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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十一章

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800 アレは……?

(リーフ)


「……まぁ、あいつが選んだ死に場所だからこれ以上文句を言うのは野暮ってもんか。」


ため息をついた後、ケンさんは呆れた様に笑い、マルクさんも無言のまま微笑む。

そしてそれを聞いた俺はというと────『し、し、しまった〜!』……と心の中で叫び、頭を抱えてしまった。


ライキーさんは、本来の未来通りにあのキノコ小屋にいる!


てっきり街の皆同様、教会に避難していると思っていたが……ライキーさんの未来は、そのまま変わっていない様だ。

このままではその小屋で、ライキーさんは命を落としてしまう!


『……僕……と……君を……繋ぐ……大事な……最後の絆……。

絶対に……離さ……ないよ。

────あーちゃん……。』


ライキーさんの最後の言葉を思い出し、続けて思い出したのは、ケンさんが以前言っていた話だ。


『昔から何かを栽培したり育てたりは好きだったみたいだが……あんなに執着しだしたのは高学院に入ってからだ』


『そこでお付き合いした彼女さんが原因らしい』


『どうやら上手く行かずに、別れちまった様だな』


『結局それから恋愛の一つもせずにず〜っとあそこでキノコ一筋の引きこもりになっちまった。

なんでもキノコがその彼女との唯一の繋がりで『幸せ』の場所なんだと』


「────そうか……。」


俺はライキーさんの心の内が何となく分かって、ポリポリと頭を掻く。


あの場所はライキーさんにとって、最も自分が幸せだった頃の居場所だったから、例え死ぬのが分かっていても離れたくなかったのか……。

死ぬ直前のライキーさんの幸せそうな顔を思い出し、何とも言えぬ気持ちになってしまったが……。


「────っうぅぅ〜……!」


俺はぐちゃぐちゃぐちゃ〜と髪の毛をかき回し、最後は勢いよく鼻息を吹く。


やるだけやってみるか!


とりあえずライキーさんのいるであろうキノコ小屋に飛ぼうとした、その時────……。


────ヒヤッ……。


冷たい風が、突然森の方角から吹いてきて、守備隊員達は全員険しい顔をそちらへ向けた。

そして、それとほぼ同時くらいに、森の奥の方で物凄い量の鳥型モンスターや流星コウモリの様な飛行型のモンスター達が一斉に空へ飛び立つ。


「な……何だ……?」


目を凝らしてジ────ッ……と森の方を見ていると、突然森の中からパッパッパッ!と点滅している蒼い光が、空へと打ち上がった。


あれは────<伝令閃光>だ!



<伝令閃光>


トラップや魔法の設置が完了した事を仲間に知らせる閃光弾。

青い点滅した光が空に向かって昇っていく。



森の中に仕掛けたトラップや魔法が、設置完了した合図。


もう孵化の時は近い。


その場には緊張した空気が漂い、俺の頬からは一筋の汗が伝って落ちた。


ドロドロと何だか気味の悪い感覚に支配されて、二日酔いの胸焼けの様な……とにかく、不快な感じが体に絡みつくみたいだ!


流れ落ちる汗を拭うと、それと同時に森の入口付近からポッポ鳥に乗った沢山の人間たちが飛び出してきた。

その中には、ヘンドリクさんもいる。


「卵が孵化する!!全員戦闘準備開始じゃ────!!!」


ヘンドリクさんの叫び声を聞き、ケンさんが直ぐに全隊員へ指示を飛ばす。


「後衛部隊バフ開始!!前衛班でまずは迎え撃つぞっ!!!」


「「「────はっ!!!! 」」」」


それに対し全隊員達が一斉に返事を返すと、そのまま後衛班のバフが次々と全体へと掛けられていった。

そうしている内にヘンドリクさんと他の、恐らくトラップ系の資質持ちの人達は門の前に到着したのだが、その後直ぐに森の奥の上空が円を描くように黒く染まっていく。


まるで真っ白い紙に墨を溢してしまった様な……?


唖然としながら空を見上げていると、その黒はどんどんと広がっていき、やがてグリモア上空がすっかり覆われてしまうと、視覚で捉えられる範囲の空は、全て黒くなってしまった。


「まるで世界が黒い世界になってしまった様ですね。」


「……なんつー不気味な現象だ。

前に一回空が暗くなったやつも、こいつの仕業だったのかもな。」


マルクさんとケンさんが、険しい顔で空を見上げて呟く。

俺も改めて遠くの方まで広がっていく『黒』を見て、続けてそれに対しガタガタと小さく震えている周りの守備隊員達を見回した。


その瞬間、何かのピースがカチッ……と嵌った様な気がして……。


────いや、でも何が?と言われると分からなくて悩んでいると、今度は……。


────ズッ……。


ズズズズ────ッ……。


まるで肉を引きちぎる様な……なんとも不気味な大きな音が聞こえて、更に森の奥地から空に向かって真っ黒いモヤモヤした煙の様なモノが立ち昇っていくのが見えた。


全員が固唾を呑みながらそれを見上げていると、空に広がっていくその黒い煙はどんどんと固まっていき、何かの形を形成し始める。

その形はとても見知ったある生物の形で、周りの隊員達からは小さな悲鳴が聞こえだした。


二対の巨大な羽に特徴的なシルエット────アレは……。


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