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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十一章

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796 ご利益ないよ……

(リーフ)


俺は「分かった!ありがとう!」と、元気よく返事を返したわけだが……実はそのゲイルさんとナックルさんが誰だか知らない。


「……ゲイルさん……ナックルさん……???」


助けを求めてレオンを見上げたが、周囲の人がいなくなり、人が怖い怖いなレオンはとってもご機嫌で……そのため、今の話を一切聞いていない事が分かった。

俺は腕を組み唸り声を上げながら、ジロジロ〜とレオンの顔を睨みつける。


レオンは基本、人が何を言おうが何をしようが自分に関係なさそうな話は一切聞いてないし、加えて先程からなにやら恐ろしくご機嫌で、頭の周りにはポワポワとお花まで飛んでいる様だ。


コツコツコツ……!


俺はレオンの周りを一周し、また正面に戻った後、ジ〜ッ……とその顔を見つめると、更に機嫌が良くなったレオンの頭の周りは、お花畑に早変わりした!


俺はねぇ〜別にねぇ〜……?ザップルさんやエイミさんほど、緊張しろとは言わない。

でもほんの少しでいいから緊張感を持った方が良いと思うんだよ。

相手は呪いだし。怖いヤツだし……。


お花畑を咲かせながら、レオンはスィ〜……と近づいてきて、俺の頭に頬を擦り付ける。

そしてそのままアナコンダ・ホールド!……の気配を察知した俺は素早くその場から脱出した。


『まぁ、怖くて泣き喚くよりいっか!』


そう気持ちを素早く切り替え、街の中央方面にある【居住区域】や【商業区域】を目指して走っていった。


◇◇

街中を走り抜けながら辺りを見回していくと、どこを見ても人っ子一人見当たらず、ガランとしているのが分かる。

どうやらちゃんと守備隊の働きによって、街の人達の避難は終えている様だ。


それにホッと息を吐き、続けて今目の前にあるいつもと変わらぬ街中の光景と、あの夢で見た全壊に近しい街中の景色を重ね合わせ────改めてあれは、本来現実に起こる未来だったのかと背筋を凍らせた。


夢の中で、壊れてしまっていた建物や建造物。


それが無事なのをしっかり確認できると、恐らく本来の未来では避難する間もなく街の中まで襲撃を受けてしまったのだろうと予想する。


そして、その際にルルちゃんは致命傷を追ってそのまま……。


血だらけで横たわるルルちゃんを思い出し、ブルッと身体を震わせると、俺は【森の恵み】や【リンゴの家】も覗いていき、誰もいない事をしっかり確認してからまた走り出した。


俺が『リーフ』になった事で、恐らく教会に避難している人達に危険はないはずだ。


ルルちゃんが亡くなってしまった後、教会で起きた惨劇を思い出し、俺はうんうんと頷いた。


あの惨劇は、教会に仕掛けられたモンスターボックスが原因であったため、それを仕掛けたマリオンは『リーフ』が命令しなければ動かない、つまりその事件は起こらないという事だ。

マリオンは絶対にそんな事をしないのは分かっているので、何も問題なし。

それよりも気になっているのは、何故なんちゃら卵の孵化する期間に大きな違いがあるのか?だ。


街の中を走りながら、俺はそこら中に咲いている白いすずらんの様な花『秋空花』を見て首を大きく捻る。


ここ、アルバード王国の季節は2つ。


《春》と《秋》。


そのため街の中で咲いている花々が半年を境にガラリと変わるのだが、前期の《春》は色とりどりのカラフルな花たちが、そして後期の《秋》には『秋空花』と呼ばれる花で白一色となる。


夢で見た光景では、モンスター達によってだいぶ踏み荒らされていて分かりにくかったが、色とりどりな花の残骸が至る所に散らばっていたため、少なくとも《春》の時期……つまり、1年は半分も経っていない頃だったと思われる。


しかし、今は既に12月────街の中には『秋空花』が咲き乱れ、景色を白く染めている事から、明らかに本来の未来よりも遅いタイミングになっている様だ。


「んん〜??」


そこで疑問を持ったのだが、とりあえずコレは大ラッキー!な事である事は間違いない。

そのお陰で俺もたっぷり修行できたし、街の状態も回復したため、本来の未来より戦闘員達の状況はだいぶ良いはずだ。


トンットンッと近くの屋根に上り、周りの景色を見回した後、正面の門の方角へ視線を向けた。


後は、あの黒い正体不明のモヤモヤがどこから現れるかだが、もし本来の未来と同じ場所に現れるとしたら、正面門だ。


「こればかりは、考えても分からないし……とりあえず、正面門でその時を待とう。」


そう考えた俺は、そのまま正面門を目指して走っていた。



そうして到着した正面門は、現在巨大な扉がぴっちりと閉められている状態であった。

更に街を覆う高くて頑丈な防壁の上部には、守備隊の後方部隊がズラリと配置されていて、完全に迎え撃つ準備が完了しているのが見える。


「おおお〜……。」


目の前に広がる景色に感動しながら、ぴょぴょ〜んとまずその防壁の上に着地すると、後方部隊の守備隊員達は一斉に俺の方に視線を向けた。


「救世主様じゃ〜ん。」


「よっしゃ!ご利益ご利益〜。」


そう気さくに声を掛けてきては、やはり冒険者達同様、俺の身体をペタペタ触ってくる。

別に痛いなどではないから良いのだが、ご利益なんてないよ……と心の中で謝っておいた。



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