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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十一章

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781 通達!

(ザップル)


顎を軽く擦りながらリーフという子供の事を考えると、とりあえず前に出てくる感覚としてはその『物理的な強さ』だ。

ナックルやゲイルをぶっ飛ばすくらいだから強い事はわかっていたが、日に日に恐ろしい早さで成長しているのを感じる。


それは俺だけではなく誰もが感じていて、負けず嫌いな仲間達は全員がそれに引っ張られる様に、次々とそれに続き鍛錬を始めてしまったほどだ。

勿論この俺も────。


いまだかつて無いやる気と、その結果前より成長している自分を実感し、拳を見下ろしグッ!と強く握った。


圧倒的な力を持っているリーフ……だが、一般的な皆をまとめ上げ引っ張っていくリーダーという感じではない。


イメージとしては、切り開かれた道が一切ないジャングルで神出鬼没にヒョコッと現れては「こっちだよ〜!」と手を振りすぐに消えてしまう感じか……。

要はリーダーが切り開いていく道を追ってついていくのではなく、結局選んで道を切り開いていくのは自分。

でも見えない先には希望があると思える様な……なんとも不思議な感覚を、リーフという子供は与えてくるのだ。


だからこのグリモアが復活したのは、確かにリーフのお陰ではあるが、同時に周りにいる人間一人一人の努力が合わさった結果であるとも言える。

この現象が、とにかく不思議で仕方がない。


「案外リーフって本当に神様だったりしてな!

ウチのクラスの奴らなんか、最近依頼の前に救世主様に祈りを捧げてから行くのが大ブームとなっているんだ。

勿論俺も祈ってから行っているぞ。ご利益がある……気がする!」


「……やめてあげて下さいよ。リーフ君、いつも不思議そうな顔してるじゃないですか……。

ヘンドリク様といいザップルさんといい、あまり大げさに祀ったら可哀想でしょう。」


ジトッとした目で俺を睨むエイミに、ハハッ!と笑いかける。


「まぁまぁ、本人は全然気にしてないからいいじゃないか。

リーフはプレッシャーに強い!────いや、どちらかといえば鈍いのかもしれないな……。

それに、レオンのせいでお祈りくらいしか近づくチャンスがないってぼやいていたから、それくらい許してやってくれ。」


俺がそう言うとエイミは、あ〜……と納得した様に頷いた。


リーフの側にいつもついて回っている同級生……には全く見えないが、同じく12歳の少年レオン。

現在は救世主様に影の様にくっついて回っている事から、これまた<守護影>様だのと、大層な名前が付けられている。


俺はふ〜む??とレオンの事を思い浮かべてみたが、何ともこちらもリーフ以上にとらえるのが難しいイメージを持っていて、上手く言い表す事ができない。


レオンの纏う空気は独特で、近づけば近づく程ピリピリした様な?何やら近づき難い何かを感じる。

それが何なのか分からず、ずっと不思議に思っていたが……少し前に『これは純粋な恐怖なのではないか?』と思う様になった。

そしてそれを感じるのは俺だけではなかったらしく、冒険者達は大なり小なり同様の感覚を持っている様で、レオンがいる場所には無意識に近づかない。

俺やエイミはそれなりに頻繁に近寄りはするが、やはりずっとは難しいし、近くにリーフがいないと多分無理ではないかと思っている。


「レオン君って、一般人の若い女性には結構モテているみたいなんですけどね。

依頼者の中でも、しつこくレオン君の事を聞いてくる人たちもいるし、指名依頼も入っているのですが、なにせ本人がリーフ君としか依頼を受けたがらないので……。

若い女性は、強くて逞しいですね。」


同じくエイミも、当初からレオンに対して何か不思議なものを感じていたらしく、俺同様ずっと側にいるとキツイと以前から漏らしていた。

確かに一般人は、そこまで強くレオンの不思議な空気に圧倒されないらしく、平然と接している姿もよく見かけるので、恐らくは『戦闘 』を想定しなければ、その効果は低いのではないか?と思われる。

戦闘職についていれば、必ず相手の力量を見定めようとしてしまうため、それがこの差の原因だろう。


「ハハッ!確かにフードを被っているから顔は分からんが、レオンはそれだけでも随分とかっこいい外見をしているからな!

寧ろ顔が隠れている分『ミステリアスでかっこいい』だなんて言ってた奴もいたぞ。

怖くて近づけないとは言っていたが。」


せっかくのモテモテも、近づけないなら残念極まりない。

そう言って俺が笑うと、エイミはまた呆れた顔で俺を見た後、依頼ボードのチェックを始めてしまった。

俺はまだ笑いながらそんなエイミを見つめながら「平和だな〜……。」と呟いた、その時────……。


────ガシャ────ンッ!!!!!


大きなガラスの砕ける音と共に、ヘンドリク様が窓を突き破りギルドの中へと飛び込んできた。

それにギルドの中にいた者達はギョッ!!と目を見張って驚いていたが、俺とエイミは、うわっ……と、若干引き気味な目を向ける。


「ちょっと……ヘンドリク様。いくら今日の限定ローリング・パンが食べたいからって、その慌て様は……。」



<ローリング・パン>


限定30個の渦巻き型の海鮮パン。

まるで海の幸が渦をまいて押し寄せてくるような味の海鮮の具材をふんだんに使ったパン。

カリッと揚げたパンの中に固形スープの様なものが入っていてゴロゴロ具材と共に食べれば美味しすぎて口の中まで渦をまくとまで言われている。



「そうですぞ!ちゃんとヘンドリク様の分はとってありますから、そんなに急がず入口から────……。」


「全冒険者達に通達!!今直ぐ戦闘準備を開始せよ!!

ギルド職員はすぐにありったけの<伝電鳥>と<伝言シャボン>、そして<中継映像体>を飛ばすのじゃ!!皆の者、頼んだぞ!!」



< 伝言シャボン >


メッセージを届けるシャボン玉型伝達用魔道具。

手紙に近いそれは録音した言葉をその届けたい人物に届ける事ができ、届け終わるとパチンッと弾ける。



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