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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第十九章

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734 終わりの条件

(リーフ)


「分かりました!」


「ありがとう。────では、早速質問なのだが……。

さっきも言った通り、一つの世界が終わる条件は《知性を持つ生命体の出現》なんだよ。

それが出現した瞬間から、その世界は終焉に向かうスイッチが入る。

つまり君のいる世界────あぁ、イシュルの作った世界か……。

その世界は、既に終焉に向かって歩んでいる真っ最中であるというわけだ。

君というイレギュラーな存在によって少々その寿命は伸びるかもしれないが……でも『終わり』がある事には変わりはない。

君の人生のモットーである『ハッピーエンド』とやらは絶対に訪れる事はないだろう。

『エンド』は必ず世界の消滅を意味しているのだから。

ハッピーではないゴールを、足掻いて努力して目指して結局全て消えるのが、果たしてハッピーエンドと言えるのだろうか?」



その質問を投げかけられた俺は、とても不思議に思った。


何故なら俺は基本、果てにあるゴールに何があるのかは考えた事がなかったからだ。


ピヨピヨとひよこで溢れそうになる頭を撫でながら、今まで生きてきた沢山の思い出を振り返った。



ただただがむしゃらに。

一生懸命に。

ハッピーエンドを目指して日々を生きた、沢山の思い出達。



それをぐるぐると回るヒヨコと共に思い出しながら思うのは────きっと『エンド』は、俺にとってあまり重要な事ではないのだという事。



「あの……あんまり言葉が上手くないからちゃんと伝わらないかもしれないんですけど、俺、一度死んでるんです。59歳で。

最後の一年くらいかな?一番痛くて苦しかったのは。

日に日に体が動かなくなってきて、治療の副作用で毎日痛くて気持ち悪くて本当に毎日しんどかった。

それで、とうとうベッドの上からも動けなくなって……。

その時まず頭に浮かんだのは、親がいなくてすっごく悲しかった記憶、そしてそれから救ってくれたレオンハルトの事。

そしてその後に怒涛の如く浮かんできたのは、精一杯体当たりで歩んできた人生の沢山の思い出達でした。

それって全部、何かをしようとした時の『結果』じゃなくてその『過程』の事だったんですよね。」



むしろ『あれ?その時結果ってどうだったんだっけ??』なんて忘れているくらいだったからね!


ハハッ!


心の中で某夢の国のネズミ風の笑いで悲しみを吹き飛ばすと、謎の人物がそのまま黙って聞いてくれているのを良いことに、話を続けた。



「なんというか……自分が死ぬ前に全面的にババンッ!と前に出てくるのって結果じゃなくて、それを目指している時に必死に抗った感情の記憶だったんですよね。

嬉しい!悲しい!悔しい!!とか……。

何だかその感情のおまけの様に、結果がちょこんとついてくる感じ?かな?

世の中って、人が沢山いるから楽をしようとすればできちゃうんだ。

誰かがやってくれるし、自分にもたらされる結果だって同じだろうけど……死ぬ前にそうやって楽をして得た結果は一個も思い出せなかった。

だからその……う〜ん……??なんていうか……。」



『言おうとしても上手い言葉が出てこない。』


そんな常時発動の加齢の最強デバフが邪魔をしてくるが、俺は無反応の謎の人物に対し一生懸命伝える努力をする。



「だから世界が例え終わりを迎えるって分かっていても、俺の人生って何も変わらないんじゃないかなぁって……。

結局は、結果があってもなくても俺は変わらずハッピーエンドを目指すし、そうである限り全部ハッピーだって思ってるんですけど……。

……な〜んちゃって。」



もはや何を伝えたいか分からなくなってきてしまい、後頭部に手を当て誤魔化す様に笑ってみたが、謎の人物からの反応はない。



あ、やっぱり伝わらなかったか……。



人にモノを伝える事の難しさを痛感していると、謎の人物は酷く考え込む様に顎に手を当てて唸り声をあげた。



「ふ〜む……。なるほど、それは僕らの様な存在にはない感覚だ。

私達は物事の『結果』しか見ないからね。

その結果、世界のルールに基づいているか?『理』にどんな影響をもたらすのか?

それだけだからさ。

君の理屈でいうと、だから私の中には何も残らないんだね。」



謎の人物はそうブツブツと呟いた後、突然声を上げて笑い出したので俺は驚いたが、謎の人物はそのまま話を続けた。



「凄いな!私は『愉快』を感じたよ。

その答えを私はとても気に入った。ありがとう。

きっと君と出会ったこの時間は、私の中に残るだろうね。

フフッ……あぁ、これは『嬉しい』という感覚かな?」


「へ?……えっと?こ、こちらこそどうもありがとうございます??」



とりあえずお礼を言ってみたのだが、次の瞬間────その謎の人物が俺の鼻にくっつくらいの距離で、目の前に立っていた。



「────えっ!!」


いつの間にか気配もなく立っている謎の人物に驚き悲鳴をあげると、その人物は何となくニコッと笑った様な気がした。


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