらから聞こえる事に今更気づき、頭の上のハテナはもっと増えてしまった。

自分一人では出なさそうな答えに、俺は下に視線を向けて、耳に手を当て顔を傾けているメルを見下ろす。


「メル、何か見えるか?」


メルは直ぐに、ジッ……と一点を見つめた後、コクリと頷いた。



<重弓戦士の資質>(先天スキル)


<瞬目眼>


自身の眼の調節を自在に変える事ができる、視覚変化型スキル。

視界の悪い水の中や目眩し状態でも使え、更にかなりの遠い距離までハッキリと見る事が可能。



「……沢山の<スターホース>と、それに繋がっている馬車が見える……。生徒達を乗せている……。」


「あ、やっぱりね〜。この魔力反応は<スターホース>かな?って思ったの。

────って事は【魔導馬車】かなぁ?……何で今??」


サイモンはどうやら、ここらでは見たことのない<スターホース>の魔力反応を察知し、不思議がっていた様だ。


「なるほど……。」


納得しながら意識を周囲に戻すと、どうやら『◯◯家ご令息様〜』だの『◯◯家ご令嬢様〜』だの、どうも位の高そうな貴族の名前ばかりが呼ばれている。

それに益々首を傾げると、突然リリアが俺に話しかけてきた。


「何か会話みたいなものは聞こえる?」


「ん?────あ、あぁ……。なんか御大層な貴族の家名がさっきから聞こえているぜ。

俺は人族の貴族の名前には詳しくないが、俺でも知っている様な有名な家の名前もあるな。」


「……それを聞こえている範囲でいいから教えて。」


リリアが考え込みながらそう聞いてくるので、ツラツラと耳に入ってくる名前をそのまま挙げていくと────徐々にリリアとサイモンの顔が曇っていった。


「全員高位貴族達と、それに関係の深い貴族達ばかりだわ。

確かに何らかの不測の事態が起こった際には優先的に保護されるはずだけど……あまりにもタイミングが早すぎる。」


「しかも全員が、ゴリゴリのエドワード派閥だもんねぇ〜。さっちゃん、嫌な予感ビッシビシ!」


リリアとサイモンの言葉を聞いた俺達は、う〜ん……と考え込んだ。


確かにおかしい。

まだ緊急伝煙が上がってから5分も経っていないのに、救出があまりにも早すぎる。

これではまるで…………。


「まるでこの展開を────。」


「知ってたみたいっすね!」


モルトとニールがズバリ全員が考えていた事を言い当てると、俺はフッと浮かんできた疑問を口にする。


「そもそもその『エドワード派閥』ってやつ、全員悪者なのか?」


イマイチ分かってないそのエドワード派閥とやらについて聞いてみると、俺と同じく不思議がっているメルを除いた全員が、はぁ〜……とため息をついた。


「レイド……お前はこの国の事をもっと知ったほうが良いぞ。

いいか?この国の派閥は主に3つ。

1つ目は爵位に重きを置き、高位貴族を筆頭に沢山の貴族達が籍を置く、第一王子エドワード様が率いる【エドワード派閥】。

2つ目は実力に重きを置き、実力ある少数派貴族達と商人、冒険者ギルドなど殆どの民間組織が籍を置く、第二王子アーサー様が率いる【アーサー派閥】。

そして3つ目が平和と平等に重きを置いたイシュル教会の教えを掲げる、第一王女ソフィア様が率いる【中立派】。

この中でやはり一番抜きん出ているのは【エドワード派閥】なんだ。

なんといって、この国の権力を持っているほとんどの貴族が加入しているからな……。

ただ、実力が高い者達で形成されている【アーサー派閥】や、全世界に影響力を持つ教会の【中立派】を強行突破するのは難しい。

だから今、国はこの3つの派閥によって絶妙なバランスが保たれていて、結果、平和を実現しているんだ。」


「その中で【エドワード派閥】の貴族達は、過激派が多いからとにかく目立つんすよ。

俺の家は昔から教会に熱心なんで一応【中立派】なんすけど……そのせいでちょこちょこ【エドワード派閥】の人達に嫌がらせをされるっす。

多分あの感じだと、その嫌がらせに負けて派閥に入らざるを得ない人達もいると思うんすよね……。

だから完全に悪いものかって言われると迷うところっす。」



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