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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十一章

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782 これから……

(ザップル)


険しい顔に緊迫している雰囲気。

ただ事ではない事が、その場の全員に一瞬で伝わる。


「「「「────はっ!!」」」」


全員即座に返事を返すと、ギルド内にいた全職員はヘンドリク様の指示通り、直ぐに奥の保管庫へ魔道具を取りに走って行き、冒険者達は自身のパーティーメンバー達と連絡を、そして現状クラスで抱えている武器や魔道具などのチェックをしに走っていった。

それを見届けた俺とエイミは、直ぐにヘンドリク様の元へ駆け寄る。


「ヘンドリク様、一体何が……?

────もしやとうとう見つけたのですか?」


エイミが慎重にそう尋ねると、ヘンドリク様はコクリと頷いた。


「とにかく情報を直ぐに王都と他の機関へと知らせる。支部長室に急ぐぞ。」


そう言って険しい表情のまま歩き出したので、俺とエイミは直ぐにその後について行ったが、ヘンドリク様は焦りと共に、非常に激しい怒りも見せてくる。


「エドワードのアホタレは、とんでもないモノをこの国に持ち込んでおった!!あの愚か者が!!

考えうる可能性の中でも、最も最悪の状況じゃ!エイミ、至急<通信映像体>の準備を頼む。」


「わ、分かりました。」



< 通信映像体 >


巨大スクリーン同士で会話する事のできる通信用魔道具。

中継映像体とは違い会話ができるため国や地域を跨いだ会話や会議ではよく使われるが、魔導具の制作者のレベルを反映するため、その使用時間やジャミング耐性、かつ消費魔力量も変わる。



ヘンドリク様は、支部長室に到着して直ぐに連絡用の<通信映像体>の準備をエイミに頼んだ。

了承したエイミは、直ぐに支部長室の中央に設置されていた球体の通信映像体へ魔力を流す。

すると、直ぐに巨大スクリーンが2つ宙に浮かび上がり、それぞれに男性の姿が映し出されたが、それに映し出された人物を見て、俺とエイミは慌てて膝をつき頭を垂れた。

ヘンドリク様も続いて跪き、俺達同様頭を垂れるとゆっくりと口を開く。


「至急ご報告したい事がございます。ニコラ王よ。突然のご報告をお許しください。」


スクリーンの1つに写っていたのは、輝くような金色の長い髪に透き通った蒼い瞳を持ったこの国の現王<ニコラ王>であった。


そしてもう一つのスクリーンには、ぼんやりした雰囲気でニコニコ笑う諜報ギルド総長の<エルビス>の姿がある。


「ヘンドリク、私に急ぎの用とは何事だ?────もしや、グリモアの異常事態について何か判明したのか?」


ニコラ王はそう言った後、更に楽にする様にと告げたため俺とエイミは顔を上げる。

そしてヘンドリク様も俺達に続きゆっくりと顔を上げ、ニコラ王にしっかりと視線を合わせポツリと呟いた。


「『呪災の卵』。」


聞いたことない言葉であったが、その瞬間、ニコラ王とエルビスは表情を無くし顔色を変えた。

         

「…………まさか、()()がグリモアに?」


ニコラ王が慎重にそう尋ねると、ヘンドリク様は怖いくらい真剣な顔でコクリと頷く。


「そのまさかですじゃ。森の最深部にあったのは間違いなく『呪災の卵』でした。

……あのかつて<ドロティア帝国>を襲った呪いの卵です。

既に子供程の大きさ程に育ち、ひび割れを起こしておりましたため、間もなく孵化するでしょう。」


「な……なんと……!」


そこまで聞いたニコラ王は辛そうに目を閉じ額に手を当てると、途方にくれた様に俯いた。

     

()()()()()を自国に持ち込むとは……なんて愚かな事を……。

そこまで堕ちたか……。

……私は一体どうすれば良かったのだろうな。」


最後は自身に問う様な言い方であったが、エルビスが突然横から入り、その話題は軽く流された。


「まぁまぁ、ニコラ王。犯人探しや葛藤は後にしましょう。

とにかく今は、そんな暇はございません。

以前カルパスから黒スライム君の話を聞いて、最低最悪の未来の一つとして考えていたんですけどねぇ……それが当たってしまって本当に残念です。

どうやって置いたのか謎ですが、一度置いてしまえばその地に同化する様に根付いてしまうため動かす事は不可能。

そのためグリモアで孵化する事は、確実です。

その準備時間ができた幸運をまずは喜びましょう。」


明るい口調で話される言葉であったが、エルビスの目は怖いくらい真剣であった。

ニコラ王とヘンドリク様からは重苦しい空気が伝わってきたが、二人は直ぐにそれを引っ込め動揺を隠す。


「グリモアは勿論の事、周囲の街の人々も広範囲で犠牲になるでしょうな。

それに大昔の文献によれば、国中にこの被害は広がったとありますから、一体どれほどの被害がでる事か……。

辛いですが、我々は残りの人々を助けるため直ぐに動かねばなりません。

ニコラ王よ、王として正しき決断を……。」


ニコラ王は目を僅かに伏せたが、直ぐに全てを悟っている様な表情をヘンドリク様に返す。

そんな中で話の流れについていけてない俺は、ゆっくりと手を上げ発言の許しを願った。


「申し訳ありませんが、俺にはサッパリ分からないので説明をお願いできますか……?『呪災の卵』とは一体……?

<ドロティア帝国>を襲ったやら犠牲やらと、酷く物騒なお話の様ですが……。」



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