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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十章

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745 誤り

(クラーク)


何事かと直ぐに目を開けると、マービン様の前に対峙していたのは公爵家メルンブルク家のご子息<リーフ>様であった。



メルンブルク家の唯一の汚点、アゼリアと同じく不義の子という汚れた存在……。


あんまりな言いように自分でもどうかと思ったが、この時俺の胸は何かを期待するかの様に大きく跳ね上がった。


『何か』が変わるかもしれないという期待を、この流される俺とは正反対とも言えるリーフ様という存在に抱いたのだ。


リーフ様がいれば何かを変えてくれる。

リーフ様がどうにかしてくれるかもしれない。


そんな想いを抱きながらワクワクと心を弾ませたが、同時にそんな事を考える自分にガッカリもした。


俺は結局ここから動く事はせず、ただ変わるのを見て待っているだけか。

昔から何も変わらない。


自分という人間の本質を、改めて突きつけられた気がした。



やっぱり『変わる』事は難しい。

俺は一生────……。



そんな薄暗い気持ちにとどめを刺すかの様に、なんとリーフ様はマービン様の話に同調し始めてしまった。

そこでまたしても一気に気持ちは下へ下へと下がっていき、勝手に期待し他力本願な想いを抱いた自分に今度は強い嫌悪感が沸く。


仕方がない、仕方がない、仕方がないんだ。


ひたすら自分にまた言い聞かせて、流れに乗っていこうとしたまさにその瞬間────……リーフ様がマービン様の下半身を容赦なく露出した。



「ふむっ!平均よりは小さいと思うよ!」



中断してしまった思考では全く理解できない言葉を吐き、そのままズボンごと下着を勢いよく脱がしてしまったリーフ様は、更にそのまま一切の迷いなく空へズボンとパンツを投げた。


「レオーン!」


名を呼ばれた黒い化け物は派手にそれを上空で燃やし尽くし、残るのは下半身が丸出しで倒れているマービン様。

ジェニファー様もこれには度肝を抜かれた様子で、目を見開いたまま微動だにせず、俺同様立ち尽くしている様子だ。


それは周りにいる全員が同じで、誰一人今目の前で起きたことが現実だと思えずただ立ち尽くしていたが、そうしている間にもリーフ様はいつも隣にいる従者達に声を掛け磔台を作らせ、マービン様を磔にしたのだ!


いま起きた出来事を否定しようにも、目の前で堂々と晒されるモノのせいで見て見ぬふりができない!!


「…………。」


一言も発せず目と口を限界まで開けながらソレを見上げていると、リーフ様は一人高らかに笑い、パンパンと手を叩く。



「公爵家の命令発動〜。

俺より爵位が下のアゼリアちゃん、レイド、メルちゃん、そしてマリオン、クラーク君。

全員を倒して俺の前に引きずり出し給え、いいね?」



突然命令を出したリーフ様。

その中に……俺の名前もある。


────えっ?お、俺???


突然の指名に驚きすぎて思わず白目を剥いてしまったが、反対にジェニファー様は被っていた仮面を崩し、今まで見たことがない表情を見せた。

扇子で必死に隠していたが、斜め後ろで見ている俺にはその全てが見えていて、ワクワク、ドキドキと『楽しい』を抑えきれない!と言わんばかりの表情であった。

そしてそれは俺も一緒で、驚きが通り過ぎれば、未だかつてない程ワクワク、ドキドキしている自分に気がついたが、好戦的な笑みで隠し慌てふためく三年生達に向かって構える。



今、この瞬間だけは、自分の気持ちに好きに動いて良い。

自分がしたいと思うことを思い切り!

それを邪魔するモノは全てリーフ様が『公爵家命令』とやらで吹き飛ばしてくれたから。



熱いマグマの様なモノが心の中から溢れ出し、体中を熱く熱する。


今直ぐにでも体を動かしたい!

そんな思いで一杯になりながら、攻撃してくる三年生達を見事に返り討ちにしてやると、今まで感じたことのない様な感情が湧き上がってきた。



あぁ、俺は今、最高にワクワクしている!!

楽しい!嬉しい!!

そうか、これが本当の────……。


………………。



何かの答えに辿り着くその前に、俺達に反撃された三年生が罵り合いを始めてしまったので、俺の意識はそちらに向いてしまった。



「後衛が弱いからこっちの当たりが強いんだよ!!もっと強い魔法打てよ、役立たず!!」


「はぁ!!??あんた達前衛が弱すぎるからこっちに攻撃がくるんでしょうが!!

もっと体を張ってこの私を守りなさい!!私の方が爵位ランクは上なんだから!!」


「やだ────!!私のセットした髪の毛がぐちゃぐちゃじゃない!

何で私が戦わなきゃいけないのよ〜。そんなの下の爵位の奴らの仕事でしょ!!」


「おいっ!!ふっざけんなよ!!お前ら全員この俺の盾になれっ!!

俺の家の方が遥かに位が高いんだから当たり前だろう?!」



ギャーギャーと醜い言い争いを見つめながら、俺はぼんやりと考える。


身分を尊重する事自体全て誤りだとは思っていないが、一人では立っていられない状況はきっと『誤り』だ。



それは一人で立てなくなっている自分を見れば一目瞭然。

いつかはこうして逃れられない現実に捕まってしまうんだ……俺もコイツらも。


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