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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第十九章

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736 孤独と幸せ

(リーフ)


「────の資質は完全なる『善』の資質。

元々資質とはその個人が持っている魂の力の事で、それぞれが持つ条件をクリアーすると、その力が使える様になるというルールをイシュルは作った様だが……。

────の資質だけは違う。

元々持っている魂の力にセーブを掛ける役割として作られた、いわゆる本来の魂の上に被せる制御装置なんだ。

だから『善』でなければ、力は一生封印されたまま。

『善』であればあるほど、本来持っている魂の力は開放されてしまう。

それにより、ある一定以上の力は使えない仕様になっているのさ。

もしそれ以上を手にしてしまえば、────が許さないから。」



『善』……?

つまり良い子でないと、黒みつの能力は使えないって事かな〜?



そう考えると、確かに黒みつはちょっと畑に人間を埋めちゃったりするが、基本は無垢で純粋、完全なる良い子であるため凄く強い……という事か。


なるほど〜と頷きながらそれに納得していると、突然謎の人物は背後から消え、今度はまた俺の眼の前に。


ただし逆さまで。


その姿はまるでタロットカードの『逆さ吊りの男』の様だ。


謎の男はグシャグシャに塗りつぶされた顔で俺の顔を覗き込む様な仕草をすると「なるほど……?」と何かを納得したかの様に呟きそのまま話続ける。



「生きるという事は『善』とは、正反対の行為なんだよ。

息を吸う、食べる、動く、その全てに犠牲は必ず必要だからね。

どれをとっても何かを犠牲にしなければならない『悪』の行為で、それこそが『生きる』の代償であるといえるだろう。

だから『生きている』限り────の資質によって、力の殆どは使えない様にできている。

つまりアレを『生物』という枠に辛うじて押し留めていたわけだが……君がそれをいとも簡単に、それを外す力を授けてしまったんだ。」



それを分かっています、分かっていますと言わんばかりに神妙な顔で頷いたが、勿論話が難しすぎて引き続ききちんと理解していない。


しかし何となく何を言わんとしているかは分かり、俺は頭を抱えた。



黒みつ……そしてあげ玉の事だ。これ〜……。



俺はゴクリと唾を飲み込み、つい最近判明した二人のスキルについて思い出す。



二人が最近森での戦いの末手にしたニュースキル<不動の柱>と<スライムど根性>。


このスキルの何が問題かといえば、そう……『種族限界値の突破』だ。



これを突破したことで、ちょっとパワーアップし過ぎてやばいよ?

──って言いたいんじゃないかな〜?と俺は思った。


要は、あげ玉と黒みつはとっても良い子だが、ご飯を食べたり息を吸うだけでも少しずつ悪い子になっていく。

そしてあげ玉のモンスター資質<戦闘鳥>と黒みつの<聖王スライム>は、その悪い子ステータスによって能力が低下するよ!────って事か……。



「…………。」



能力が低下しても尚めちゃくちゃ強い二人のとんでも能力について考えると、ブルブルと震えてしまった。



つ、強くならなければ二人がグレた時に止められないぞ!

レオンも突発的に反抗期に突入するし、どうか三人同時に起こりませんように!



そして神様に祈ろうとしたが、『あ、目の前にいた。逆さまだけど!』────と気づいたので、そのまま目の前にいる謎の神様?にブツブツとお祈りを捧げる。


すると、その人物はとても楽しそうに笑った?様だ。



「君は本当に面白いな!

その変わった考え方も、ハッピーエンドを目指した過程で手に入れたモノなのかい?

私の言葉を何一つ理解していないのに、とにかく前向きだ。」



理解していないのに頷いていた事がバレた……。



「ご、ごめんなさい。」



俺は大きく体を震わせた後、素直に謝った。


『神様はなんでもお見通しなんだよ!』

前世にて、近所に済んでいたおばあちゃんが口癖の様にそう言っていたが、まさにその通り!


ペコペコ〜!と目の前で謝る俺に対し、謎の人物はまた笑った。



「でも君は酷く『孤独』だ。

それは君の持つ『力』の代償だから、永遠に君は飛び続けるしかできない。

誰もいない空を、たった一人で……それに終わりはない。

他と交わる事が決してできない広い広い世界を抱えて、君はどこまでも先にいくんだ。

君が幸せにした人たち全てを後ろに置いて。」



また気配なく謎の人物は逆さまから通常の状態になると、俺の胸辺りを差す。



これはこれは……。

もしかして、俺の前世の婚約破棄の事をポエム風で言っている???



神様とはいえ、流石にちょっと人の失恋の記憶を変な形でほじくり返さないで〜と思ったが、俺とてそんな事でヘコむ時期はとっくに過ぎ去っている!

問題ない!


俺は指さされた胸を、ドンッ!と叩いた。



「お気遣いどうもありがとうございます!

でも俺、今ではそれで良かったなって思っているんです。

だって俺じゃあ幸せにできなかったから……。

大好きな人たちが幸せになってくれて、本当に本当に嬉しい!

だから俺は今、幸せだな〜っていう想いしかこの胸にはないですよ!」



フンッ!と鼻息荒く言い切ると、その謎の人物はまたフフッと笑った────が……突然白い空間内の空気がサラッとしたものから粘着質のあるものへと変わり、謎の人物の笑いはピタリと止まる。


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