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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十章

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751 死にたくない!

(クラーク)


クルト先生とルーン先生を先頭に入ってきた教員たちが、俺たちの前にズラリと横並びに並ぶと、その中央に立っていたクルト先生とルーン先生が一歩前に進み出る。


「おはよう!諸君!

本日はフラン様が直々にお作りになった『塔の制覇』を行う!

これは立体仮想ダンジョンと同じ様なモノだが、ダンジョンではなく100階建ての塔が出現するモノで、皆にはその頂点を目指して登ってもらおう!

勿論、攻略中に実際には死なないが……普通の立体仮想ダンジョンよりかなり精巧に作られているため、少々感じる痛みのイメージも強いから、油断していると死ぬからな〜。」


いつも通り結構物騒な事をサラリと言ってくるが、誰一人それに臆することなくギラッとした目を教員たちに向ける。

するとクルト先生は、満足そうに微笑みながら説明を続けた。


「塔は1階から100階まであって、階ごとに常駐しているモンスターが異なる。

そして頂上の100階にはボスが存在していて、それを倒せばクリアーだ。

しかし、この『塔の制覇』は、今まで一度もクリアーした者達はいない。

まぁ、俺からのアドバイスはいつも通り『死ぬなよ』と『力を合わせて頑張れ』────以上だ。」


仁王立ちのままハッハッハ〜!と笑うクルト先生。

そしてその隣で両手を後頭部の方へ回し鼻歌を歌うルーン先生へ、他の教員達の一人が直径1mはあろうかという巨大な赤い球体を持ってきて渡すと、ルーン先生はそれに魔力を流す。


────カッ!!


すると、その球体から赤黒い光が発したと思ったら、一瞬で目の前に空を突き破るくらい巨大な塔が出現した。


上方部分は雲に隠れて見えないくらい高く、入口は街を囲う防壁の扉よりも頑丈そうな銅色の扉によって固く閉じられている。

そして階ごとに、塔の壁から全体に絡みつく様に螺旋階段が巻き付いており、どうやら階をクリアーする毎に、その飛び出た階段へ通じる扉が出現するタイプのモノらしい。

階段から微細な魔力を感じる事から、外からその階段を登ろうとしてもゴールへとたどり着けない仕様になっている様だ。


「流石だな……。」


ライトノア学院長であると同時に、実力を重んじるアーサー派閥を支える支柱の一人<フラン様>。

エドワード派閥にとっては、真っ先に潰したいと考えているお方という事は、この塔の出来を見れば嫌というほど理解できる。


関心しながら、この塔の制覇の難しさについて考えた。


『100階まで登りながらモンスターと戦う。』


それには持久力に加えて体力や魔力の配分は勿論、制限時間内にクリアーするためのスピードも要求される。

そんな難易度の高い課題にゲゲッ!と顔を一瞬歪ませた生徒たちの中、余裕そうに準備運動を始めたのは────やはりリーフ様とその周りにいつも纏わりついている、取り巻きの連中達であった


「──っしゃ!!なんだよコレ、めちゃくちゃ楽しそ〜!!

メル!どっちが多く倒すか勝負しようぜ!」


「……メルが勝つ。楽しそう……。」


手を大きくぐるぐる回す犬の獣人レイドと、ゴッ!と静かに燃える鳥?の獣人メル。


「ふんっ!一番多く倒すのはこの私、アゼリアだ!

犬ごときには負けんぞ。」


「トラップ解除とかならぁ〜このさっちゃんが一番♡

だから一番はボクだよ。ごめんねぇ?」


アゼリアが、獣人二人組とエルフの女……いや男のサイモンへバチバチと鋭い視線を交互に投げると、サイモンはそれを受けてかうように笑う。

そんな二人を見て顔を見合わせたのは、女エルフのリリアとソフィア様だ。


「……兄さん、あまりからかっては駄目よ。

サポートならこのリリアが、微力ながらお力になれると思います。」


「では、回復やサポートのお手伝いはこのソフィアにお任せ下さい。」


リリアが、困ったような笑みを浮かべサイモンを咎めると、ソフィア様は軽くトンッと胸を叩く。


「ふむ。それでは俺は後衛ですね。

威力には自信がありませんが、幅広く攻撃とサポートを担当しましょう。」


「じゃあ、俺は前衛っす〜。変化球の攻撃でモンスターを翻弄してやるっすよ。」


次に続いて目を光らせながらそう言ったのは、リーフ様の側近らしきモルトとニールだ。

そんな彼らを見ながらリーフ様はハイッ!ハイッ!!と応援する様に両手を上げ下げしていて、後ろにいる化け物レオンはボケ〜と心ここにあらずな様子で佇んでいる。

いつもリーフ様のやる気とは反比例する形でぼんやりしていると思えば、急に動き出したりと動きが全く読めない奴隷のレオン。


あれは一応ワクワクしているのか……?


ついその事について考え込んでいると、今度は周りにいる生徒達まで、リーフ様の取り巻きたち同様にやる気に火が着いていった。


「俺だって負けねぇぞ!」


「私だって!」


そうして、うおおおおお────!と叫ぶ生徒たちを見渡し、満足気に微笑えむ教員達の中、クルト先生はニヤッと笑いながら片手を上げる。


「────では!これより『塔の制覇』を開始する!

制限時間は午前中一杯!

一度致命傷を受けたらここに戻るように設定されているから安心して全力を出してこい。

心肺蘇生の準備は万端だからな!」


慈愛に満ちたイシュル様の様に、クルト先生とルーン先生はニッコリ笑うと、その後ろの教員たちは、一斉に薬草を出して、フワフワ、ヒラヒラ〜と振った。

そしてその中でムキムキマッチョが自慢の教員達は、トドメをさすのか?と心配になるほどの勢いで、フッ!フッ!と心臓マッサージのジェスチャーを。

チクチク青ひげやもじゃもじゃのヒゲがトレードマークの教員達は、チュ〜♡とマウストゥマウスのジェスチャーを始めた。


『────死にたくない!』


生徒全員が真っ青になりながら、全く同じ事を思った。


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