794 未来は助かる
(リーフ)
エイミさんがそう言って頭を下げると、ヘンドリクさんとザップルさんも同様に頭を下げた。
それを見ていた冒険者達は内心戸惑いや不安を感じている様子であったが、一人、また一人とそれを振り払って決意した様な眼差しを三人に向ける。
「子供達や、若い奴らは……『未来』はそれで助かりますか?」
その中の一人が手を上げそう発言すると、エイミさんはまっすぐその人に視線を向けながら「助かります。必ず。」と答えた。
なんだかそのやり取りに違和感を感じ、思わず首を傾けたが……ゆっくりと頭を上げたヘンドリクさんが全員の顔を見回した後、今度の事についての説明を始めたため、一旦それは頭の隅に置いておく。
「この街の門は4つ。
各門に設置してあるモンスターを引き寄せる<魔引力珠>の影響によって、ほとんどのモンスターは門へ向かって進んでくるはずじゃ。
ただし門の形勢が崩されれば、あっという間に他の防壁部分にまでモンスターは攻撃を始めるじゃろう。
もっとも激戦区になるであろう北にある正面門は、我がグリモアが誇る守備隊が担当。
そして我々冒険者達は、東門が担当じゃ。
西門は傭兵ギルド、南門はライトノア学院が守る。
どこか一つでも落とされれば街は全滅、心して挑んで欲しい。
現場ではザップルが総指揮を、ワシは一旦正面門へと向かい孵化を確認した後、こちらに合流する。皆の者、健闘を祈る!」
ヘンドリクさんはそう言った後、直ぐに正面門の方へと走っていった。
その後、冒険者達は一斉に雄叫びをあげて、全員が直ぐに戦闘準備にかかる。
なるほど……。
要は、その呪いを消しちゃう様な大魔法が準備できるまで、耐久戦をすればいいという事か〜。
納得した俺は、腕を組んでウンウンと頷いた。
凄い魔法だからか時間がかなり掛かるらしいが、夢の内容と違って今は十分戦いの準備をする時間を確保する事ができたし、もしかして俺が負けても大丈夫かも……?
へにょ……。
そう思う安心して、緊張しすぎていた体から一気に力が抜けた。
俺がそうしてダルダル〜としてしまった間にも、冒険者達は自身の所属するクラス同士、所持しているアイテムや魔道具についてや、それぞれの所属冒険者達の得意とする配置場所などなどお互い情報交換しあい、テキパキと戦闘時における配置や連携方法などを決めていく。
人型種VSモンスターの戦いにおいて、協力プレーは必須。
更には、如何にそれぞれの得意分野を生かした配置にするか否かで生存率は飛躍的にUPするため、戦闘の事前確認が取れているか否かはかなり大きい。
それを知っている冒険者達は、流石はプロ!と感動するほど素早い対応スピードだ。
「おおお〜……!」
感動でキラキラ輝きだす目をテキパキと動き回っている冒険者達に向けていると、ザップルさんとエイミさんが手を振りながらこちらへとやってきた。
「『救世主様』に『守護影様』。随分と、どえらい事態になってしまったな!
相手がどんなに強かろうが、生きているモンスターなら対策も練れるが……『呪い』相手ではお手上げだ。
時間を稼ぐことしかできないなんて、俺は正直悔しい!
悔しくて悔しくてたまらないぞ!」
そう言って、グッ!と拳を握り顔を歪めるザップルさん。
その拳は、これから全冒険者達の命を預かるプレッシャーからか、僅かに震えていた。
「呪い相手だと、攻撃は浄化くらいしか有効な手はないから仕方ないさ。
でもすんごい魔法を打てば倒せるなら頑張って時間を稼ごう!
俺、頑張る!」
ゴッ!!と燃えながら言い放つと、いつもなら同じく燃えて返事をしてくるはずのザップルさんが……何故か乾いた笑いを返してきたため、首を軽く傾げる。
?あれ?いつもと違うな……。
随分と元気がない様子で心配になったが、ザップルさんは、直ぐにいつも通りの明るい笑顔を見せてくれた。
「────うむ!俺も頑張るぞ!
とりあえずこれから各クラスの配置決めをするつもりなんだが、リーフとレオンはどのクラスにも属していないから、この東門にはこだわらず好きに動いてくれ。
恐らく役割を決めるより、その方がいいと思ったんだ。
きっとお前達は全体を見て動いてくれた方がいい。
東門は俺達に任せてくれ。」
続けて、ドンッ!と胸を叩いて笑うザップルさん。
その受け答えはいつも通りなのだが……やっぱりちょっと元気がない気がする。
「うん!分かった!」
少々気になりつつも、俺も胸を叩いて返事を返した。
とりあえず、好きに動いて良いとの事だったので、正直助かったな……。
ホッと胸を撫で下ろし、これからどう行動するべきか頭の中で整理しようとしたのだが、ザップルさんに続いてなんだかエイミさんまで元気がない様な気がして、やはり首を傾げる。
「エイミさん。なんだか元気がないね。もしかして今日が初陣かい?
初めてでこんな強敵と戦うなんて、忘れられない体験になりそうだね。」
エイミさんはギルドの受付さんなので、恐らく今日が生まれて初めての戦いのはずだ。
きっと責任感が強いのと、皆のために何かしたい!という優しい心から戦う事を選んだんだろうと思われる。
なんて勇ましいお嬢さんなんだ!
感動で鼻を鳴らすと、エイミさんは一瞬キョトンとした顔を見せた後、困った様に笑った。




