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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十一章

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773 謎、謎、そして……謎

(リーフ)


レオンの優しい性格を思えば、それを想像するのは容易いが……俺の脳裏には『助けて〜!』と叫びながら手を伸ばす美少年と、その手を必死に掴み一緒に底なし沼に沈んでいくレオンの姿が浮かんだ。


────ばってんマーク!!

俺は即座に手を交差させてバッテンマークを作った。


お金が絡むトラブルは、大人に絶対相談すべし!

あの手この手で子供を丸め込もうとする悪い大人は、この前世と合わせて70オーバーのこのジジィが相手だ!


「…………。」


────とは言え……。

オドオドソワソワしているレオンへ、チラッと視線を向ける。


意外と頑固な性格をしているレオンのこと。

多分素直に頼ってはこないだろう。


ここは慎重に情報を引き出さねば……と考えた俺は、ホタホタ〜と胡散臭い笑顔を貼り付けた。


「いやいや、何も困る事なんてないさ。怖くない、怖くない。

やっぱりお金……なんだね?問題は……。」


「えっ!!?こっ、困らないんですか???────そっ……そうですか……。

お金は……多分一生涯掛けても足りないかもしれませんが、絶対にいつかは身請けして結婚しますので、どうか待っていて下さいね。

それまでは、専属システムで誰にも触れさせない様、お願いします。」


まるで突然親から離された子供の様に、レオンは不安そうな様子でソッ……と俺の手を握る。


『えっ、もしかして一生かけても返しきれない程の借金がある子って事……?』


そう理解し、俺はガガ──ン!!とショックを受けて全身から血の気が引いた。

そして、その子の今までの苦労を思い大ショックを受けた後は、そこまでの借金を子供に追わせる親御さんへの怒りがMAXへ達する。


これは早急に助け出さないと、その親御さんは更なる借金を押し付けてくるかもしれないぞ!


「そ……そうなんだ!なら、その素晴らしい婚約者さん(仮)の事を詳しく教えてくれないかい?

ほら、やっぱりそれを知らないと、俺も色々判断できないからさ。」


「────!!な、なるほど……。俺を試したいと……そういう事ですね?

どれほど俺が知っているのか……そしてどれほど想っているのかを……。

問題ありません。何でも答えます。」


────ゴッ!!と、やる気満々で燃え上がるレオン。

そんな燃え上がる愛の炎にアチチ〜しながら、俺はそのまま質問を始めた。


「彼のご両親はどんな人たちなのだろうか?一緒に暮らしているのかな〜?」


「いえ、別々に暮らしています。

一度も姿を見たことはありませんが、家には使用人が数名いますね。」


????


そこで俺はピタリと止まる。


親御さんと別々に……使用人??


使用人イコールお金持ちのイメージが浮かび、あれれ?と頭にはハテナが飛ぶ。


どうしよう、何だか想った以上に訳あり……ぽいぞ?


俺がスッと皆の方へ視線を移すと、そこには全員が腕を組み、揃って考え込む姿があった。

俺も同じ仕草で考え込む。


お金持ちのお坊ちゃんか何か……。

それが何らかの原因で没落して……のパターンかな??


「そ、そっかそっか〜。じゃあ、もしかしてご両親が働けないから、彼が代わりに働いてお金を稼ぐ的な感じかな〜?」


もしかして病気か何かで働けなくなったご両親を助けたくて、仕方なく歓楽街のドアを叩いたのかも!

そしてうっかり悪い大人に騙されて借金が膨れ上がって……────と、そんな想像をしていると、レオンはそれをあっさりと否定した。


「────いえ?ご両親は毎日ろくでもないパーティーを開いていると、使用人の女がブツブツ言っていました。他の家族達と一緒に、暮らしているそうです。」


せっかくいいイメージになりつつあった両親像は消滅し、怒りが大噴火からのビッグバン!

俺はゆっくりレオンの上から降りて、テーブルの下に置いてあった中剣をしっかり腰に装備した。

そしてそのまま、無言でスタスタと歩き出す俺を、レイドとメルちゃん、モルトとニールが一斉に飛びつきその進行を止める。


「リーフ様!落ち着いて下さい!!ほらっ!バラ茶!バラ茶を飲んで落ち着きましょう!! 」


「そうっすよ!!小麦焼きも沢山ありますから!あとバタークッキーも!!」


モルトがバチャバチャと口元にバラ茶を、そして続けてニールのお尻のポケットによって温められたバタークッキーを口に入れられもぐもぐした。

更にはレイドとメルちゃんのポケットにむき出しで入っていたカユジ虫の煮干しも、口の中に入れられクールダウンした俺は、落ち着きを取り戻しレオンの上に戻る。


「大体の事情は分かったよ。とりあえず、お金を持ってその娼館に行こう。

それからは違うお仕事の選択肢もある事を、きちんと教えようか。」


「???娼館に???お仕事は冒険者をしているので、必要ないですよね?」


?????

??ぼ、冒険者???


またしても謎な答えに俺は皆へと視線を移したが、やはり誰もその展開についていけてない様で、揃って顔を傾けていた。


何で冒険者をしている人に対して、身請けやら専属システムやらが出てくるんだ??


「へ……へぇ〜……彼は冒険者をしているんだね。

も、もしかしてなんだけど……戦闘が得意ではなくてお金が足りないとか?

草を集めたりだと確かにあまりお金貰えないし、それで思いつめて────……。」


「冒険者ランクはCなので、それなりにお金は貰ってます。

強さで言うと、正直俺にはその基準が分かりかねますが……少なくとも周りにいる奴らでは相手になりませんね。」


びっくりおったまげ!!

口を両手で覆って皆の方へ視線を移すと『聞きました?』と目で訴えた。

すると全員同じく口を塞いだまま『えぇ、勿論です』と言わんばかりにコクコクと頷く。



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