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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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811 希望の神様

(ソフィア)


「────はいっ!!!リーフ様が戦っているならば……戦いたい!

邪魔をするモンスター共を、根こそぎぶっ飛ばしてやりたいです!!

私だって……足掻いて足掻いてハッピーエンドが良いっ!」


アゼリアは拳をグッと握り、辛そうに顔を歪める。

ヨセフ司教は今度はオロオロとしながら、私とアゼリアを交互に見た。


「でっ、でも……!さっきのはまぐれかも────……。」


そう必死に説得しようとするも、私はそれを笑いながら言い返す。


「まぐれで呪いが決して消えない事を、ヨセフ司教の方がよく知っているでしょう?

リーフ様がぶっ飛ばすと言って下さったのなら、絶対にそうしてくれます。

だから、絶対にここは死守しなければなりませんね!

なんと言っても私は、リーフ様のハーレム『姫』担当枠を頂いてしまったので一人で逃げるわけには参りませんので。」


アゼリアに続いて拳をグッと握り、ジ〜ン……と感動に震えていると、ヨセフ司教は反対に大きなショックを受けた様子を見せた。


「ややっ!!?ハ、ハーレムとな!?

王女ともあろう者が何をおっしゃっているのです!どちらかといえば、貴方がハーレムを作る方なのですよ??

アゼリア!お前も何か言っておやりなさい!」


ヨセフ司教はプンプンと怒りながら、アゼリアの方を振り向いたが、アゼリアはシラっとした顔で首を横に振る。


「私はアゼリアではありません。リーフ様ハーレムの『ヤマトナデシコ』枠担当よアゼリアです。」


アゼリアまで私と同じ様な事を言い出した事で、ヨセフ司教は白目を剥いて立ち尽くす。

アゼリアと私は顔を見合わせ笑い合い、その後真っ白になってしまったヨセフ司教に視線をまっすぐ向けた。


「『心こそが人の本体である』

そう教えてくれたのはヨセフ司教ではありませんか。

私の心は、ここで逃げればきっと腐って形を失ってしまうでしょう。

それに……私はどうも、今がこの国の未来を決める重要な分かれ道のような気がするんです。」


私の言葉にヨセフ司教の意識は戻り、フッと真剣な眼差しを私に向けてきた。

私は笑顔を見せたまま街中を見渡す。


「例え身体が助かっても、大切な者達の死によって心が死んでしまえば、きっと二度とこの国のために頑張ろうとは思わないでしょう。

そんな状態では結局、自分だけが幸せな世界を創ろうとする第二のエドワードお兄様が沢山生まれて同じ歴史を辿るだけです。

心が生きているから沢山の感情が生まれ、それによって必死に現状に抗うから世界は輝く。

『希望』が目の前にあるなら全力で抗いましょう。

私はこれからも歴史書をキラキラした目で見続けたいので、頑張ります!」


今、目の前には黒いモヤで覆われた空と黒い蝶。

でも今の私には、こんな世界がとても綺麗なモノに見えた。


ヨセフ司教は私の言葉を聞き下へ下へと視線を下げる。

そしてブルブルと大きく震えた後、突然凄い勢いで顔を上げ縋るような目つきで私を見た。


「ほっ……本当に希望をっ……そんな夢みたいな希望を持っても良いのでしょうか?

あんなどうしようもない無敵の化け物を、本当に倒してくれると……?」


「「倒せます!!」」


アゼリアと私が同時に叫ぶと、ヨセフ司教はまるで泣き出す寸前の様な顔を見せた後、組んだ手を額につけブツブツと祈りの言葉を呟く。

私よりも遥かに人々の心と寄り添ってきたヨセフ司教にとって、この計画は本当に辛い選択であったはずだ。


大切な者達を失い、未来を生きる人々の姿は本当に悲しいモノだから。


だからそうならない未来を掴む希望があるなら、きっと誰よりも飛びつきたかったに違いない。

それを証拠にヨセフ司教はキラキラした目で空を見上げると、そのまま両手を高々と上げて大声で叫んだ。


「やっぱり私の願いはイシュル神様に届いてきたのですね────!!毎日毎日遅くまで祈っていた甲斐がありました!私だってこんなの絶対に嫌だったんですよ!!

せっかく『シニア限定!恋のお祈り始めませんか?☆』パーティーの企画書ができてたのに!絶対生き残ってバンバンお見合いパーティー開いて教会で結婚式あげて貰いま────す!!!」


わ────!!と気合満々で叫ぶヨセフ司教を、アゼリアが苦々しい顔で見ていたが、本心では嬉しそうだ。

そんな二人を見てクスッと笑った後、私は直ぐに笑いを引っ込め、晴れ渡った空の一部がまた黒いモヤに覆われていくのを睨みつけた。


「ヨセフ司教、アゼリア、私はこのスキルを発動している間ここを動く事ができません。

ここは私の戦場です。ですので、お二人はご自身の戦場へと向かって下さい。」


「────っ!!しかし、突然良からぬ動きをするモンスターがいないとは限りません!」


心配の声を上げるアゼリアを安心させる様に私は笑った。


「心配はいりません。このスキルを発動している限り、モンスター達は私に近づけば近づく程息ができなくなります。

だから、決して近づこうとしないでしょう。

イシュル教会司教ヨセフ、そして専属聖兵士のアゼリア両名にアルバード王国第一王女として命じます。

全力で足掻いてハッピーエンドを目指しなさい。死ぬことは許しませんよ。」


二人は表情を引き締めると「「────はっ!!」」と返事をしながら一度頭を下げる。

そして各々の戦場へと向かって、走っていった。


それを見送った後、私は大きく深呼吸をし呪いの蝶を睨みつけながら、どんどんスキルの精度を上げていく。

するとそいつは、何かの違和感を感じているのか、私のスキルと真っ向からぶつかる様な力を放ってきたが────私は負けない。


「貴方はモンスター達を、私は『人』を強くする。もうどんなに絶望を振りまこうとももう無駄です。私達には希望の神様がついているのだから。」



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