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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第十九章

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735 ”楽しみ”

(リーフ)


「では、お礼に君の『目』は取らないであげよう。

本来は、人の身で持つことは不可能なはずのモノだったし、一応取り上げておこうと思っていたのだが……私は君がそれをどう使ってどう足掻くのかを見てみたい。

私達が『見る』だけに使っていた力で、一体君は何をするのだろうね?

とても『楽しみ』だ。」


「『目』??」



それが何か尋ねようとしたが、気がつくと謎の人物は目の前におらず、なんと俺と背中合わせするように背後にいた。


「────!!?」


またしても気配なく移動されたため、驚いて直ぐに振り向こうとしたが、その前に謎の人物は話し始める。



「それともう一つ。

────────が、何としてでも排除しようとしている恐ろしいモノについて話しておこうか。

()()が何なのかは、私にも全く分からない。

ただ、恐ろしいスピードで成長していて、既に何も『見えない』んだ。

これまでの情報も……そして今後、どうなってしまうのかも。」



排除??恐ろしいスピードで成長……??


ハテナを頭の上に飛ばしながら思い浮かんだ事は、『もしかして……畑の事?』だ。


そこで、我が家のジャングルの様になってしまった畑について、モヤモヤっと思い出した。



確かにあんなに育ってしまっては、もはや排除する事が難しいし、今後どういった成長するかも未知数……。

現に日を追うごとに、童話の『いばら姫』もびっくりな成長をしていっている。



ちょっとトゲトゲがついているよ〜どころか、魔法攻撃までしてくる植物達。

万全の体制で草刈りに挑まないと死ぬ、本気で。



食うか、食われるかの戦いを繰り広げている爆食バッタとキラリマッシュ達を尻目に、強化魔法MAXで草刈りしている自分の姿を思い出し、ハハッ!と軽く笑った。



「そうですね〜、俺もあれにはびっくりです。

本当に末恐ろしいですよ。

気がつけば20mくらいまで伸びてるモノもいますから。

俺もいつ食べられてしまうのやらとドキドキしながら日々戦っています。」


「『恐怖』を感じているならここで────になるかい?

────あぁ、それは以前レーニャに断りを入れていたか……。

でも君が逃げるにはもうここ以外ないよ。

どの『世界』にいても必ず君は見つかる。

……もうそこまで力をつけているんだ。

君の側に常にいるアレは……。」

        ・・


畑じゃなかった……多分。


とりあえずキリっと表情を引き締めてシリアス的な雰囲気に合わせてはいるが、実は俺、何も理解できていない。



まぁ、レーニャちゃんの名前が出てきたので、この人は神様的な存在であろう事だけは辛うじて分かった。

神幹部様……?確か4人いるって言っていたし、そのうちの1人?

そもそも逃げるとは……?



話がどこから食い違ってしまったのかも分からずお手上げな俺が思う事は────『ソフィアちゃんとかリリアちゃんとかいたら良かった……。』だ。



モルトとニールは多分俺と一緒の対応するから駄目だし、レオンなど更に話の難易度を上げてしまうからもっと駄目〜。ゴネるし!

────あ、もしレガーノまで来てくださるなら、会話レベルの異常に高いカルパスがいるから、多分もっとまともな話が聞けると思うけどね〜、残念!



地元の名産物が頭の中にフッ!フッ!と浮かび初めてしまったその時────『逃げる』『見つかる』『力 』 というキーワードに引っかかるモノがあった。



黒みつの新スキル<家族の拠点 >!!



このスキルにより、家族と認識した俺の事を他の邪魔してくるスキルの干渉を一切受けずに見つける事ができる。



それの事っぽいな。

でも、まさかこんな所まで移動できるほど凄いものだったとは……。



ゴクリと喉を鳴らし、黒みつの底しれぬ実力と将来性に戦慄を覚えた。



「それはそれは……確かに今後の成長を考えると、少々恐ろしいと思う気持ちは分かります。

でも大丈夫です。俺たちの大事な家族なので!

本当にあの子は優しい子で、率先して家事をやってくれるし、お裁縫も大得意みたいで洋服の穴も完璧に直してくれて、ルンバなどもはや敵ではございません。

畑の草刈りも一生懸命やってくれるし、例え強くなっても悪い事をする事はないでしょう!」



ちょっと熱が入ってしまった、うちの子自慢。

黒みつは強いけど、絶対に悪い事はしないと自信をもって言えるため、そこはしっかりと伝えたつもり。


もしかして謎の人物は、凄いスキルがあるから注意してね!と心配し伝えたくて、俺に会いに来てくれたのかも……?


ジーン……!


感動に震える胸を押さえていると、背中越しにいる謎の人物が一瞬押し黙り、小さく笑う声が聞こえた。



「……そうか。君は本当に凄いな。あの途方もなく強大な魂の存在に押しつぶされる事なく側に居続けるなんて……。」



謎の人物は一旦言葉を切り、その後また話を続けた。



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